廃墟の守り手
俺たちはかつて都市だった廃墟の中を歩いていた。
建物は半壊し、瓦礫と雑草が道を塞ぐ。静寂の中に、風が砂を巻き上げる音だけが響く。
「ひでえもんだな」
健人が小声で言う。
その時、曲がり角の向こうから低く笑う声が聞こえた。
「そこのお前ら、止まりな」
茂みから二人の男が現れた。刃物を握っており、目つきは鋭く、笑みは歪んでいる。戦士か盗賊、それに類する職業だろう。不意打ちでも何でもすればいいのに、わざわざ声をかけてくるとは。
「こんな奴らばっかりだな」
俺はライフルを構え、真白も戦闘態勢に入る。
健人は大きくため息を吐いて、一瞬で距離を詰めた。
戦闘は短かった。真白が凍らせて動きを止め、健人の鉄パイプが二人を一瞬でダウンさせた。
俺がトドメを刺そうとしたその瞬間、瓦礫の向こうからか細い声がした。
「やめて……お願い……」
振り返ると老婆が立っていた。目には涙をため、手を震わせている。
「この子たちを殺さないで……」
どうやら訳ありの様だ。
2人に警戒し続けるように頼み、銃を下ろす。
呻いている男たちを立たせて話を聞こうとしたが、健人の一撃は相当響いているようで役に立たない。
女性は小さくうなずき、俺に向かって手招きした。
男たちは2人に任せ、ついて行くことにした。最悪の場合、俺の逃げ足が一番速い。
廃墟の奥に入ると、子供や老人たちの姿が見えた。
細い路地に並ぶ空き家の一角で、子供たちは小さな鍋の残りを分け合っている。
痩せた二人の若い女性が、壊れた建物の隙間で毛布を敷き、老人たちにわずかな食料を手渡していた。
「食べて。少しだけど」
女性は子供や老人にパンの欠片を渡す。
子供は手を伸ばし、ぎこちなくも笑顔を見せる。
老人の一人が杖をつきながら、静かにありがとうと頭を下げた。
しばらくして、二人が男たちを引きずってきた。この光景に唖然としている。
真白が呟く。
「……こうしてでも、守ろうとしているんだ」
俺は少し複雑な顔で返す。
「でも、強盗みたいなものだ。生きるためとはいえ……」
健人は目を閉じて考え込むような顔をしていた。
誰もがこの状況が理想ではないことを理解していたが、三人は自分たちの持つわずかな食料を分け与えた。
男たちは黙って深く頭を下げ、女性たちは小さく笑ったが、目の奥には深い疲労と諦めが光っている。
夕暮れが廃墟を赤く染め、影が長く伸びる。
三人は再び道を進む。振り返ると、手を振っている子供や頭を下げる老人たちが見えた。
彼らは罪悪感と、守らねばならぬ必死さに揺れていた。
俺たちの選択は救いになったのか、それとも単に無意味な時間稼ぎをしたのか分からないまま歩く。
「まあなんとかなるだろ。あいつらも俺らも」
健人はそう言ってそっぽを向いた。
遠くで廃墟が夕陽に溶け、道の先で風が鳴る。
三人は歩き続けた。
旅路は、まだ続く。




