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スーパービジョン

作者: ピロ君

 四郎は若い頃から結婚しないと決めていた。それは四郎の親がいつも夫婦喧嘩をしていたからだ。それ自身も嫌なことだったが、喧嘩の原因が嫌であった。母親は父親に、色が正常に見えないのを隠して結婚した、と責めるのだった。そのせいで、それが子供に遺伝したと。


小学生のときにクラスで検査があり、学校から四郎が色弱であると親にも伝えられた。母親はそれ以来、父親をことあるごとに責めていた。なぜ、教えてくれなかったのか、私を騙したのか、そうと知っていれば子供は作らなかったのにとか母親は愚痴っていた。姉も同じような検査を四郎より前に受けただろうが、そうゆう判定をされたのは四郎だけだった。


四郎は子供とは俺のことかと思った。中学生になると、図書室でこっそり調べたりした。それはつまり遺伝という仕組みで親から子供に伝わることのようだった。つまり、俺が結婚しても子供はそうなるらしいと理解した。それ以来四郎は自分に結婚の二文字を封印した。なぜならば、自分の家のような家庭は子供が不幸になるばかりだ、と考えたから。


「だからね、それは少しおかしな話だと思うんだよね」

私は、四郎の話を聞いて、そう答えた。たまたま他でもそのような話があり、色々調べていた。

「お母さんが、遺伝的な問題でお父さんを責めていたんだよね? 四郎君が色覚に問題があるのはお父さんのせいだとね?」

「ええ、そうですよ、親父は色弱だったんです」

「お父さんが色弱だろうと、色盲だろうと、関係ないんだけどね」

「関係ない? どうゆうこと?」

「男の子の場合、お母さんが正常であれば父親に関係なく正常しか生まれないんだよ」

「えっ?」

「だから四郎君の色覚異常は、お母さんの遺伝なんだよ」

四郎君はしばらく考えていた。私はさらに

「お母さんは自分が色覚正常者だから、原因をお父さんにあると決め付けたわけだが、色覚正常者にも遺伝的保因者がいる、お母さんは遺伝的保因者であると考えられる。またお母さんの親にも色覚異常者がいるはずなんだ」

「息子さんが色覚異常者になるケースは母親の色覚異常、あるいは遺伝的保因しかありえない」

整理する意味で、四郎君に語りかけた。

「つまり、お父さんはとんだ濡れ衣をかけられていた、というわけだ」


いつも不思議に思っていたんだけど、なぜ色盲や色弱は無くならないのかな?


人間にはエイズにかからない人が25人に1人居るという話がある。人免疫不全ウィルスはある特定のケモカイン受容体を介してリンパ球に侵入することが知られており、その特定のレセプターを生まれつきもっていない人はHIVに抵抗力がある。


だからエイズで人類が滅亡することはあり得ないわけです。


ダーウインがそう言ったか言わないか、記憶に無いのですが、無駄な遺伝はないのではないでしょうかね。生物は常に多様性を志向してきたのは間違いないでしょう?


無くならない理由はスーパーを生み出すために必要な特性だとは考えられませんかね? 実際、それが最近分かって来たようです。


「ところで、四郎君。君は結婚を諦めたらしいけど、それは実に惜しい話なんだよ」

四郎は怪訝そうに私の顔を凝視した。自分の色弱が実は母親の遺伝だったというショックから抜け出していない四郎であった。


「スーパービジョンって聞いたことあるかい?」

「無いですね」


普通、人間には眼球の中に3色 青・緑・赤 の”錐体”という組織で色を吸収し100万色が見える。スーパービジョンは4色見えるらしい。4色見えると1億色の色が見えるらしい、、。実は絵描き、写真家、印刷、様々な職業の中でこの他人には見えない色が見える人が居るらしい。


「それと私と何の関係があるの?」


「どうもスーパービジョンチャイルドは親が色弱だった子供のようなのです」

「君の親の場合と同じだけれど、君の子供は母親が正常であった場合、男女とも色神正常しか生まれません。だからそれを気にして結婚しないなんて、ナンセンスです」


>最も一般的かつ顕著な4色型色覚は、色覚異常としてよく見られる赤緑色素の変異(赤色色弱)と考えられる。これはX染色体の不活性化によって赤錐体が色弱であるものとそうでないものが混合することで起こる。


つまり、正常と異常の混合でスーパービジョンは起こる。しかも、男性にも居る。私はその男性を知っている。芸大の先輩で、彼は授業で100色の分離認識を行って、教授から大変ほめられたそうだ。多くのクラスメイトは脱落した。そして彼の父親は二色型色弱であった。著名な尺八師であった。


「つまり、四郎君はスーパービジョンチャイルドを作ることが出来る選ばれた人なのだ」

「君の見ることが出来なかった様々な色を君の子供が普通の人以上に感じて、見ることが出来るなんて、素晴らしい話だろう? 人は一見劣っているように見える個性でも、何らかの必要性によって存在しているものなんだ。何代か後に花開かせるために」

「多分、動物はこうゆうトライの繰り返しで進化してきた」

「ところで、爬虫類や鳥類などは、4色型色覚をもつ。人類は進化の過程で1色欠落したのだ」


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