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一を聞いて十を知る粗忽者ー十吉その後ー

作者: ふじの白雪
掲載日:2025/11/08

※注意書き


最初にこっちを思い浮かんだんですが

…ブラックすぎなので取りやめてました。


まぁグロ表現はしてないですが…

人によっては不快かもしれないので

赤子ネタ入るし…

嫌な人は引き返してください



一を聞いて十を知る──などという人は、そうそうお目にかかれるものではございません。


ですが、この長屋の十吉(とうきち)ときたら、その真逆。


一を聞いたら十を早とちり、二を聞く前に三を語り出す、筋金入りの粗忽者(そこつもの)でして。


さて、この十吉、散々人に迷惑をかけたあげく、とうとう寿命が尽きまして。

で、閻魔様の前にズルズルと引きずり出された。


「十吉! お前の罪は、その粗忽による無秩序と迷惑の罪、まことに重い! 地獄行きじゃ!」


「へえっ!? 閻魔様、わたしァ、人を殺した覚えもござんせん!」


「お前だけじゃねぇ。人間というものは大概、何かしら殺生をしとる。

だから天国に行ける人間なんぞ、ほんの一握り。

まあ――その中間あたりに行く者ばかりよ」


……と、ここで十吉、大早とちり。

閻魔様の「その中間あたりに行く者ばかり」を聞いちゃあいない。


「なるほど! 殺生さえしなけりゃ天国まっしぐら! これは名案だ!」


……名案じゃねぇんだよ。


で、いざ地獄へ落ちても、この男、粗忽は死なず。


針の山を見るなり、「こりゃ出世の山だ!」と大張り切り。

「針が多いほど出世が早いってもんだ!」

生身で猛ダッシュ、全身ハリネズミ。

「イッテェ〜〜! だが極楽極楽ッ!」ってんだから、鬼も腰を抜かす。


次は釜茹で地獄。

「これは極上のふかし芋! 鬼さん、もっと火ぃ強めてくれ!」

湯の中で湯加減確かめながら鼻歌まじり。

地獄の釜が沸騰するより先に、鬼の堪忍袋が沸騰しました。


閻魔様のところへ駆け込んで、「あの男、地獄を長屋にしちまいやした!」


「じゃあ天国へ送れ!」


送ってみたら今度は――

静かなる天人の集いを「退屈しのぎの隠居長屋」と早とちり。

天女の羽衣を取り上げて、勝手に盆踊りを始める。

「極楽浄土音頭ィ〜〜!」なんて踊りだすもんだから、もう秩序が大混乱。


閻魔様、ついに堪忍袋の緒がぶち切れた。

「十吉! お前みたいな奴は、あの世にもいらん!」


と、帳簿に一の字を書きかけて思い直す。

こんな奴が一年で戻ってきてはたまらない


「一に白を足して百。……百年寿命をつけて現世へ送り返す!」


そうして地獄から百年保証つきで戻ってきた十吉。

で、また早とちり。


「殺生をすりゃ地獄行き。ならば! 人が殺生する前に、この世から送ってやりゃ皆天国行き!」

善意の顔で赤子を抱えて「極楽直行便だ!」


――怖ぇわ!


案の定、人殺しの罪でお縄。

刑場で首を落とされるその瞬間、満面の笑みでこう申した。

「これは首という世間体を捨てる儀式! わしは首なしでも出世できる!」


――できねぇよ。


どっこい、寿命があと百年あるもんだから死なない。

ゴトリと落ちた首を胴体が拾い上げ、

「これは出世祝いの縁起物!」って脇に抱え込み、ずるずると立ち上がる。


血だらけの足音を響かせながら、夜の町をトコトコ徘徊。

口からはゴボゴボと血を吹きながら、

「殺生を止めに行くぅ〜〜!」とやってくる。


その夜、赤子が泣けば――

「あ、十吉が来た!」と親が青ざめる。


ぬえの鳴く夜は恐ろしい。

赤子が泣く夜は、十吉が出る。


首を抱えてニタァ〜と笑い、こう言うんでございます。


「天国に行きたければ、早く死ぬべし!」


――はい、これが世にも恐ろしい粗忽長屋の出世話。

オチは怖いが笑ってお帰り、南無阿弥陀仏でございます。

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