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音色は海へと沈む。

一応本編です。

本編は直感と妄想のままにストーリーを膨らませていたら、意外と書けないことに気づいて少し凹みました。プロット書かないと同時多発進行は制御しきれないのです。


スティールチャレンジ。

レトロだけど、生活の習慣に取り入れてから、ちょっとだけ意識がクリアになった気がする。


今日は国際会議の、担当領域で向こう数年の技術計画を決める最終日で、正直、緊張してる。

どんなに事前ネゴを張っても、事前ネゴしちゃいけないとかできない相手がいる以上は、

そこから始まる波及効果を考えると、出たとこ勝負のところは出てくる。


ここ2年は大きな流れに乗って国際協調の中で成果を出して来れたけど、

次の目標がまだ決まらない今は、責任重大だ。ちょっと手がわなってくる。

準備不足を自覚したり自意識過剰する前に、いつもの習慣を挟もうと思って、

愛用しているカイデックスホルスターに手をかける。

もちろん、ここには愛銃はない。

だけど、グリップだけは予備からもって来て、サーバイザーのケースみたいにしてる。ダミーグリップちゃんだ。

スマホのころはスマホケースにしてて結構自然だったけど、バイザー型端末には若干しっくり来ない。


さて、集中だ。

銃を服で覆ったコンシールドキャリーなところから始める。

ホルスターは真横よりは少し前気味だ。真横だと万一利き手が使えない時完全にゲームオーバーだ。

友人の眉唾な入れ知恵だけど、ウィークハンドでもかなり無理すればぎりぎり届く位置だ。


“make ready”

普段なら的と連動して小箱からアナウンスしてくれる優しい声に、

少し冷静さ鋭さを取り戻す。

そこから、わずかに緊張が空気に滲んでくる。

ARは無しだ。自分の脳内で、5つのオーソドックな直線に並んだターゲットを浮かべる。

よし、目に焼き付いてる。問題ない。


“Are you ready?”

両手をリラックスした状態で上げる。

今日は左足を半歩前だ。

撃つときのわずかに貯めのある膝を作る。


“Stand by”

右手の甲にピリッしたと感覚が走る。

さすがに、ランダムにブザーを鳴らす機能は僕の脳にはない。だからここからはご都合イメージだ。


ブザーが鳴る。


左手でジャケットを払い、愛銃を露出する。右手で定位置から掴み上げ、最初のターゲットを狙う。

一番左、左から二番目、右から二番目、一番右、最後に真ん中!

せっかくのイメージだ。今日はマズルフラッシュも、リコイルも、ヒットも全部本物だ。

ターゲットは吹き飛び、手が少ししびれる。

やっぱりP99はいい。これがデザートイーグルやソーコムだったらしびれるじゃ済まない。

小気味よく打てやしない。


もう一度セーフティをかけ、ホルスターインする。



“If you are finished, unload and show clear”


競技形式に準じてマガジンを外し、銃にロードされていないことをジャッジに見せる動作で締めくくる。

この脳内シミュレートでここだけみると、本当に厨二の極みだけど、普段の癖が、体には染み込む。だから省略はしない。


"5point 98"


数値はイマイチだ。悪くはないけれど、気負いが出ている。

でも大丈夫だ。この気負いは、きっと必要なアンカーだ。責任と覚悟だ。



臨戦態勢が整ったところで、小箱さんの電源を切って、ダミーグリップちゃんにサーバイザーを収納して、技術屋に戻る。

よし、戦えるはずだ。少なくとも、実力の全部で。


ほんのわずかに乱れが残った呼吸のまま、ドアノブに手をかけたところで、

よくわからない衝撃音が明らかにただの波とは違う無秩序で小刻みだけど大きな暴力的振動で

甲板方向から海面にすり抜けて行った。


何の事故だ。豪華客船はやっぱり事故フラグなのか!?

上の方には宴会場がある。調理場もそっち方向かもしれない。

ケロちゃん大丈夫かな…。焼きガエルっておいしいんだろうか。


「To stay or not to stay. That's the question.」

ちょっと年寄り染みた切り返しだけど、こんな下らない独り言が出てくる程度には僕の中を動揺が蠢いた。


仕方ないから、最も端的に今できることを考えて、

まずは委員会の主催者連絡受信用チャットと掲示板を確認できる可能性に賭けてサーバイザーをONにする。

ここで起動すれば、最初にWi-fi用の委員会が設置したログイン画面が最初に出るはずだった。

香港のお約束な夜景と、この豪華客船。そして委員会のロゴだ。

だけど、やっぱり・・・、そこに浮かんだのは意識して口に出さなかった、最も懸念していた可能性だった。



そう。黒地の背景に白いアラビア文字。全くアラビア語が読めない僕にだってわかる。

聖戦って奴だ。ここで見るこいつらは災厄だ。シャレになっていない。いや、相手は人間だ。嬲られる可能性だって高い。

全く。香港はあまりイスラマないからテロ対策で選んだんじゃなかったんですか。

さすがに背中に冷たいくて細かい物が泡立つのを感じる。

そして、このWi-fi用アクセスページが書き換えられているってことはかなり計画的な犯行だ。

今アクセスしていること自体かなり危険だ。相手はきっとサーバログだって見えてる。

少なくとも「誰か」がこのアクセスポイントにアクセスしたのはバレテル。

そこまで考えてからやっと冷静さを取り戻したところで、ようやく回線遮断のためにネットワーク設定を開くことに辿り着いた。

この後のことを考えると頭に血が上って、ギンギンのクーラーの中なのに耳が蒸気するのを感じる。

そう自覚した時、AR気味に視界に被っていた画面が揺らいだ。

そう、視界じゃない。確かに画面が揺らいだんだ。


スティールチャレンジは実在します。興味のある方はぜひご検索下さい。

おそらく今後、本編でしょっちゅう出てきます。

ところで、他の方の作品で「少し冷静さ鋭さを取り戻す。」と書いていたら誤字かなーと自分も思うので、自分用メモとしても残しておきますが、これは誤記ではありません。勢いです。

そして、登場人物の名前とか、まだ全然出せていない状況であることに気づきちょっと慌てています。

年内に最低でもあと一人は作中での呼び名が付いた人を出したいですね。

ちなみに、現在頭にあるネタをそのまま吐き出すと、残り数話の中で一番セリフがあるのは練習用のカウントダウンと時間記録をしてくれる「小箱さん」になりかねません。

まあ、小箱さんはすらっとしてて優しい声で、文句を言わず練習に付き合ってくれる素敵な人(?)なので仕方ないですね。

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