狼の王
ただの思い付きで作ったお話です。続きとか全く考えてないです。何も始まってはいないがただもふもふ良いよねみたいな話。
温かい。
音がする。
何の音?
チュン、チュンと聞こえる。
鳥の鳴き声?
瞼に射し込んでくる光が眩しくて顔を顰める。まだ寝ていたいが、そうもいかないか。
仕方ない。起きよう、と頭を上げながら私は瞼を開いた。
そこにはーー。
朝陽に煌めく銀色の獣が海を思わせる蒼色の瞳で私を見つめていた。
どういうことなの。
めっちゃ見てくるんだけど。
え、喰われる?私喰われる?
恐怖で身を竦めたが、目の前の獣は何をするでもなくただ私を見ているだけだ。目の前と言っても私と獣との距離は約一m程。
けれど、万が一にも私がこの獣に何かしようとしても獣に返り討ちにされるだけだ。しないけど。
何か反応を示すべきなのか分からずに時間だけが過ぎていく。
………………………………………。
え、もうこのまま見つめ合って三分過ぎたかに思われるのだが。私も獣も全くアクションを起こさない。というか、起こせる反応がない。
どうしようというか何この状況、とぐるぐる考えていると、目の前の獣から何か響いてきた。音にしては唸り声だが、その音が頭へ到達して理解した瞬間には別の音に変わっていた。
『お前は?』
…………。ごめん、言っても良いですか。
何 故 に 言 葉 が 分 か っ た ?
え、私もの○け姫じゃないよ?それにこの獣、喋ってないよ?唸り声だったよ?唸り声なのに言葉が分かるって何なの?ホンヤクコンニャクでも食べてきたっけ私。
と、現実逃避していると、獣の顔が皺を刻む。怒った?!と思って慌てて先程の質問に答える。
「凛音」
はっきりと日本語で言った。言った筈なのに、返ってきた唸り声というか言葉は、
『リオンか』
という一言。………あれ?私ちゃんと日本語で言ったよね?唸り声っていうか獣声?で話してないよ?もしやこの獣もホンヤクコンニャクを食べたのか?
とまた思考に陥ってる最中に再び獣声が聞こえてきた。
『私の契約主となって貰えるか』
………………はい?
本日何度目かの思考停止。契約主?え、何それ美味しいの?
というか契約主ってどういうこと。今の自分の状況すら分かってないのに。
私が脳内で?マークが大量に浮かんでいるのに対し、目の前の獣は無言で尻尾をユラユラと揺らしていた。
もふりたい。
めっちゃ触りたい。もふもふしたい。撫でたい枕にしたい。そんな欲望で無意識の内に頷いていた。
この獣との契約をした後、あんな面倒な事になるとは知らずに頷いてしまったことを後悔したのは言うまでない。