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殺し方で職業が決まる世界で、俺たちは旅をする  作者: カントゥーヤ


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1/21

その日

 世界が終わった日を、俺は二度経験している。

 一度目は、ニュースの速報で知った。

 二度目は、俺自身の手で“それ”を殺したときだ。





 モンスターが湧いた、と人々は言った。

 最初は都心部の繁華街だったらしい。突然人が人でなくなり、牙と爪を生やして暴れ出した。警察が出動し、自衛隊が動き、テレビは「新種のウイルスか」「集団錯乱か」と専門家を呼んで好き勝手なことを言った。



 だが、説明はすぐに破綻した。

 感染経路がない。

 潜伏期間がない。

 原因がない。

 ただ分かったのは――モンスターを倒したことのない人間は、時間が経つとモンスターになる。そしてモンスターに殺された人間もまたモンスターとなる、という事実だけだった。

 


変化には個人差がある。数時間の者もいれば、数日、数週間、あるいは数ヶ月、保つ者もいる。だが、例外はいないとされている。

 そして、モンスターに殺された人間は、必ずモンスターになる。

 世界はゆっくりと、しかし確実に終わっていった。





 

  天井は崩れ、床には割れたガラスと乾いた血痕が散らばっている。よくある郊外のショッピングモールだった場所。エスカレーターの途中で、何かが引き裂かれた跡があった。

「……いるな」

 小さく呟いたのは、隣を歩く友人――健人だ。

 元高校生、今は“戦士”。手には鉄パイプを握っている。

「前方、十時方向。二体」

 そう言ってスコープを覗く俺は“狩人”。

 ショッピングモールの玩具売り場で拾ったエアライフルが今の相棒だ。

「了解。じゃあ私は後ろから」

 少し遅れて声を出したのは、真白。

 “魔法使い”。しかも炎以外――氷を操る、かなりのレアケースだ。

俺たちはまだこの世界に慣れていなかった。

慣れる、という言葉が正しいかは分からないが。

 


モンスターは人型をしていた。

 顔は溶けた蝋のように歪み、目が二つ以上ある。元は人間だった、という事実だけがやけに生々しい。

「行くぞ」

 健人が踏み込む。

 鉄パイプが唸りを上げ、モンスターの頭部を粉砕した。

 もう一体がこちらに気づき咆哮を上げる。

 間髪入れずに真白の氷が足元を凍らせた。

 転倒。

 視界に見慣れない感覚が流れ込んでくる。距離、風向き、重力。

 まるで世界が「ここを狙え」と教えてくれているようだった。



 俺は引き金を引いた。

 おもちゃの弾は化け物の胸部を簡単に貫通し、モンスターが倒れる。



「……何時になっても俺の力とは思えないな」

 思わず呟く。

「狩人の力、だな」

 健人が苦笑した。

 


モンスターを初めて倒した人間は、戦い方に応じた力を得る。

 それを職業だの、クラスだの、スキルだの、異能だの、好き勝手な名前で呼ぶ。

重要なのは名前じゃない。これで俺たちは今日を生き延びたという事実だ。 





 世界が終わった日から俺たちは旅を始めた。

 政府は機能していない。都市は危険で、地方も安全とは言えない。

 なら歩くしかない。安住の地を探して。



 「なあ、次はどこ行く?」

 コンビニ跡で休憩しながら健人が聞く。

「北。寒い方がいい。モンスターは動きが鈍る」

「合理的だな」

 真白が頷く。

 彼女はぼーっとしているようで、いつも冷静だった。

 魔法使いがレアだと知ったときも特別扱いを嫌がった。



 「私たち、どこまで行けると思う?」

 ふと真白が聞いた。

「さあ」

 俺はライフルを整備しながら答える。

「でも、行けるところまで行くしかないんじゃないかな」

 世界は終わった。

 けれど、終わった世界にも道は残っている。

 そして俺たちはまだ人間だ。

 少なくとも――今日までは。






 次の町まで、徒歩で二日。

 そこに何があるのかは分からない。

 それでも歩く。

 狩人と、戦士と、魔法使いの三人で。

 旅はまだ始まったばかりだ。

初投稿です。至らない点が沢山あると思いますが、指摘していただけるとありがたいです。

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