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最弱の魔王候補  作者: 木魚
第二章 第二次ラグナロク
40/80

VSゴルバスト

短いですが、更新です。

 頭が冴え渡り、視界がクリアになる。体中に力がみなぎり、何でもやれそうな気分になった。《デッドエンジン》の恩恵が及ぶ時間は、三十分。ゴルバスト一人を倒すのには十分すぎるかに思える。


「行きますよ」


 セバスは足に力を込めた。地を強く蹴って、ゴルバストに接近し、右手の剣を薙いだ。受け止められたが、気にもせず左の剣で突きを放つ。

 身を仰け反らせてそれを躱して、ゴルバストはセバスの手を蹴りあげた。


「よくもまあそれだけ動けるものだ。出血の量が酷いぞ」

「いらぬ気遣いですね!」


 そう一喝し、飛んで行った右手の剣を魔力操作で矢に変える。飛ばしつつ、背にある剣を右手に掴んで、一薙ぎする。ゴルバストが迎え撃ったことで、ギイインと、金属音が奏でられた。

 セバスは素早く後ろに下がって、剣を逆手に持ち替えた。そして高く跳躍して、木々を蹴りながら加速していく。背中の剣を合間に飛ばして牽制しつつ、隙をうかがった。

 警戒した構えを取りながら、ゴルバストが呼びかけた。


「……小癪な。早く攻撃せんと、お主の寿命が先に尽きるぞ!」

「言われなくとも、そのつもりです!」


 最高速度に達したセバスは、回転しながらゴルバストを斬りつけた。しかし、ゴルバストとて、人間最強の一角。ただで肉は斬らせない。

 剣を砕き、一番ダメージが酷い脇腹を的確に斬っていた。

 痛み分けの結果として、与えられた傷はセバスが下だったが、全体的な負傷は依然セバスの方が上だ。滴る血が、地面にシミを作っていく。

 しかし、幾ら状況が不味くても逃げることは出来ない。今この状況は、決闘神オラレスの力が最も働くものなのだ。


「そろそろ、終わらせようか。身体超強化魔導、《ブースター》」


 瞬間、あっという間に距離を詰めると、ゴルバストはセバスへ剣を振るった。

 ゴルバストが魔導を使ったことで、動きが比べ物にならないほど洗練されている。セバスは剣を受け止め、弾き返すと腕に魔力を集約させた。

 加えて、ゴルバストを覆うように剣を創りだす。 


「ええ、あなたの命を終わらせましょう。《パラダイスソード》」


 セバスの最後の技が解き放たれた。周りを取り囲む剣が一斉に矛を向けて、襲いかかる。セバス自身も腕を黙視できないほどのスピードで振るった。

 五月蠅いほどの金属音がしばらく続いた。

 ゴルバストの力量と、セバスの物量。

 数十秒後、勝負を決めたのは――


「……がはッ。やってくれましたね……まさか……」


 ――そのどちらでもなく、横から割って入った不意打ちによる一撃だった。

 セバスの体には、三本の剣が深々と刺さっていた。しかし、セバスもタダでやられたわけではなく、ゴルバストの右胸に剣を突き刺していた。


「『神の力』は、とっくに解除しておるわ。逃げれない、という思い込みが仇になったな」

「正々堂々闘うという言葉は……あれは嘘ですか」

「ふん。お主のような猛者を相手に、正々堂々と戦っておれるか」


 ゴルバストは胸に刺さった剣を抜いて、右手を空に掲げた。


「残りの兵数は、およそ三百万強。まあ、計略成功の確率は八割と言ったとこか」

「……計略? いったい何を……」

「お主の知るべきことではない」


 無愛想にそう言って、ゴルバストは深く斬りつけた。

 血飛沫が上がり、糸が切れたように体が地に倒れる。それはつまり、セバスが敗北したことを示しており、同時に魔界のささやかな勝率が大きく減ったことを暗示していた。

 ゴルバストはセバスの亡骸から目を背けて、兵に伝えた。 


「進軍を再開する! 立ち止まっている暇などないぞ!」


 規律に従い、素早く隊列を組んで、軍は再び歩みを開始した。


 ――のだが、それはすぐに阻まれることになる。


「――行かせない」


 極々小さな火球が、周囲に散らばった。かと思うと、それは大爆発を起こし、辺りを火の海にした。

 

「静まれい!!」


 突如起きた非常事態にパニックを起こしかけた兵を一喝し、ゴルバストは奇襲の正体を探った。

 ――そこか!

 魔導のエネルギー弾を、気配のある場所へ放つ。炎で迎え撃たれたエネルギー弾は、小規模な爆発を起こした。

 ゴルバストは煙に隠れている人影に鋭い声を掛けた。


「誰じゃ。さっきの翁ではないな」


 徐々に煙が晴れていく。まず目に入ったのは、血のような赤髪、そして、龍人族ドラゴニュートの翼。

 人影は口を開いた。


「俺は、そのじいさんの弟子だ」


 煙が完全になくなり、ダウトの姿が現れた。


「元龍人族族長ダウト。あんたの首、取らせてもらう」 

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