ネギの恩返し
歩道を歩いていたら、長ネギが落ちていた。
袋に入っているからはっきりとはわからないが、たぶん3本入り。
今は8月の初め、日差しもきつい酷暑の昼過ぎ。いつから落ちてたのかわからないが、このままでは確実に食べられなくなるだろう。
大事な植物の命、刈り取ったからにはちゃんと食べてあげたい。でも勝手に持ってったら拾得物横領の気がするし、警察に届けるのも迷惑になる気がする。もしかしたら、落とした人が取りに戻るかもしれないし、このままにしておくのが一番いいような気もする。
でも、せめて直射日光は避けてあげたい、と思って、近くの木陰に移動させた。すると
ーありがとう
と声がした。
へ? と思って周りを見回すが、近くにはネギしかない。
ー私はネギの妖精。落として忘れられたネギを看取るためにここにいました
は?
ー2時間ここにいましたが、ネギを気遣ってくれたのはあなただけ
ええ?
ーお礼にあなたにはネギの祝福を与えましょう
パアアァ、と私の周りに光の粒が舞った。キラキラキラ。
「はあ? え? ちょっと! ネギの祝福ってなに? 看取り? 看取ってたの? 妖精が? なにそれ?」
私は必死でネギに呼びかけたが、もうネギはうんともすんとも言わなかった。
でも心なしか安らかに横たわってる気がする。
その後、私は、ちょっとだけネギに恵まれるようになった。
うどんを頼んだ時にトッピングされる小口ネギがちょっと多かったり、焼き鳥のネギマを頼んだ時のネギが大きめだったり、牛丼のタマネギが多めだったりした。友達と食べた時に比べた感じでは、1.5倍くらい。微妙すぎてあんまりピンと来ないが、たぶんこれが祝福なのだろう。
ネギ好きだから嬉しいけど…。たいしたことしてないんだから、これだけでもありがたいんだけど…。
もし今度、肉が落ちてたら、できる限り丁重に扱おうと心に誓う私であった。




