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殺し方で職業が決まる世界で、俺たちは旅をする  作者: カントゥーヤ


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6/21

狩場

油断していた。

 


都市部であんなに濃い霧が出るはずがない。

 しかも、あんなふうに唐突に。

 気づいたときには遅かった。

 霧を抜けた先は行き止まり。

 ――袋のネズミ。

 高架下。

 壊れた道路。

 フェンス。

 逃げ道がないことだけは、一目で分かった。





狩場は管理されていた。

 フェンスで囲われ、逃げ道は意図的に潰されている。

 足場は悪く、遮蔽物は少ない。

 遠距離と近接、どちらにも中途半端。



「……闘技場だな」

 健人が吐き捨てる。

「人間用の、ね」

 俺はライフルを構えたまま、周囲を見る。

 フェンスの外には、武器を持った男たち。

 数は十数人。得物から見るに、多くは戦士か狩人だろう。



「歓迎しよう」

 中央に立つ男が両手を広げた。

「ここは狩場だ。選ばれた獲物だけが入れる」

「趣味が悪い」

 俺が言うと、男は笑った。

「そうでもない。世界が終わってからは効率ってのが大事になってな」

 


男の背後。

 瓦礫の影が動いた。

 獣の見た目をしたモンスター。大型。筋肉質。人型をしていないモンスターには厄介なやつが多い。

血に飢えた目だ。すでに何度も人を殺しているのだろう。

「なるほど」

 真白が静かに言う。

「このモンスターを、私たちにぶつけるんだ」

「その通り」

 男は頷く。

「お前ら、見たところ悪くない。戦える。だから――価値がある」

「……何の価値だ」

 健人が一歩前に出る。

「データと、素材だ」

 男は即答した。



「俺たちが勝てば?」

「そのモンスターは不適格だったってことになる」

 男は肩をすくめた。

「ここではそういう扱いだ。弱いモンスターは、残す意味がない」

「じゃあ」

 真白の声が冷たくなる。

「私たちが負けたら?」

 男は、少しだけ楽しそうに笑った。

「最大で、四体だな」

 背筋が冷える。

「元からいるこいつが一体。それから――お前ら三人」

「……人は、モンスターに殺されるとモンスターになる」

 俺が呟くと、男は満足そうに頷いた。

「そうだ。しかも、強い人間ほどいいモンスターになる」

「つまり」

 健人が歯を食いしばる。

「俺たちは餌でもあり、試験官でもあるってことかよ」

「合理的だろ?」

 男は言った。

「勝てば補充。負ければ選別。どっちでも無駄がない」

 男の合図と同時にフェンスが開く。

 モンスターが走った。




 戦闘は苛烈だった。

 俺は距離を取り、狙撃。

 健人は正面から引きつける。

 真白の魔法が足を凍らせる。

 連携は、旅の中で磨かれていた。

 


だが、モンスターも強い。

 爪が健人の腕を裂き、咆哮が空気を震わせる。

少しでも均衡が崩れればたちまち喰われるだろう。



「――今だ!」

 俺の弾丸が、目を撃ち抜く。

 真白の氷が動きを止める。

 健人の一撃が頭を砕き、モンスターは崩れ落ちた。

 沈黙。全員息も絶え絶えだ。今から周りを囲んでいる奴らを殺すのは無理かもしれない。



「……残念だったな」

 俺はフェンスの外を睨みつけた。


「あぁ、残念。不適格だ」

 男たちの空気が、一瞬変わる。

 失望。

 そして――苛立ち。

「だが」

 中央の男がゆっくりと言う。

「お前らのことは、よく分かった」

「何がだ」

「強い」

 


ここは狩場だ。

 だが、狩られているのはモンスターだけじゃない。

 人間もだ。

「次は」

 男は言った。

「もっといい獲物を用意しよう。あるいは――」

 視線が俺たちに向く。

「お前らが、育つのを待つか」





男たちが去っても、俺はしばらくの間ライフルを下ろさなかった。

 この世界では生き残ること自体が、

 次の戦いへの参加資格なのだから。

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