*第3章*――天門の扉
「いい?君はどうして死んだか、
思い出さなきゃいけないんだよ。
決まりごとはいろいろあって、それを破ればアウトだから。
決まりごとは全部で5個。
絶対に破らないこと。」
さっきあんなことがあったと言うのに、
セリスはもう忘れたとでも言うように淡々と喋る。
セレスが言うに、決まりごとは、
・途中で自決しない。
・地上界のものに危害を加えない。
・もちろん、話しかけるのもだめである。
・地上界のものに触れてはならない。
・もちろん動かすのもだめ。
この5個。
「って、ちょっと待って。俺ここに来る前、
皆の肩にさわっちゃったんどけど・・。」
「それなら大丈夫。言い忘れてたけど、
親族は気づかないから、触ったに入らないから。」
「ふうん・・・。」
なんだかんだ言って、思ってたより少ない。
でもかなり、守るのに難しいものばかりだ。
俺・・守れるかな・・・?
奈々子や・・母さん父さんに会って、
声をかけずにいられるかな?
・・・・できねぇよ。
「セレス・・・。」
「はい?」
「俺・・それ守れねぇかも。」
「どれをですか?」
「声かけちゃダメって奴。」
見るからに頼りない顔で俺は言う。
「・・・・・・天使になりたいの?」
「なあ、具体的に天使はどうして辛いのか、教えてくれないか?」
「そんなこと聞いてなにがいいの?」
セレスの表情が凍りつく。
「いや、心構えがほしいというか。
どれだけ辛いかわかったら、
なりたくないって理由で頑張れる気がして。」
「聞かないほうがいい。」
「何で?」
「いいからさっさと行けよ!」
セレスとは思えない口調で、
セレスは俺に罵声をあびせた。
「あ・・行ってきなよ。」
気まずそうにセレスが直す。
口調は柔らかくなったが、確かにそれは強制だ。
「わり、じゃね。」
俺は現世へと続くという、天門の扉を大きく開け放った。