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少年冒険記譚  作者: kakeru
6/62

date06:いざ下水道へ

14-17まとめました。加筆修正はしておりません。


ピチャン、ピチャンとどこからか水滴が落下している音が響く。


あたりは当然暗く、明かりの類は一切なかった。



地面はじめじめしていて滑りやすく、こけも生えているようだ。


通路の隣を下水が流れ、異様な臭いを発している。




「くさ~~~っ」




僕は思わず鼻をつまみ、急いで地上へ戻った。


クロウも顔にしわを寄せていたから、くさかったに違いない。




「明かりがいるね、あとマスクも…」



急いでそれらを買い、再び下水へ。




マスクを装着すると、少しだけだがマシになった。


臭いことには変わりないが。


クロウをみると、先程のように顔をしかめているだけだった。



動物用のマスクもあればよかったが、人のものしかなかったのだ。



地図をみると、下水道はいくつも枝分かれしていて、複雑に入り組んでいた。


でも、核を置く祭壇は1つのようで、下水の中央あたりに位置しているようだった。



魔物駆除も仕事なのだが、先に核を取り替えてから行うことにする。


また新たに進入されたらきりがないからだ。




地図を見ながら祭壇に向かって慎重に歩いていく。


途中で魔物に出会うが、クロウがさっさと倒してしまうので僕の出る幕はない。


核回収だけである。




そうして1時間ほど歩くと、淡く輝く白い光が見え始めた。


おそらく、結界核の放つ光だろう。



祭壇まで辿り着く。


そこには、ひびが入り、壊れそうな結界核が設置されていた。


かばんの中から新しい結界核を取り出し、古い核を慎重に外してから入れ替える。




新しい核は、一際強い光を放ち、目を開けていられなくて手で目を覆いきつくまぶたを閉じた。


しばらくすると核は正常に作用したようで、白い光を放ち、緑色の文字のようなものが幾重にも重なり核の周りをぐるぐる回っていた。



これで、依頼の半分は終了した。




「クロウ、この仕事、今日で終わらそうね」




クロウも頷き、順番に下水を回り始めた。








あとは、この区画だけかな…



地図を見ながら、再確認する。




「クロウ、この区画で最後だよ」




クロウは、やっとかといった感じで頷く。


ややぐったりしているのは気のせいではないだろう。


臭いが精神を蝕んでいる。



長時間もぐって、嗅覚が麻痺したのかそこまで気にならなくなってきたが、やはりくさいものはくさい。



かばんの中も核であふれていて、もうどれだけ狩ったかわからないほどだ。


それほど、下水の中は小物とはいえ魔物が入り込んでいたのだ。



これが町中に出てこなくてよかったと思う。





そうして、1時間ほどかけて最後の区画を掃除しおえ、僕たちは地上にでた。




地上にでたら、月が静かに輝いていて、星が空を儚く彩っていた。


結構な時間がたっていたようだ。




「もう夜になってる…」



下水道に入ったのは朝。今はどっぷり夜になっている。


おおよそ8時間はもぐっていたのだろう。





「協会に行こうか…」



地上に出たにもかかわらず、自身に臭いがしみついてしまったのか、まだくさい気がするのだ。


はやくお風呂に入りたい!





2人で協会に早足で向かっていった。



あとには、くさい臭いが尾をひくだけである。





翌日、お風呂も終えてさっぱりした僕は、協会のカウンターに来ていた。


下水道の依頼の報酬を受け取るためである。





「メイさん、おはようございます」



「おはよう、ユエくん。よく眠れた?」



「はい!」



「あら、クロウくん、いつもよりさっぱりしてない?」




クロウの毛並みは、いつも以上に整っていて輝いていた。


なぜなら、昨日一緒にお風呂に入って石鹸で洗い、部屋でブラッシングしたからだ。




もう、くさくてくさくて!!


昨日きていた服は全部捨てた。


くさかったから。



今日は予備で買っておいた服を着ている。


また、服を買わねばと財布事情を気にしているユエであった。





「下水道の依頼、こなしてきました」



メイさんは、目をぱちくりさせて



「もう?」




頷くと、




「あの依頼、いつも3日から4日かけて行われているものなんだけど…」



「そうなんですか?」



「少し待ってね」



メイさんは備え付けられている通信機でどこかに連絡しているようだった。




「結界がきちんと作動していることが確認されたわ」



「よかったです。あの、これ、下水にいた魔物の核です」



カウンターに昨日とってきた魔物の核を置く。



数えたら、全部で83個あった。


結構いたんだなぁ…


クロウがサクサク倒していくから気にもとめなかったけれど。




「結構いたのね…。これ報酬よ」




メイさんは、カウンターに報酬を乗せた袋をくれた。




「ありがとうございます」




袋の中を見ると、金が1枚、銀が500枚入っていた。


それと、何かの核。




「あの、これ…?」



「それはね、守護核といって、身につけておくことで防御力をあげてくれるの」



「なるほど。わかりました。ありがとうございます」



それを巾着袋に入れて持ち運ぶことにした。




「今日は少し町を観光してきますね!」



「いってらっしゃい」



メイさんは、笑顔で送り出してくれた。





お金もできたことだしと、買い物に行くことにした。


服もほしかったけど、それ以上に装備を整えたかったのだ。



改めてみると、僕の装備はナイフ1つだったりする。


防具もないし、武器もナイフ1つだけっていうのは心もとない。




まず、防具を見に行ってみた。


アズル防具店、と看板に書いてある。



実に様々な防具が並んでいた。


布防具から皮防具、いかつい鎧と様々である。




「いらっしゃい」




カウンターの奥から、いかつい男の声がした。


みると、えらくがっしりした体格の男がでてきたところだった。




「なにをお探しで?」




「あの、僕でも使える防具ってありますか…?」




少し気おされながらも用件を告げると、訝しそうに眉をひそめ




「坊主が使うのか?」



「そ、そうです…」



「子供用の防具は置いていない」




肩を落としてうなだれた。


売ってないのか…


これは、他のところを探してもないかもしれないな



「あの、作ってもらえませんか…?」



「…お金がかかるが、構わんか?」



「いくらくらいですか…?」



男は僕の全身を見て、



「部分鎧で十分だな。一式で800銀」



「一式?」



「体と腕、足、頭、だな」



「えっと、お金が足りないので体と腕だけお願いします…」



「ふむ。それなら500銀だ。防具の引渡しのときに支払いいただくがよろしいか」



「はい」



「2日後に取りに来い。仕上げておく」




その言葉に僕はうなずいて、防具店を後にした。


なんとも、話のしずらい男であった。


でも、作ってくれるというのだから優しい人だ。




ついで、武器店に足を運んだ。


やっぱりいろんな武器がおいてあって。



その中で、ナイフと片手剣を中心にみていると、ぽんっと肩をたたかれた。


振り向くと、シルキーさんが立っていた。




「よう、元気だったかい?」



「シルキーさんっ、こんにちは」



「あぁ。何を探しているんだい?」



「えっと、ナイフと片手剣を…」




シルキーさんは僕を見て、一人でうんうんと頷いた後、




「これなんてどうだい?」



すすめてくれたのは、飾り気のない少し小ぶりの片手剣だった。


僕はそれを手に持ってみる。


少し、重い気がする。



それを伝えると、



「軽すぎるのは、攻撃が軽くなるからね。ならこっちはどうだい」



別の一振りを僕に差し出す。



そちらは、特に重たくはない。手に馴染むし、いい気がする。


その剣は、先程のように飾り気はないものの、刀身にうっすら文字が刻まれている。


先程の剣にはなかったものだ。



「シルキーさん、この文字なんですか?」



「文字?見えないけどねぇ…」



剣の腹を角度を変えてみているが、文字はないと言い切った。


僕の目の錯覚かなぁ?



「これにします。重さも丁度いいし、手に馴染んでいる気がするので」



「そうかい」



僕は適当なナイフを手にとって、それも一緒に会計を済ませる。


2つでなんと1金とんでいった。



下水道で得た報酬は、防具と合わせて全部消えた。


最初の薬草と討伐で得た報酬のみの残金である。


しかも、途中で宿代やランタンなど必要物品も買ったし、食費もかかっているので、残金がかなり少なくなった。



このままでは、宿代すらあやしいじゃないか…



明日から、また依頼をこなして稼がないとなぁ




武器店でシルキーさんと別れ、僕は協会へ戻った。



クロウと、再びあの草原へ来ていた。



新しい武器を試してみたかったのもあるけれど、何よりお金がなかった。


なので、初めて受けた協会が出している薬草の採取とラグルの討伐に出向いてきたのだ。


ここであれば、防具がなくてもなんとかなると踏んだからだ。




「ねぇ、クロウ。やっぱりこの武器に文字が見えるんだけど…」




陽の光に透かして、刀身をじっくり見ている。


気のせいなんかじゃなくて、うっすら見える。


ちゃんと見える。


何が書いてあるのかは全然わかんないけれど。




クロウも刀身を一緒に覗いている。


金の光が一瞬鋭い光を宿したようにも見えたけど、瞬きをしたらいつも通りで、目の錯覚だったんだろうと片付ける。




「うーん…なにかなぁ」




さっぱりわからない。


わからないことを悩んでも仕方ないので、剣を鞘にしまって、その辺に生えている日陽草を採取する。



間で、襲ってきたラグルを片手剣を使って相手をしてみた。


短剣よりもリーチが長く、久しぶりの長剣の感覚に慣れなくて少してこずるも、なんとか倒すことができた。



慣れてくると、1撃で倒せるようになり、やはり短剣より攻撃力が高いことがわかる。


いいものを手に入れたなぁ…



効率のよさに感動を覚え、うきうきと薬草を採取し、核を回収して、夕方に帰路についた。




草原が赤く染められて、風に吹かれて柔らかく揺れている景色をみるのも、好きだった。


村にはない光景であったし、何もかもが新鮮に目に映るのだ。



この景色をコットやミナミと見たいなぁ…


ふと故郷を思い出す。



父さんも母さんも元気かな…




どうか、僕のせいで大変な目にあっていませんように。


そう祈らずにはいられない。





そうこうしている内に、あっという間に日が暮れてしまった。



町に帰るにも1時間は歩かないと行けないし…


これは、野宿かな…




僕は道の脇に等間隔で生えている1本の古木の下に座り込む。




「クロウ、星がきれいだね」



クロウは僕の隣に伏せていて、固目だけ開けて空を見た。



ぼんやりと夜空を眺めていると、地面にポツ、ポツと明かりがともり始めた。




といっても、道ではない。


草原の中だ。




「クロウ、何かなぁ」



面倒くさそうに再び片目を開けて草原を見る。



「一緒に見に行こう?」



好奇心に勝てなくて。


でも、少し夜の草原は怖い。



だって、お化けとかでてきたら嫌だよ?



クロウを誘うも、とても面倒くさそうだ。




「お願いっ!」




手を合わせて必死にお願いを繰り返すこと5分、クロウはやっと立ち上がってくれた。




「ありがとうっ」




抱きつこうとしたけれど、するっとかわされて、早く行くぞ、と言わんばかりに歩き出してしまった。




「ま、まって、一人にしないで…」




いつものようにクロウの後をついて走っていくのだった。







草原の光の下に辿りついた。



立ったままじゃよくわからなくて、しゃがんでみてみると、小さな花が、こぼれた月の光を静かに湛えるように淡く咲いていた。




「これ、なんていう花なのかな…。村にはなかったね」




一輪摘んでみる。


光が少し弱くなるも、儚く輝きを放っていた。



明日、朝一でリリーに見てもらおうかな。


僕は適当に3輪ほど摘んで先程の木の下で夜を過ごした。




日の出とともに起き出して、早朝に町に戻る。


どんなに朝が早くても、町の門には門番がいて、欠伸をしながらも検問をしっかり行っていた。



朝早くから大変だなぁ…


挨拶を交わして、門をくぐり、リリーが教えてくれた住所を思い出す。



「あの、すいません。5番街3丁目ってどのあたりでしょうか…」



先程挨拶した門番の兵士に尋ねると、



「あぁ、この大通りをまっすぐ行って、8番目の十字路を右、そのまま行けば5番街って書いてあるプレートがある。そのプレートを左にいけば、3丁目あたりにでるはずだ」



は、八番目を右、5番街プレートを左…



だ、大丈夫。

たぶん大丈夫。

きっと大丈夫。

い、いける…はず……だ…!



「ありがとうございます!」



ぺこっとお辞儀をして、慎重に数を数えながら道を進んだ。




8番目…と。


ここを、右…




しばらく歩いていると、前方に確かに5番街のプレートが…


ここを、左…



そこから先は、似たような住宅ばかりが並んでいて。



リリーが言っていた番地を探すと、小さなこじんまりとした家が1件。




おそらく、この家だよね…


ち、違ったらはずかしいけど、そこで尋ねればいいよね。




かばんの中をチラッと覗いてみると、まだ辛うじて光は保っているものの、もう随分消えてしまっている。


急いで、リリーに会って訊かないとなぁ…




非常識な時間の訪問だとは思うが、控えめにノッカーを慣らしてみる。




「はぁぃ」



リリーの声がした。

よかった、合ってた…



ぱたぱたと足音がして、扉が開けられる。




「おはよう、リリー。久しぶり」



「あ、おはようございます、ユエさん」



「みてもらいたいものがあるんだけど、時間いいかな…?」



「あ、はい、大丈夫です。どうぞ」



彼女は僕を家の中に招き入れてくれた。



家の中は生活に必要な物が一式と、見たこともないおそらく調薬に使うであろう道具たちが並んでいて。


そして、本棚には難しそうな薬学書などが並んでいた。



僕には絶対読めないなぁ…


小難しい話は苦手なのだ。


よく、村の大人が教えてくれていた知識の時間など寝ていたものだ。




そんなことをぼんやりと思い出していると、




「ユエさん、なにか珍しいものでもありましたか?」



「あ、なんでもないよっ」




慌てて我に返る。



かばんから光が消えてしまいそうな花を取り出し、机の上に載せる。




「これ、何か知ってる?」



「あ、月涙草」



「月涙草?」



「はい。微弱ですけど、体内の魔力を回復する薬が作れるんですよ」




魔力!



なんか、もうそんな言葉をきいただけで興奮してしまう。




「リリーは魔法使える?」



「残念ですけど、使えないです」



「そっかぁ。どこにいったら魔法のことがわかるか知ってる?」



リリーは少し考え込んだ後、



「んっと、おそらく協会で教えてもらえるはずです。教えを請えなくても、それに類する書物がおいてあったり、教えてくれる誰かを紹介くらいならしてもらえると思います」



「ありがと。今日さっそく聞いてみるよ」



僕はもう嬉しくて嬉しくてニコニコしっぱなしだった。



変なテンションで彼女の手を握ってふりまわし、



「その花、いらないかもしれないけどもらっておいてよ。僕使わないからさ」



「あ、ありがとうございます…」



ぶんぶん手を振られながら、リリーはなんとか言葉を吐き出した。



「じゃ、僕行くからー!」



挨拶もそこそこに協会に向かって走り出した。




魔法ーーーーーー!!




格好よく魔法を使っている自分を妄想して、スキップしながら走っていく。


その様は、異様な光景であるということをユエは自覚していなかった。




これ以外にも、核っていろいろ使い道があるんですよ。

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