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殺し方で職業が決まる世界で、俺たちは旅をする  作者: カントゥーヤ


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4/21

歓声の都市

遠くからでもその街は分かった。

 夜なのに明るい。

 ネオンが点き、音楽が鳴り、人の声が重なっている。



「……生きてるな」

 健人がぽつりと言った。

 街の入口には巨大なゲートがあり、電光掲示板が回っていた。



 ――本日のメインマッチ 19:00開始

 ――新人ハンター初陣! 勝率予想 62%

「……マッチ?」

 俺が呟くと、真白が眉をひそめた。

「嫌な予感しかしない」

 




 中に入ると、そこは完全に“都市”だった。

 屋台が並び、酒が売られ、笑い声が飛び交う。

 壁の大型スクリーンには、アリーナの映像が映っていた。

 中央には円形の巨大な建造物。

 闘技場だ。



「いらっしゃい! 観戦? 参加?」

 声をかけてきたのは派手な服の男だった。

「……観戦かな」

 そう答えると男は笑顔で頷く。

「いいね! 今日はいいカード揃ってるよ」 「魔法使い対大型種! あれは盛り上がる」

 軽い。

 あまりにも軽い。

 


俺たちは観客席に案内された。

 周囲は家族連れも、恋人もいる。

 子どもがポップコーンを食べている。

 




 試合は派手だった。

 火花が散り、魔法が炸裂し、モンスターが吠える。

 観客は歓声を上げ、賭けが動く。

「倒せ!」 「いけるぞ!」 「噛まれちまえ!」

 命のやり取りが演出になっていた。



「……これ」

 健人が歯を食いしばる。

「おかしいだろ」

 だが、この都市ではそれが日常だった。

 モンスターは管理され、出場者は登録制。

 死は「リスク」として契約に明記されている。

「ここでは」

 案内役の男が誇らしげに言う。

「モンスター討伐は、仕事であり、スポーツであり、エンタメなんです」

「モンスターは、人だった」

 真白が静かに言った。

 男は肩をすくめた。

「昔の話でしょ?」

 




 スタジアムの通路で、一人の少年に会った。

 まだ十代半ば。

 装備は新品の輝きを放ち、手が震えている。



「初陣?」

 俺が聞くと、少年は頷いた。

「はい……」 「勝てばスポンサーがつくって」

 彼は“狩人”だった。

「怖くないの?」

 真白が聞く。

「……怖いです」 「でも、家族を養うにはこれしかなくて」

 アナウンスが響く。

 ――次は新人ハンター、エントリー番号47番!

 少年は震えながら意気込んだ。

「行ってきます」

 


試合は惨憺たるものだった。

 力の差は歴然。

 少年は善戦したが、最後はモンスターの長い触手に足を取られた。

 観客は盛り上がる。

「まだいける!」 「逆転あるぞ!」

 俺は立ち上がっていた。

「……やめろ」

 健人も、真白も同じだった。

 だが、試合は止まらない。

 銃声。

 俺のじゃない。

 観客席にいたベテランとおぼしき男が、規定違反を承知で介入したのだ。

 モンスターを撃ち抜く。

 歓声とブーイング。

「ルール違反だ!」

 ベテランは連行され、少年は担架で運ばれた。

 生きているかどうかは分からない。

 




 街を出るとき、背後で花火が上がった。

「次の試合が始まるみたいだね」

 真白が言う。

「ああ」

 俺は答える。

「今日のメインイベントらしい」

 


命が、娯楽になる街。

「なあ」

 健人が言った。

「俺たちが戦うのも結局は同じか?」

「……違う」

 俺は言った。

「少なくとも拍手はいらない」

 


歓声は、街に残る。

 俺たちは歩く。

 静かな世界へ。

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