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最弱の魔王候補  作者: 木魚
第一章 最弱の行く道
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頂点の対決

 魔王。呼んで字の如く、魔族を束ねる王を指す言葉である。

 当然ながら、魔王と言えど不死身ではない。頭が吹き飛べば死ぬし、病に襲われることもありうる。そのため、一代の魔王の就任期間は『百年』と定められている。

 百年間の任を終え、魔王と言う立場から解放された元魔王は、隠居したり、後任の魔王を手助けするなど、思い思いのやり方で残りの生を謳歌することになる。

 では、その魔王に慣れなかった魔王候補はどうなるのか。それはアレンも存じている通り『死』である。しかし、これには一つだけ抜け道がある。次期魔王になるであろうものと親しくなり、自分が負けても殺さないように頼み込む。そうすることで、あわよくば新たな『五画魔将』となり、権力者になることも可能となる。

 そしてこのことを、魔王候補たちはこう呼んでいる。


 『同盟』と。


 現場は戻り、決別の森のとある岩場。アレンは少女の言葉をよく吟味して、慎重に言葉を口にした。


「何で俺みたいな最弱となんだ。他にもいるだろうに」

「……三十七」


 少女が、唐突にそう呟いた。アレンが眉をひそめると、続けた。


「今現在、生存が確認されている魔王候補の人数や。とある一人の候補者によって、そこまで減らされとる。あんさん、もう分かるやろ?」

「……ハーデスか。けど、まだだいぶ残ってるな。てっきり、目ぼしいの以外は全部狩られてんのかと思ったけど」

「ちゃうちゃうわ。あくまで生きとるのがっちゅう話や。大怪我して動けんの抜いたら、その半分おるかどうかや」


 しかし、だとしてもだ。ハーデスが、あの戦闘狂がそんなに多く人数を残しているだろうか。それとも、それだけハーデスのお眼鏡にかかった強者がいるという事か。

 考え込んだアレンを見て、少女が話題を戻した。


「話を戻すけどな、その中で十分に動けて、思想が正常そうで、尚且つ年齢が近いのがアレンはんしかおらんのや。せやから、『同盟』組んでくれへん? うちの力じゃ、どうも生き残る自信がないさかい」


 少女が手を合わせてお願いすると、アレンはばつの悪そうな顔をした。同年代の女子からそう言われると、断りづらい。


「とりあえず、名前と言えるだけでいいから情報を教えてくれ。その上で決める」

「ホンマか? じゃあまず、ウチの名前からやな。ウチはミナミ。ファミリーネームは、内緒や」

「……何で内緒なんだ」

「そこは察し。それと、ランクは二十二位。ハーデスが最後に襲ったんが二十五やったらしいから、ギリギリやったな」


 アレンはそれに、アカツキ出身という情報を胸の内で付け加えた。ミナミの使っている言葉のニュアンスは、多様な方言の入り混じっているアカツキの中の一つだからだ。

 ふと、アレンは疑問を口にした。


「ミナミ、ハーデスは一体いつから襲撃を止めたか分かるか?」

「うーん。噂が途絶えたのが九か月ぐらい前やから……丁度一年前あたりやと思うけど。まあ、どっちにしても助かったわ。そっからはあの爺さんにかくまってもろうてたから、よう分からんな」

「一年前。俺がポーカーやってた頃か。何かあったのか?」


 ――いや、考えても情報が少なすぎるか。

 さすがに情報量ゼロからの状態では分かりっこない。そう諦めかけた時だった。ミナミがふいに口を開いた。


「……教えたろか」

「え?」

「知っとるで。一年前、何があったんか。教えてやってもええで」

「……本当か? だったら教えろ。そうすりゃあ、同盟を組んでやる」


 ミナミが僅かに笑みを浮かべた。


「ハーデスはとある候補者との戦いに敗れ、大怪我を追ってしもうたんや。そして、その候補者とは――」


 ミナミがゆっくりと、その名前を告げた。


「――ランク二位、ノース。今回の候補者でもトップレベルの天才にして、ウチの腹違いの兄貴や」


 












 魔界のとある秘境。龍人族ドラゴニュートの住む集落の家の一室で、ハーデスは横たわっている体を起こした。未だに、あのときの傷が痛むが、それでもかなりマシになった。

 ところどころにまかれた包帯を見て、ハーデスは忌々しい記憶を呼び覚ましていた。



 あれは一年前、下から順に殺していくのが億劫になってきた頃だった。気分転換をしようと、一気に順位を飛ばして二位のノースと戦いに行ったのだ。

 噂によれば、ノースが拠点としている地は、あまり手の付けられていなかった――所謂スラム街を再興させた場所で、かつては貧困の象徴だったその場所は今やノースの手腕によってかなり裕福な街に変わっていた。

 ハーデスが戦闘の天才だとすれば、ノースはその逆を行く分野の天才、と言ったところだろう。

 無論、魔王になるにあたって、何者をも意に介さない強さというのは最低条件であるが、ノースのような力も必要になることは少なからずあるであろう。


「ま、そんなのどうでもいいけどね。今は、彼と戦うのが最優先だ」


 ハーデスは堂々と街へ足を踏み入れた。髪は青に染めて、瞳もカラーコンタクトを入れているので魔王候補だとばれることはない。

 すかさず目に飛び込んできたのは、山の天辺にそびえる大きな城だった。しかし、城とは言ってもハーデスが見慣れているような、魔王城とはまた違ったタイプのものだ。

 ハーデスは自らの知識からとある国についてのことを引っ張り出した。 

 その国の名はアカツキ。人間界のほとんどを占める五大国のどれにも属さない唯一の国だ。五大国との接触が少ないためか、独特の文化を持っておりそれを活かした芸術性は、魔族にも一目置いているものがいる程である。視界を占領するあの城は、そういったアカツキ独特のセンスからつくられた物だ。

 ――ノース君の趣味かな? いや、出身なのかもしれない。

 そんなことを思いながら、ハーデスは城の門へ向かった。

 予想はしていたが、門の前には屈強そうな男が二人構えており、易々とは入れてくれそうになかった。


「……面倒くさいなあ。殺しちゃおっか」


 ハーデスは人差し指を門番に向けると、呟いた。


「闇よ、弾丸となり貫け。《ダークライフル》」


 直後、人差し指から放たれた闇魔力の銃弾は男の鎧と心臓を貫いた。何が起きたのかすら分からないうちに、その場に倒れた男に声を掛けるもう一人の男の首を素早く一回転させて、ハーデスは外郭へ忍び込んだ。

 足音を殺し、木々に身をひそめながら本丸を目指していたハーデスだが、その行動がばれるのにそう時間はかからなかった。

 突如現れた数十人の戦士たちに、ハーデスはぐるりと囲まれてしまった。まさに、蟻の子一匹逃さないと言った構えである。

 ハーデスは動じず、むしろ喜びを含ませた声で言った。


「悪いけど、君たちに用はない。この城の城主を呼んでもらえないかな?」


 戦士たちの回答は、当然NOだった。連携の取れた動きでハーデスにアカツキ独自の武器――刀で斬りかかる。それを躱して、あえて魔法は使わず肉弾戦のみで応戦する。

 右アッパーで顎をかち割り、続けざまに蹴りで頭を体から引き千切る。手段を変え、あらゆる方法で殺戮を繰り返すうちに、ハーデスはあることに気が付いた。

 血の匂いが、全くしない。

 これだけ派手にやれば、辺りは血まみれで、死臭も合わせて、不快感極まりない臭いになるはずだ。しかし、それがない。それどころか、よく見てみれば――


「一人も、死んでない?」


 言って、違うと気が付いた。死んでいないのではない。減っていないだけだ。どういう事かと言うと、それはつまり、相当すスプラッタな状態で闘い続けているという事だ。

 首が無い者も、腕が無い者も、下半身と上半身が無い者も、内臓が飛び出ているような者も、全てが闘っているのだ。


「自分でやっといてなんだけど、気持ち悪いな。恐らくこいつ等は……」


 ハーデスは面倒だと言わんばかりに闇魔法ダークレインを発動。右手から放たれた黒い針をテキトーに戦士たちへ刺し、爆散させた。

 それでも、まだ立ち向かう者がいる。


「間違いない。既に死んでるんだ」


 ハーデスはため息を吐くと、自らの魔王としての力を発動させた。


「……ボクを半径として五十メートル以内の死者は、直ぐに腐り養分となり土に還る」


 パチン、と指を鳴らした途端に、戦士たちが塵となった。

 《学者泣ルールメイカーかせ》。ハーデスの持つ、魔王の血が呼び覚ました特殊能力である。その効果は、自らの発言が五分間だけ法則として成り立つ、という物。例えば、ハーデスが「石を冷やすと柔らかくなる」と言えば五分間だけその通りになる。

 例え、どれだけ無茶なものだとしてもだ。


「さて、小手調べはもう終わりかい? ノース君」


 ハーデスはノースがいるであろう天守閣へ急いだ。

 もはや見つかるのもお構いなしで、見つかったら殺戮を繰り返すと言う、立場が逆転になるようなことをしながら城を上っていく。

 そして、ある一つの部屋へ入ろうとした時だった。背後から、声が掛かってきた。


「あまり、調子に乗るなよ。ガキが」

「やあ、やっと姿を現してくれたね。君がノース君だね」


 ハーデスは長身のノースを見上げた。フレームの細い眼鏡をかけているが、そこから覗く眼光には、確固たる王の器が垣間見える。

 ――久しぶりに、同格の相手と闘えそうだ。

 ハーデスは怪しい笑みを浮かべ、話した。


「早速、闘おうよ。君みたいな強者、滅多にいないからね。とても嬉しいよ」

「……俺の兵に手を出したんだ。無事に帰れると思うな」

「その言葉が、強がりでないことを祈る……」


 よ、を言い掛けたがそれは叶わなかった。ハーデスが自らの手で自らを傷つけていたからだ。

 勝手に動く右手が、常備しているナイフを取り出したかとそのナイフで至る所を刺し始めたのだ。


「な……これ、は。なるほど。他人を操る能力……ってところかい?」

「正確には、万物を操作する、だな。操る生物の生死は関係ない。加えて、死者を操る場合は生前のスペックを再現することが出来る」

「ご丁寧に、どうも。……さすがにこれ以上はキツイし、反撃させてもらうよ。ボクが自分で着けた傷は、回復する」


 瞬間、ハーデスの言葉により新たな法則が誕生し、傷が見る見るうちに塞がった。間を置かず、詠唱破棄で中級闇魔法、《グラビティ》を発動。ノースがいる場所へ強力な重力場を発生させた。

 後ろへ飛び退き避けたノースは、感心したように発した。


「なかなかやるな。面白い。少しだけ、遊んでやってもいいぞ」

「遊ぶ? っは。随分と舐めてくれるねえ」


 しかし、その直後。ハーデスは目の前に現れた者を見て、驚きのあまり目を見開いた。


「……何の冗談だい。それは、まさか」

「死体を回収するのも楽じゃなかったぞ。さあ、舞踏会の時間だ」

「まるで死者の愚弄だ。何処でそれを――前任の『五画魔将』の死体を手に入れたのさ」

 

 ハーデスの前に並ぶ五人の人影。それは紛れもなく、策略の魔王ラスクを支えた五画魔将たちであった。

 ノースが嫌な笑みを浮かべ、呟いた。


「さあ、踊れよ」 

大阪弁難しい……。間違いがあるかもしれませんので、その時はビシバシ言っちゃってください。

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