date03:いざ、外の世界へ
06-07まとめました。加筆修正はしておりません。
森の中を歩く。
道を通れば、誰かが追いかけてきていたら見つかってしまうから。
目的地は、隣村…を通り越した先にある町だ。
このあたりでは、一番賑やかな町で、この地域の領主が住んでいる中心地でもある。
それは、森を西に進んでいき、抜けてからさらに2週間ほど歩いた先にある。
と、きいている。
行った事はないので、どれほどかかるか検討もつかないが。
途中で休憩を挟みながら数時間歩いて、やっと森を抜けることができた。
目の前には、広大な草原が広がっており、柔らかい緑の穂が風に揺れてさわさわと音を立てている。
太陽は頭上高く輝いており、おおよそ正午を回った頃だろうとあたりをつける。
「クロウ、ここでお昼にしようか」
森の木の下に座り、道中でもぎとってきた果物をかばんから取り出す。
クロウは僕の隣に座り、草原をぼんやりと眺めていた。
かじると、甘酸っぱい味が口の中いっぱいに広がる。
「クロウも食べられたらいいのにね」
そう、クロウは食べない。
水を飲むのはみたことがあるが、食べ物を食べているところはみたことがなかった。
すすめても、そっぽを向くだけで口にすることはない。
いつもどうしているんだろうかと気にはなっているのだが、それは今後明らかになるだろう。
だって、ずっと毎日一緒にいるんだから。
そうして、草原の中をクロウと歩いていく。
世界は広い。
今まで、いかに狭い世界で生きてきたのかがわかる。
僕の世界は、村と、サマルの森だけだったのだ。
でも、一歩外へ出てみれば、こんなにも広い。
知らないこと、知らないものであふれている。
これから、何が待ち受けているのか。
心がわくわくしてくるのを、おさえられなかった。
魔物に出くわすこともなく、無事に隣村にたどり着いた。
といっても、ここは目的地ではない。
隣なだけあってうちの村との交流も少なくはなく、立ち寄ることはせず村はずれで一夜を明かすことにした。
そうして、10日が経った。
その間にいくつか村を経由したが、クロウを外で待たせ、村で食べ物を買ったりするだけで滞在はせず、野宿をする生活を送っていた。
今まで、道を少しはずれた所をクロウと歩いて町まで向かっていたのだが、行きかう旅人をみて気がついた。
なんと、魔物が人を乗せて歩いていたり、人が乗っている籠のようなものを引いて歩いているのを数が少ないながら見かけるのだ。
大半は馬なのだが、稀にみかけるので、もしかして世間では魔物が当たり前のこととして受け入れられているのかもしれない、と思ったのだ。
で、クロウと道を歩いてみた。
結果、びっくりされることはあるものの、叫ばれることも避けることもされず、クロウと一緒に歩けた。
それに気をよくした僕は、次にどこかの村にたどり着いた時には、クロウと一緒に村中をどうどうと歩くんだと決意した。
村をでてから20日くらいたってから、やっと町にたどり着いた。
2週間ほどときいていたが、やはり子供の足だからなのか、20日もかかってしまった。
旅の後半からは、途中で路銀もなくなりかけ途方にくれていたら、クロウが適当に動物を狩ってきてくれてなんとか飢えをしのいでいた。
クロウ様々である。
家で動物を捌く手伝いをしていてよかったと、この時思った。
そうでなかったら、飢え死にしているところだ。
洒落にならない。
町は、通り過ぎてきたどの村より一番の賑わいをみせていた。
道幅は広く、馬車が2台は余裕で通れる広さがあり、その両側には露店が並んで活気のいい声がいきかっていた。
何もかもが新しく、右へ左へ視線をとばし、フラフラと歩いていた。
クロウは隣を歩いているが、時々視線を感じる以外は大人しくついてきている。
露店を物珍しげに見ながら歩いていると、突然衝撃がきて尻餅をついてしまった。
「ったー…」
僕は何が起こったのか全くわからず、呆然としてしまって、目の前でお尻をさすって埃を落としている女性を眺めていた。
彼女はこちらをむいて、バツが悪そうな顔をすると手を差し伸べてくれた。
「ごめん、よそ見してたわ」
僕より何歳も年上に見える。
「あ、こちらこそ…」
彼女の手をとると、助け起こしてくれた。
クロウはそれを呆れた目で見ており、なんとも居心地が悪い。
顔が、それ見たことか、と物語っていた。
お願いだからそんな目でみないで!
女性は、腰にレイピアを差し、部分鎧を着付けていた。
なんとも似合わないものものしい出で立ちだ。
「少年、どこかに怪我はないか?痛いところは?」
「あ、はい、どこも怪我してないですし、大丈夫です…」
なんとなく気恥ずかしくて俯いてしまう。
「そうか、すまなかった。ところで、そちらは?」
彼女の視線はクロウに向けられている。
「あ、僕の友達のクロウです」
クロウは、彼女を一目見ただけで興味を失くしたようで、僕に視線を向けてきた。
なんとなく、面倒くさがっているような気がする。
しかし、彼女は気にすることなく話しを続けてくる。
「少年はテイマーなのかい?」
テイマー?
なんだろうか。
「テイマーって何ですか?」
「テイマーっていうのは、魔物を手懐ける職業の総称だね」
「テイマーじゃないです。クロウは、友達です」
なんとなく、嫌な気分になって友達だと強調する。
「そうか、悪かったね」
彼女は微笑んで、いい案が思いついたと言わんばかりにいたずらっ子がするような笑みを浮かべる。
「少年、詫びだ。ご飯をご馳走しよう、勿論おごりだ」
初対面の人間に何を考えているのだろうか。
彼女の真意が読めない。
ユエは、対人関係や駆け引きに関する対人スキルの経験値が圧倒的に足りなかった。
よって断ることもできず、真意も汲み取れず、言われるがままひきずられていくこととなった。
クロウは、やれやれといった風体で後をついてくるだけだった。
助けて~~~
ユエの生まれ育った村は、あまりに辺境すぎて新しい情報とか入ってきません。
なぜって、訪れる人がいないので。
特産品とかないですしね。
改稿、修正しました。