好きな子
俺の好きな子のタイプは小さくて、可愛くて、守ってあげたくて、髪が長くてふわふわしてる子。
「ふーん、喜一って意外にメルヘンだよねー」
「メルヘンってなんだよ。どっちかって言ったらロマンチック、だろ」
どっちでも良いけどねー、とかほざいてやがるコイツは紀井 彰太。小中高とずっと同じで、親友だ。コイツは頭が良いのに何故か俺と同じバカ校に入っている。
「彰太はどうなんだよ。俺だけ言うとか不公平じゃねーか」
「・・・・・・」
「聞いてんのかよ、おい」
「・・・・・・」
「・・・彰太?」
下を向いたまま何も言わない彰太を不審に思っていると、
「・・・・・優しい」
「ん?」
「・・・優しくて、友達思いで、でもバカで、皆から見たら普通だけど、俺から見たら可愛い子」
「めっちゃ具体的だな。・・・もしかして、彰太好きな奴いるのか?」
だから、俺と一緒にバカ校入ったんだな。納得納得。
「なんだよー、ずっと黙ってたのかよー水臭いぜー。誰だよ?彰太が好きそうな奴って…同じクラスだった富田さん?」
「・・・違うー」
「えー、他って男子ばっかじゃん。後って言ったら…」
「喜一」
「そうそう。俺、って…え?」
「俺、喜一が好きなの。付き合って」
「え、・・・・・・は?」
ちょっと待て。頭が今の状況に追い付いてない。彰太は俺の事が…好き?
心臓が、ドクンって聞こえた。いやいや、何でドクンなんだよ、可笑しいだろ。俺は乙女かっつーの。
「イヤ?」
「・・・・イヤじゃないけど」
てか、何で俺なんだ?もっと可愛い子はいっぱいいるのに、何故その中から、ましてや男の俺なんだ?
俺の考えていることが分かったのか、彰太は真剣な表情で俺を見据えた。何だろう、俺まで緊張してきた。
「最初は体がタイプだったんだ」
は?
「でも、色んな喜一を見ていくうちに、喜一の全てが好きになった」
「・・・・最初は体目当てだったのか?」
「うんっ!!」
口をひきつりながら彰太に聞くと、輝かんばかりの笑顔で固定しやがった。ぶん殴ってやろうか、コノヤロウ。
「俺、今日でお前と友達止めるわ」
「えっ、恋人になってくれるのっ!?」
「んな訳ねーだろ、お目出度い頭してんな」
今すぐに過去に戻りたい、そして彰太と縁を切りたい。
「喜一、」
突然、彰太が俺の手を握ってきた。
「何だよ」
こいつは自身満々の、ムカつくくらい綺麗な笑顔で、俺に言った。
「喜一が俺の事見捨てる訳ないだろ、バカだなあ」
「・・・・・バカは、お前だろ」
「あは、顔、真っ赤だよ?何?照れてんの?かーわーいーいー」
「しね」
「酷っ」
俺の好きな子のタイプは小さくて、可愛くて、守ってあげたくて、髪が長くてふわふわしてる子、だった筈なんだけどなあ。
「なーにー?じろじろ見て、俺の事好きになった?」
「・・・ああ、好きになったよ」
「えー、・・・・え?喜一、それマジで?」
「悪いかよ、」
「いや、むしろめっちゃ嬉しい。今なら喜一のために死ねる気がする」
「・・・・・・・」
何だかんだ言ってるけど、俺はこいつが好きなんだろう。・・・多分な。
「喜一ー」
「んだよ」
「大好き」
「・・・そうかよ」
照れてるー、とか言いながらも嬉しそうな彰太の横顔に少し、頬が緩む。
俺の好きな子のタイプは俺よりデカくて、頭が良くて、大部ウザくて、髪の短い、サイテーな奴だったようです。
体目当てから始まる友情ってあるんだろうか…。
彰太くんはきっと奥さん(喜一くん)に尻に敷かれるんだと思います^^(笑)
人物紹介
喜一
フツメン、ちょっぴり毒舌。
彰太
体目当てで喜一に近付いた変態。尻フェチ。