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最弱の魔王候補  作者: 木魚
第一章 最弱の行く道
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血の契約

「……それで?」

 

 召喚魔法の成功率。ゼロという数字を聞いて尚、アレンはそう返した。強い意志を持った目でセバスを見ながら言う。


「どの道、立ち止まってる暇なんてないんだ。少しでも強くなる可能性があるってんなら……やるしかねえだろ」

「十中八九死にますよ。それでもいいんですか」


 アレンはその言葉を鼻で笑い、拳を前へ突き出した。


「十中八九っつうことは、百パーセントじゃない。なら十分だ。前にも言ったろ? 今までが無理でも、これからの可能性は無限だって。やり方、教えてくんねえか」

「……どうなっても、知りませんよ。良いですね」


 アレンは無言の肯定で応えた。セバスは溜息を一つ吐き、懐からサバイバルナイフを取りだした。マジックカードと同じように、アレンに手渡す。毎日毎日、欠かさず砥がれているのであろう。それは、鈍く光っている。

 

「生命を召喚、契約させる際に必要な媒体、それは召喚者の血であります。そして、血液で描かれた魔法陣に一定以上の魔力を流せば、血の量に比例して強いものが現れます」

「それで、そのナイフを使うって訳か。魔法陣はどんなのを描くんだ」

「心に思い描くままを描く、と言われてますが定かでは……」

「分かった。じゃあ、早速やるか」


 アレンはそういうと、自らの脇腹を刺した。セバスですら呆然とするほど、あっさり、何の躊躇いもなかった。血が溢れ出るが、構わず反対の脇腹も刺す。それでも終わらず、今度は両足を切り裂く。

 続いて、左手を斬ろうとしたとこで、ようやくセバスが止めた。


「貴方は……馬鹿ですか!?」


 滅多に見ることのないセバスの説教を聞き流しながら、アレンは魔法陣を描き始める。何故かはわからないが、頭に浮かんでくるのだ。

 黙々と描き続けること三十秒程度で、複雑な形をした魔法陣は完成した。


「あとは、魔力を流すだけだな……」

「アレン様! 聞いているのですか。召喚云々以前に、出血多量で死にますよ。それに魔力の使い方だって分からないでしょ……」

「さっきので何となく覚えたよ」

「……え?」


 目を丸くするセバスを尻目に、アレンは右手を顔の前へ持っていく。掌を見えるようにし、そこへなんとなく感じ取れる魔力を集めていく。

 貧血で視界が眩むが、無視してその手を魔法陣へ叩きつける。


「さあ……何が出てくる」


 アレンの魔力に反応し、魔法陣が光り輝く。白い光が視界を埋め尽くし、思わず目を塞ぐ。

 アレンの力により導かれた命。やがて、その姿が露わになる。


「……これが」

「アレン様の召喚した者ですか」


 体付きは、羽が生えていることを除けば人型に近い。身長は百八十ほど。長く、少しウェーブを持っている金髪。大きくつぶらな瞳は、無邪気さを醸し出し、それに反し小さく薄い笑みを創りだしている唇は妖艶さを醸し出している。極めつけは、モデル顔負けのプロポーション。

 世の男たちを等しく虜にするであろう、彼女は一歩踏み出すと口を開いた。


「あらあら。そっちのお爺様じゃなくて、坊やみたいなかわいい子が、あたしを呼んだの? その才能、素晴らしいとしか言えないわね。あ、いけない。自己紹介が遅れたわね。あたしは生命の化身『メリウス』。メリーさんって呼んでね」

「……驚いたな。メリーさんみたいなきれいな人が出てくるなんてな。俺の名はアレンだ。……さて、社交辞令はこんなもんでいいだろ。本題に入ろうか」


 アレンも一歩踏み出した。身長差のせいで自然と見上げる形になるが、臆せず言う。


「俺に従え」

「いきなり上から目線ねえ。生意気ボーイは嫌いじゃないけど、もう少し言い方ってものが……」

「さっさと答えろよ。俺に従うかどうか……今すぐ決めろ」

「……そうね。少し、礼儀ってものを教えてあげるわ」


 メリウスは右手をアレン目掛け、繰り出した。アレンはしゃがんで躱し、距離を取る。


「交渉決裂だな。……セバス、邪魔はするなよ。こいつは俺が、力づくで従わせる」

「やれると思う? あたしは闘いが苦手な方だけど、それでも人間の子供に負けるほどではないわよ」

「……そう心配してくれなくても大丈夫だぜ。だって……」


 アレンは走り出した。その刹那、トランスを行い髪と瞳を黒く変色させる。メリウスと紙一重の場所まで近づき、蹴りを一発。


「俺は……最強の魔王になる男だからな!」

「その髪と眼……なるほど、君は魔王の血を引いているのね。それなら、その才能も不思議ではないわ。でも、その傷じゃあ勝てる勝負も勝てないでしょ」


 脇腹の傷をちらりと見る。明らかに重症だ。アレンが魔王の血を引いていなかったら、とっくに気絶していることだろう。

 もっとも、それはアレン自身が一番わかっている。あと三分ほどが限界だろう。


「その時が来る前に、アンタを服従させる! 《万物一体化ユニゾン》」


 その言葉と同時に、右手に握っているナイフが同化する。半年前、ダウトとの戦闘で覚醒した力。だが、アレンはこの力を全くと言って良いほど使っていなかった。この力を使うのは、どうしても勝ちを譲れない戦闘の時のみ。そう心に決めていたからだ。

 そして、今がちょうどその時。志を成すためには、彼女のような大きな力は必ず必要になる。だからこそ、己に眠る強力な力を呼び覚ましてやる。


「行くぜ!」


 アレンは切れ味の落ちない刃と化した右手を構え、再び駆けた。メリウスを射程圏内へ入れ一閃。純白の白い肌に切り傷が出来る。が、それは瞬く間に塞がってしまう。


「回復能力か……程度にもよるが、かなり厄介だな」

「それはこっちのセリフよ。全くふざけた力ね。鉄という物質ではなく、ナイフという物体の特性を反映したわけだし、能力としては対象物の持つ効果、特製を自らの体に宿すってところかしら?」

「大方あってるが、一つ付け足しとくと、反映できる力は物質でも物体でもどっちでもOK。切り替えが可能だ」


 アレンは拳を作り、メリウスを殴った。避けることなく直撃。メリウスは後ろへ吹っ飛んだ。


「こんな風に、今のは鉄の、硬くて重いという物質としての特性を自らに宿した。立ちな。どうせまたすぐ回復するんだろう」

「まあね~」


 メリウスはひょっこり起き上がった。傷は既に跡形もなく消え去っている。あの回復力じゃあ、下手すれば体ごと真っ二つにしてもくっ付くかもしれない。そろそろ限界が近づいているアレンにとっては、この究極の持久戦タイプはもっとも厄介な相手だ。

 アレンは考えた。このトカゲのような美人を相手に、どうすれば勝てるのかを。正攻法でせめても埒が明かない。普通にやってては、先にこちらが倒れるのは火を見るより明らか。ならば、相手の不意を付くやり方。邪道の戦法をとるしかない。

 

「ねえアレン君。そろそろ限界が近いんじゃないの? 今謝るんなら、あなたの素晴らしい才能に免じて許してあげてもいいわよ」

「……嫌だね。今ちょうどあんたを倒す方法を考え付いたところなんだから」


 アレンはユニゾンを解いた。ナイフが地に落ちる。それに見向きもせず、アレンは懐からあるものを取り出した。


「……バネ?」

「ああ。その通り、バネだ」

「何でそんなもの持ってるのかしら?」

「もしもの時のために、常日頃持ち歩いてる秘密の七道具だ。俺の能力があれば、このバネだって立派な武器になる」


 バネを地面へ落とした。それを踏んづけ、「ユニゾン」と小さくつぶやく。瞬間、アレンの右足にバネの力が宿る。右足で数回跳ね、感触を確かめる。

 十分に慣れたところで、右足を地面に押し付ける。限界まで押し込み、一気に解き放った。バネと化した右足は縮めた状態から解き放たれたことで、常軌を逸したスピードを出す。

 音速にも近い速さで近づいたアレンは、メリウスの首根っこを掴んだ。


「……な」

「終わりだ。……《万物一体化ユニゾン》」

「え!?」


 メリウスがアレンの右手に吸い込まれ、同化していく。生物との同化。これこそがユニゾンの最強の力であり、アレンが最も嫌う手段。

 メリウスを取り込んだアレンの眼は、銀色へと変色していた。


「もう一度言うぜ……俺に従え」 

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