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少年冒険記譚  作者: kakeru
4/62

date04:冒険者になるために

08-10まとめました。加筆修正しておりません。



引きずられてたどり着いた場所は、こうでかでかと書かれていた。



『ザルハトール』


店の看板だ。



入り口の立て看板に、『冒険者御用達の店、ザルハトールへようこそ!』



…冒険者御用達の店?



彼女は立ち止まることなく、その店ののれんを潜り抜けてしまった。

勿論、僕を引きずって。



「店主ー!個室開いてるかい?」



すると、厨房の方から、店主らしき人がでてきた。

50代くらいの恰幅のいいおじさんで、彼女と僕、そしてクロウを見てから



「やぁ、シルキー。と、見慣れない子達だね」



シルキーと呼ばれた女性に視線だけで問う。



「あぁ、そこの道で拾ったんだ。面白そうだろう?」



やれやれ、と店主はつぶやいて、指で場所を指定する。



「あいよ」



シルキーは僕を引きずって指定された部屋へ入っていった。


そこはテーブルと椅子がおいてあるだけの、簡素な部屋だった。


彼女は僕を椅子に座らせると、その向かいに自分も座る。



クロウは、僕の足元に伏せてしまった。


…心細い。



「何か食べたいものはあるかい?」



特にないので、そう答えると、



「店主ー!ランチ2つー!」



大声で注文をすませ、あらためて僕をみた。



「私はシルキー。これでも冒険者やってるんだ」



「あ…。僕はユエです…」



ペコリと頭をさげた。



「ユエくんね。ところで、クロウくんって言ったかな、どこで会ったの?」



「サマルの森ですけど…」



「へぇ、きいたことないね」



彼女が、どうしたいのかわからない。

素直に答えていっていいのかもわからない。


それが態度にでていたのだろうか。



「あぁ、ただの興味だから気にしないで。めずらしかったからさ、そんな高位のこ連れてたから」



「高位?」



「あぁ、そうさ。金色の瞳がその証拠さ。普通の魔物は黒かったり茶色かったり赤かったりするもんだ。金色なんてめったにお目にかかれないよ」



「そう、だったんですか…」



僕はモノを知らなすぎるようだ。



「あの、冒険者って…」



「ん?」



「えっと…冒険してたら、そう名乗っていいんですか?この店の入り口に冒険者御用達の店って…」



「あぁ。冒険者の互助協会ってのがあってね。そこに登録すると身分証明書が発行されるんだ。それを持ってると、一応冒険者だね」



へぇ…

そんなのがあるんだ。

知らなかった。



こんなのだよ、と胸元から一枚のカードを見せてくれた。

そこには、




 冒険者証明書


  シルキーア=ラグボルト

  職業:剣士




と書かれていた。



冒険者っぽい!

僕のテンションはうなぎ上りに高くなる。



「それ、僕も登録できたりするんですか?」



興奮しながら尋ねると、



「問題ないと思うよ。場所はわかるかい?」



首を振ると、シルキーは頷いて



「食べ終わったら連れて行ってあげるよ」



と、そう言ってくれたので、お言葉に甘えることにした。



昼食を食べた後、シルキーさんと一緒に冒険者互助協会へやってきた。


そこは、先程の店から歩いて10分ほどのところにあった。




どこにでもありそうな居酒屋風の外見に、古ぼけた看板には『冒険者互助協会』と書いてある。

入り口を潜り抜けると、まずはカウンター。


そこには女性が一人。


茶色いゆるくウェーブかかった髪に、誰もが美人だと言える整った顔を持ち、しかもスタイルが抜群によかった。

でるところがでて、ひっこむところがひっこんでいるような女性だったのだ。



「こんにちは、坊や」



魅力的に微笑みながら声も無駄に甘くて。

フェロモンだしまくりだった。



しかし、ユエは彼女の魅力に気づかない。

少年であるがゆえに、どぎまぎはするものの、色気に触れたことがないからだ。


クロウはというと、興味が一切ないようで、彼女をみることすらしなかった。



「メイ、何子供にまで色気つかってんだい。仕事しな、仕事」



「やだシルキー。色気なんてふりまいてないわよ」



メイと呼ばれた女性は、僕をみて



「えっと、依頼のご相談かしら?」



「あ、あの。冒険者の登録がしたいです」



メイは目をぱちくりとさせたあと、



「冒険者の登録?坊やが?」



「無理ですか…?」



「あぁ、そんなことないわよ。簡単な試験を受けてもらうけど、時間は構わないかしら」



メイは値踏みするように僕をみて、ついで隣で座っているクロウをみた。



「はい!」



「そう、少し待ってね」



メイは、カウンターの中でごそごそと必要な書類と道具を並べ始めた。



「まず、これ。登録に必要な情報を書き入れてね」



紙をみると、名前や年齢など、個人情報を書く欄と、職業を書く欄が設けられていた。

僕は、とりあえず個人情報の欄をうめていくも、職業の欄で困った。



「あの、職業ってなんですか…?」



「職業っていうのは、ユエくんの一番得意な事柄を表すものかしら」



僕が首を傾げたからか、さらに言葉を綴る。



「シルキーはね、剣が得意なのよ。片手剣が獲物よね」



「そうだよ。だから、剣士。他にもできることはあるが、主はそれだね」



「なるほど」



僕は何が得意なんだろうか。



「うーん…」



「そんなに深く考えなくてもいいわ。職業に縛られることはないのよ」



「そうなんですか?」



「えぇ、それによって依頼が限定される、というものでもないの。本当に個人を表すためのものなのよ。もちろん、できないことは書いちゃだめだけどね」



「あの、どこかに職業一覧とかないですか…?」



やっぱり職業といわれてもピンとこなかった。


これね、とメイさんから一覧の書かれた紙を受け取る。

実に様々な職業が書かれていた。


剣士にはじまり、魔法剣士、魔法士、召喚士、闘拳士、シーフ、などなど…



いっぱいあるなぁ…


自分に当てはまりそうなものを探して、ひとつひとつみていく。

と、下から急に服を引っ張られる。そちらをみると、クロウが見せろと言わんばかりに再度引っ張られる。

それにしたがって、しゃがんで紙を見せると、クロウはざっとそれに目を通して、一つを前足で押した。



それは、罠士。



…それ、森で罠をはって獲物を捕まえていたから、言ってる?

まあ、いっか


僕は、クロウの決めてくれた罠士を職業欄に書く。



メイさんはそれをみて、カード化するべく処理を施していく。



「あの、シルキーさん」



「なんだい?」



「魔法って誰でも使えるんですか?」



「才能があれば使えるよ」



「才能かぁ」



どうやって才能なんて見るんだろうか。



「メイ、あれだしてやっておくれよ」



今の話もきいていたのだろう、水晶球のようなものをカウンターにおいてくれた。



「これはね、体内の魔力を知るためのものなの。魔力の大きさであったり、その人の得意とする属性を知ることはできないけれど、使えるようになるかどうかの判断はできるわ」



「こう、手を水晶の上に乗せる。でしばらくすると…」



シルキーさんが手を乗せた水晶球は、淡く光り始めた。



「これで、私には少なくとも魔法を使うことができることがわかる」



手は離したら、光も消えてしまった。



「はじめてこれを見たときは、跳んで喜んだもんさ。まあ、結局魔力はあるけれど、魔法が使えるレベルではなかったみたいでね。泣く泣く諦めたのさ」



「そうなんですか…」



「まあ、私の話はいいさ。乗せてみな」



僕はシルキーさんに促されるままに水晶球に手を乗せた。

しばらくすると、シルキーさんの時のように淡く光り始めて。



「ぼ、僕も魔法が使えるかもしれない?」



うんうん、とシルキーさんが頷いて。



「そうだね、一度試してみるといいよ」



「はい!」



僕も魔法が使えるかもしれないんだ!

楽しみすぎるっ



僕が魔法を使っている場面を妄想して、にこにこ(にやにや?)していると、メイさんから声がかかった。



「はい、これが冒険者証明書ね」



受け取ると、




 冒険者証明書


  ユエ=ハルフルト

  職業 罠士




裏を見ると、ランクF



と書かれていた。



「ランク?」



「それはね、冒険者のランクなの。危険な依頼を、何も知らずに受けてしまって死ぬことがあるかもしれない。そういったことを防ぐために、依頼や冒険者にランクを振っているの」



「なるほど…」



それは、なかなか理にかなっていると思った。



「と、試験なんだけど。場所を移動するわね」



メイさんの後をついて、施設の奥へ歩いていくと、大きい場所にでた。



「どれくらいの戦闘力があるのか、みてみようと思います。理由は、その人のことを知らないと依頼がふれないから」



せ、戦闘?



「戦うんですか…?」



不安な表情がでていたようで。



「弱い擬似モンスターが相手よ」



私に剣は向けないでね、と苦笑して言われてしまった。



メイさんが広場を出て行った後、いつかみた気がする緑色のアメーバが1体、ぼとっと落ちてきた。



「あ…」



僕は、いつかの思い出と一緒にそれをなんとはなしに見ていた。


ふよふよと揺れ、踊っているように見える。

けれど、少しずつ距離をつめてきていて。



僕は冷静になろうと、深呼吸をして腰からナイフを取り出した。



大丈夫、大丈夫だ。



ナイフを構え、それに向かって走り出し、ざくっと斬りつける。

すると、それは光になって消えてしまった。



ふーっ…



終わったらしい。

その場にへたりこんでしまった。


初めて、まともな戦闘をした気がした。


クロウが隣まで歩いてきて、前足で頭を撫でられた。


お疲れ様ってことなんだろうか。



「はは、ありがと、クロウ」



僕はぎゅっと抱きしめた。


あのあと、メイさんと一緒にカウンターに戻ると、シルキーさんが待っていてくれた。



「おつかれ。どうだった?」



「はい、なんとか倒せました!」



「そうか、よかったね」



ぐりぐりと頭を撫でてくれた。


少し嬉しくなる。



「メイ、この依頼に行きたいから手続きしてくれる?」



シルキーさんは、一枚の紙切れをカウンターの上に置く。



「あぁ、これ」



メイさんは、ノートになにやら書き込むと、カウンターの紙切れを一緒に挟んだ。



「期限は無期限だから」



「あいよ」



で、こっちを振り返って、



「またな、少年」



手を上げて、建物から出て行った。

なんとも、忙しそうな女性である。


そんな女性を、自分が随分な時間をつき合わせてしまったことに、今更気づく。

今度会ったら、ご飯をご馳走しよう、と心に誓う。


勿論、お金ができたら、だ。



「メイさん、僕に受けられそうなお仕事ないですか…?」



「そうねぇ…」



メイさんは、カウンターから出て、紙がべたべた貼られている掲示板へ行き、見始める。

僕も習って、掲示板をみてみると。


実に様々な依頼が載っていた。


薬草の採取から魔物の討伐まで、町の厄介ごとや店番、用心棒と、ほんとうに様々である。



「これ、どうかしら」



メイさんが一枚の紙切れを見せてくれる。


そこには、薬草求む、とあり、日陽草20個  期限:無期限 とあった。



日陽草ならみたことがあり、勿論採取したこともある。



「大丈夫だと思います」



メイさんは頷いて、



「なら、これにしましょうか。ついでに、これも受けておく?」



といって見せてくれたのは、魔物の討伐。



「この魔物は、日陽草がとれる場所あたりに出没しているの。倒したら、心臓部分の石が残るから、それを回収してみせてくれたらいいわ」



あらためて、紙を見る。


魔物の討伐。対象:ラグル 討伐数:5  注:証拠として、核を5つ持ち帰ること


つまり、5個心臓部分の石――核というらしい、を持って帰ってきたらいいらしい。



「わかりました。それもお願いします」



少し、いや大分不安だけれど。

外に出るなら、いつかは通る道だと思い、覚悟を決める。



「この薬草は、この町の北門から外に出て、1時間くらい歩いた先に生えているみたいだから、そこを目指してね」



メイさんは、シルキーさんの時と同じように処理をしたあと、そう言って僕を送り出してくれた。






言われた通り北門から外に出る。

お金がなくて、装備やアイテムを整えることもできなくて、そのままの格好である。


あれから時間もたち、今や夕方。

急いだところで夜になるのだが、どうせ宿にとまることはできないからと野宿することに決めたのだ。


少しでも近づければ、と北に向かって歩いていく。




来た時は東門から。北門から先は未知の世界だった。

でも、来たときに見かけた風景とさほど変わることもなく、轍の残る道と、草原が広がっていて、遠くに山や森が見える。


今は夕陽に照らされて、世界を赤く彩っていた。



「そのうち暗くなっちゃうね」



クロウは気にすることもなく歩いていく。



道の脇に何本も木が生えており、そのうちの老木の下で野宿をすることに決めた。



「クロウ、今日はここで野宿しよう」



クロウはその老木をちらっとみて、僕の隣に伏せて目を閉じた。





そうして、今日という日が終わりを告げた。

なかなか、濃い一日であった。





クロウ、実はすごい人?でした。


改稿、修正しました。

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