*第1章*――見ず知らずの少年
何かが頬につたうのが分かった。
鏡を見るとそれは確かに俺の涙。
もうはっきりとは感じられないけれど、
かすかにそれは暖かい。
「泣いているの??」
いきなり後ろから声が聞こえる。
「俺が・・見えるのか??」
そう問いかけると後ろの声が嬉しそうに喋る。
「うん。だって僕天使だもん。」
僕・・というには少年なんだろう。
「天使か・・・・・・って、天使!?」
俺はバッと振り向く。
「うん。君を迎えに来たんだよ。」
少年が告げる。
少年はきっと中学1年生くらいで、柔らかな長髪。
金色で、とてもさらさらだ。
そして目は青く、とても細身だった。
――――こうゆう奴の相手はしないほうがいい――――
本能的にそう感じた。
それに俺は1人になりたいんだ。
そう思って少年に背を向けると、
少年はひややかな声で言った。
「にげるの??」
「にげてなんか・・・。」
ない!そういおうと思った。
でも、そうかもしれないと思って、言えなかった。
「死ぬのが怖いの??ってもう死んでるけど。」
背中の羽をあらわにした少年が言う。
「天使って者が、信じられないだけだ。」
「天使はいるよ。現に、ここに。
それに死んだ人間がここにいるくらいなんだから、
天使くらいいるもんでしょ。」
それもそうか。
でもなんか、こいつの相手はしたくない。
疲れる。
「行きたくないよ。」
「だめです。」
即答。
「それに俺の身元、お前言えないだろ。
そんな奴にはついていけないな。見ず知らずの人だから。」
「山川智樹。15歳。山中県、山中町。
二才区に住む中学3年生。
成績不優秀。運動はバスケットボールのみ・・・。」
こいつ、俺の思い出したくないことまで言いやがる。
「僕はアズ・セリス。ピー年前に死んだ天使。
ほら、もうこれで、見ず知らずの人じゃないでしょ??。」
「・・・じゃあ、俺はどうして死んだんだ??」
「それは言えません。」
「なんでだ?」
「それを思い出すことが君の課題だから。」
「このままここにいると悪魔が迎えに来ちゃうよ、あの世に。
天国と地獄・・どっちがいい?」
「・・・・・・・天国。」
「決まりだね!!」
そういうと天使はニコッと笑った。