植木との出会い
植木との出会いは、ちょうど1年前。中学校に入ったばかりの頃だ。
俺は昔から足には自信があったので仮入部期間の時にすぐに陸上部に入り、そのまま中・長距離を選んだ。
うちの中学はベットタウンの中にあるため、あまり校庭が広くなく、林間コース(校庭の周りがちょっとした林になっており、生徒はそこを林間コースと呼んでいた)のすぐそばにテニスコートもあり、たまにテニスボールが飛んできていた。
植木はテニス部員であり、その飛んできたボールを拾って植木に渡したのが初めての出会いだった。
植木とは小学校が別だったこともあり、正直その時は何も思わなかった。
ただ、笑うと見える八重歯が印象的ではあった。
俺も部活に打ち込み、植木もテニスを頑張っていた為、林間コースを走っているときにその姿を横目で見ることはあったが、ただそれだけだった。
本格的に植木を意識し始めたのは、入学してから1か月後のオリエンテーションの時だった。
オリエンテーションは山でハイキングをすることによって新しいクラスの団結を深める目的だったので、ここで俺も違う小学校出身の友達と親しくすることができた。
植木は別のクラスだったので、本来ならば接点はなかったのだが、植木が遊歩道脇の崖に水筒を落として困っているときに偶々俺が後ろから上ってきていたので水筒をとってやり、そのまま頂上まで一緒に上っている時に話をしたところ、植木はボーイッシュではあるがすごく可愛らしい女の子であり、非常に気も合うことが分かった。
オリエンテーションが終わってからも、廊下や校庭で会った時に話をするようになり段々と気になってきていた。
本格的に好きだと意識をしたのは1年の3学期の時である。
いつも通り部活に行こうとしたら植木が校舎裏に向かっている後ろ姿が見えたので、気になって後をつけたとき、告白の場面に遭遇してしまった時だった。
「俺、植木のことが入学してから好きだった。俺と付き合ってほしい」
「…ごめんなさい。私他に好きな人がいるから貴方とは付き合えない」
申し訳なさそうに植木が断っている場面を見たとき、俺の心臓がギリギリと痛んだ。
その時、俺は植木が好きになっていたのだと初めて意識をした。
我ながら陳腐だが、好きになったのだからしょうがないじゃないか。くそ。