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殺し方で職業が決まる世界で、俺たちは旅をする  作者: カントゥーヤ


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14/21

空回りの道化師

  俺たちは大きな生存者コミュニティの噂を頼りに、かつて倉庫だったという廃工場の裏手を歩いていた。瓦礫に混じる雑草を踏みしめる。この辺りにはモンスターは多くないそうだが、警戒を怠ることは無い。



「……人の声がするな」

 俺の耳にかすかに聞こえた。喚くような男の声。風に混じっても明らかに人の声だ。



 声の方に進んでいくと曲がり角からおかしなものがみえた。電柱にしがみつく一人の奇妙な男。カラフルなデカい帽子に赤い鼻、そして真っ白な顔。モンスターに囲まれていて身動きが取れない様だ。



「何してんだ、あいつ」

 健人が不可解そうに呟く。

 俺はライフルを構えてモンスターに照準を合わせた。



 男は帽子を大きく揺らしながらカラフルなボールをモンスターに投げていた。どこから出てきているのか、さっぱり分からない程に大量のボールだ。

「ええい、俺に構うなあ!」

 その動きは少し空回りで、逆にモンスターを刺激してしまっていた。

「いろんな人がいるね」

 真白が眉を寄せる。

 どんなにふざけた奴でもこのまま放っておく訳にもいかない。真白の魔法でモンスターは凍りつき、俺のライフルで砕けた。





 道化師は電柱から転がり落ちるように着地し、手足を払いながらも笑顔を作る。

「ふ、ふぅ……助かった……志半ばで餌になるところだったよ」



 健人は呆れた表情で聞いた。

「あんたは一体何なんだ」

 男は白い頬を膨らませ答えた。

「俺は道化師だ。こんな職業になっちまったばっかりに苦労が耐えねえんだ。」

「道化師?そんな職業があったのか」

 俺は驚いた。旅の中で色々な職業を見聞きしたが、聞いたこともない。

「弱そう」

 真白が言うと、道化師の男はしょんぼりした様子で答えた。

「これでも仲間内では重宝されるんだぜ。モンスターは俺しか狙わねえからな」

 なるほど、確かに便利そうではある。

 だが単独行動に向いているとは思えない。



「俺らの拠点の近くの街に好きな子がいるんだ。彼女の家にある家族の写真を取ってきてやりたかった」

 彼は嬉しそうに写真を見せてきた。色褪せているが、きっと喜んでもらえるのだろう。



「もうこんな無理はするなよ」

 健人は短く言った。

 道化師は手を振って答える。

「分かってる」



 俺たちは道化師に聞いた街を目指し、進み出した。

 夕暮れが廃工場の瓦礫を赤く染める。

 願わくば、彼の命懸けの恋が成就しますように。

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