連続短編小説 学校の怪談〜狼人間の正体と秘密①』
「あれは夜の20時頃だったかな........ちょうどその時間帯に俺と和也は部活の後片付けを終えて、学校から出ようとしていた時だった。夜の20時だったこともあって、俺と和也の二人しかそこにはいなかった。いつもはまだ明るい職員室の電気もその日は暗くて誰かいるような感じではなかった。俺と和也で明日の小テストの確認をしながら、学校の校門前まで着いたあたりで突然、学校の屋上あたりから声がした。人の声というより、動物の鳴き声のような感じだった。俺たちはすぐに二人でその声が聞こえる方に向かって、その屋上がよく見えるグラウンドに行った。そこで俺たちはとんでもないものを見てしまった……」
「狼人間!!」
「しっ!声が大きい!誰かに聞かれたらまずいだろ。また俺たちが変な目で見られるだろうが!ただでさえ内申点が危ういっていうのに!」
「その狼人間がどうだったの?」
「俺達は、はっきりとは見てねんだわ、そいつが後ろ姿だったからっていうのもあるかもしれねぇが、唯一はっきり見えたのはそいつの耳は動物の耳のようにとんがっていた。後、俺達の高校の緑色のジャージを着ていたってことだ。 そうだよな和也。」
俺と同じクラスの高校二年生の陸が、その時一緒にいた、もう一人の俺と同じ同級生の和也に確認した。 和也は恐る恐る、恐怖に満ちた顔で頷いた。
「俺、あれ以降ずっと狼人間の夢ばっかり見ちゃう。」
何を言ってるんだと僕は心の中でつぶやいた。狼人間?いるわけないだろそんなやつ……
「なるほどね。でも、もしかしたらその生徒が狼人間のコスプレでもしてたんじゃない?もうすぐ文化祭も近いし。狼の鳴き声の練習でもしてたんだよきっと。」
「一人で誰もいないところで練習するか普通、あんな夜中に。怖すぎるだろ。しかもあの鳴き声は確かに人間の声ではなかった。間違いなく獣と化した動物の鳴き声だった。」
「ふーん、で?結局すぐその狼人間みたいなやつとやらに、怖くなってすぐ帰ちゃったんだろ。しかもそれを見たのがその日だけっていうのもな〜。」
「仕方ないだろ!その日しか見てないもんは見てねんだ!俺達もその日から野球の練習が終わってから少し遅めに俺と和也で帰ってんだけど結局それ以降はその狼人間は現れなかったな…なんだったんだろう……気味が悪りぃ……。」
「で、今その狼人間の話をしながら昼ごはんを食っているのがこの屋上ってことね。」
屋上を見渡すと俺たち以外にも友達同士で仲良くご飯を食べてる女子高生や、一緒の部活の人同士で食べてる人もいて、何も変わっていることもなく平和で普通のよく見る光景である。
いや、そうでもないか。コロナウイルスの時は、こうやって外で食べることもできなかったな。今考えるとこれも当たり前のようでそうじゃないのかもしれないなと思った。
そんなことを思いながら弁当の白ご飯を自分の口に入れようとした、その時、
「ブオオーーーーン!!!!!!
「うわーーー!!狼人間!」
和也が思わずびっくりして叫んだ。僕はその様子にクスッと笑ってしまった。
「お前はほんとに怖がりな奴だな。あれは楽器の音だよ。」
よく見ると下のグラウンドで吹奏楽部の部員楽器の音出しをしていた。
「俺、行かなきゃ!」
「あ、そっか、お前吹奏楽部だったもんな。そういえば。」
「うん、じゃあ言ってくる!」
俺は急いで階段を降りていった。