一を聞いて十を知る粗忽者ー十吉その後ー
※注意書き
最初にこっちを思い浮かんだんですが
…ブラックすぎなので取りやめてました。
まぁグロ表現はしてないですが…
人によっては不快かもしれないので
赤子ネタ入るし…
嫌な人は引き返してください
一を聞いて十を知る──などという人は、そうそうお目にかかれるものではございません。
ですが、この長屋の十吉ときたら、その真逆。
一を聞いたら十を早とちり、二を聞く前に三を語り出す、筋金入りの粗忽者でして。
さて、この十吉、散々人に迷惑をかけたあげく、とうとう寿命が尽きまして。
で、閻魔様の前にズルズルと引きずり出された。
「十吉! お前の罪は、その粗忽による無秩序と迷惑の罪、まことに重い! 地獄行きじゃ!」
「へえっ!? 閻魔様、わたしァ、人を殺した覚えもござんせん!」
「お前だけじゃねぇ。人間というものは大概、何かしら殺生をしとる。
だから天国に行ける人間なんぞ、ほんの一握り。
まあ――その中間あたりに行く者ばかりよ」
……と、ここで十吉、大早とちり。
閻魔様の「その中間あたりに行く者ばかり」を聞いちゃあいない。
「なるほど! 殺生さえしなけりゃ天国まっしぐら! これは名案だ!」
……名案じゃねぇんだよ。
で、いざ地獄へ落ちても、この男、粗忽は死なず。
針の山を見るなり、「こりゃ出世の山だ!」と大張り切り。
「針が多いほど出世が早いってもんだ!」
生身で猛ダッシュ、全身ハリネズミ。
「イッテェ〜〜! だが極楽極楽ッ!」ってんだから、鬼も腰を抜かす。
次は釜茹で地獄。
「これは極上のふかし芋! 鬼さん、もっと火ぃ強めてくれ!」
湯の中で湯加減確かめながら鼻歌まじり。
地獄の釜が沸騰するより先に、鬼の堪忍袋が沸騰しました。
閻魔様のところへ駆け込んで、「あの男、地獄を長屋にしちまいやした!」
「じゃあ天国へ送れ!」
送ってみたら今度は――
静かなる天人の集いを「退屈しのぎの隠居長屋」と早とちり。
天女の羽衣を取り上げて、勝手に盆踊りを始める。
「極楽浄土音頭ィ〜〜!」なんて踊りだすもんだから、もう秩序が大混乱。
閻魔様、ついに堪忍袋の緒がぶち切れた。
「十吉! お前みたいな奴は、あの世にもいらん!」
と、帳簿に一の字を書きかけて思い直す。
こんな奴が一年で戻ってきてはたまらない
「一に白を足して百。……百年寿命をつけて現世へ送り返す!」
そうして地獄から百年保証つきで戻ってきた十吉。
で、また早とちり。
「殺生をすりゃ地獄行き。ならば! 人が殺生する前に、この世から送ってやりゃ皆天国行き!」
善意の顔で赤子を抱えて「極楽直行便だ!」
――怖ぇわ!
案の定、人殺しの罪でお縄。
刑場で首を落とされるその瞬間、満面の笑みでこう申した。
「これは首という世間体を捨てる儀式! わしは首なしでも出世できる!」
――できねぇよ。
どっこい、寿命があと百年あるもんだから死なない。
ゴトリと落ちた首を胴体が拾い上げ、
「これは出世祝いの縁起物!」って脇に抱え込み、ずるずると立ち上がる。
血だらけの足音を響かせながら、夜の町をトコトコ徘徊。
口からはゴボゴボと血を吹きながら、
「殺生を止めに行くぅ〜〜!」とやってくる。
その夜、赤子が泣けば――
「あ、十吉が来た!」と親が青ざめる。
鵺の鳴く夜は恐ろしい。
赤子が泣く夜は、十吉が出る。
首を抱えてニタァ〜と笑い、こう言うんでございます。
「天国に行きたければ、早く死ぬべし!」
――はい、これが世にも恐ろしい粗忽長屋の出世話。
オチは怖いが笑ってお帰り、南無阿弥陀仏でございます。




