クッコロ姫と魔王様
「ひぃぃ――」
「何てことだ! 勇者は既に!?」
「くっ、姫様だけでもお逃げ頂け」
さて、大混乱なのだが――これは俺の責任ではないと思う。
剣を構えながら震える近衛騎士、結界を張ろうと頑張るも失敗する聖職者、失神して崩れ落ちる巫女、何故か豚が一匹、いやこれも神官っぽい服を着ているが失禁したのか、うん……なんか地獄絵図だよな。
「そ、そんな、召喚の魔法に割り込むなんて……」
いや、割り込んでないからね?
「漆黒の髪と瞳、そしてこの魔力、貴様は魔王――」
「はぁ、つか――」
「クッ、殺せ! その代わりに我が命でこの者達を助けよ」
あ、はい、一応この国ではそう呼ばれているらしいが弁明聞いて欲しいのだが遮るなよ!
マジで物騒だなオイ……クッコロ姫なんていらねえんだよ。
「ひ、姫様を盾にするとは何たる卑怯な!」
「やはり魔王と言われるだけあって鬼畜な輩」
「私達の為に姫様がっ、あぁなんてお優しい」
ちょっと待てやコラ!
「誰がっ――」
「私一人が生贄になる皆逃げよ!」
人の話を聞かない輩ばかりかよ……
「いや、だからな? 俺のは――」
「姫の犠牲を無駄にするな! 退避ぃぃぃ!」
俺の話を聞けといい加減に切れそうだった俺の言葉を遮ったのは、いつの間にか復帰していたデブった神官が発した一言だった。蜘蛛の子を散らすように逃げだした人々……
そして残ったのは俺とクッコロ姫のみだった。
なんでこうなったとしか言えないこの状況、頭が痛くなってきた。