第3話 警告と特訓
魔王とレイナが城へと向かっていた頃
ユーナとセシルはと言うと
(可愛い寝顔で寝ている)
コンコン。
戸が叩かれた。
「はい、どうぞ」
ガチャリ。
部屋に入ってきたのは、一人のメイドだった。
「セシルさん、魔王様に手紙が」
メイドはセシルに手紙を渡した。
「分かった、一応中身を確認した後に渡しておくよ。
ありがとうね」
「はい………ユーナ様はお眠りなのですか?」
「ああ、僕や魔王様がいない時に部屋を出ていて魔王城を探検していたみたいだよ。
小さい子は好奇心旺盛なんだね」
「ふふっ、子どもは好奇心旺盛ですからね。
怖いもの知らずって言ったりもしますし、それと何ですけど……もう一つ手紙がございまして、これを」
メイドはもう一つの手紙を渡した。
「これは僕宛?」
「はい、相手は………ユーズベルト様からです」
!?
「ユーズベルトって確か、西の所にあるヘイリス城の王だったよね!?
何か理由とか知ってる?」
「分かりません」
(開けてみるか)
セシルは手紙を開ける。
魔王の使用人のセシルへ
いかがお過ごしかな?魔王城は、まぁ俺が信用している所だから、別に苦痛ではないだろ。
それでだが、これは警告の為に送った、この俺の所にも来たからな……
手紙にはもう一つ紙がある。
それを開けると
全ての王、王女よ……我は神とでも言っておこう、我はこの全ての大陸の王となる、となると邪魔になる存在はお前達、王や王女達だ。
この1年にお前達を葬る、勿論魔王も例外ではない。
「何だこれは!!」
そしてユーズベルトの手紙へと目を傾け
最近、一番西の街のヘルドベルクと言う街が一夜にして消し飛んだ。
我々が向かった時には灰当然、建物も殆ど無かった。
そして1枚の紙が置いてあるだけだった。
そこにはこう書かれていた。
神の裁きを……と。
これは多分だが他の王達にも届いているはずだ。
気を付けろよ、奴の狙いは王だ。
ヘルドベルクが狙われたのはそこに滞在していたのが、ルル王女だったからな。
そうして手紙は終わっていた。
「これは……そんな、ルル王女が……」
「何が書かれていたのですか?」
メイドが聞いた。
「王や王女を狙う者が現れた、そしてルル王女が死んだんだって。
相手は神と名乗る者らしい」
「そんな!いやでも、王女と王なんですよね」
「魔王も例外では無いらしい、つまり……殺害の対象……」
「そんな!どうすれば!」
「帰ってきたら報告しなければ、これは一大事だ。
でも、犯人は誰なんだろう……」
「それと、この事は他の者達は報告しなくていいよ」
「それはどうしてですか?」
「メイドの君が周りに報告なんてしたら、魔王城は大変な事になる。
まぁ誰が言ったとしても、だからこれは内緒でいいかな?」
「分かりました」
「ねぇねぇ何してるの?」
!?
突然の声に振り返るとユーナが居た。
「ユーナ様、起きたのですね」
「うん……お腹すいたー」
「食事を頼むよ」
「はい、お任せください……行きましょうユーナ様」
「うん」
ユーナはメイドに連れられ食堂へと向かうのでした。
(何でこんな平和な世界に……一対誰なんだ……神って……)
数時間後
魔王とレイナが戻ってきた。
セシルは魔王様の所へ走る。
「魔王様!」
「お!セシルか、ユーナは?」
「ユーナ様はお部屋でくつろいでいます、それよりもとんでもない手紙が届きました!」
「何!?まさか、ユーナを殺すとかの手紙か!?だとしたら!!!」
「いえいえ!魔王様です!」
「何?!」
「これを」
セシルは手紙を渡した。
………。
「これは……だとしたら、返答が無いのはまさか……」
「何の事ですか?」
「アルル城のシュナ王女に手紙を送っているのだが返答が全く無くてな。
前にあったパーティーにも来ていなかったんだ」
「そうなのですか?!だとするなら……」
「だがパーティーはこの手紙の来る前よりも前だ。
それよりも神と名乗る者は人なのかそれとも人ならざる者か……気になるな」
「ルル王女が殺されたんです……」
「お前が辛いのはよく分かる、ルル王女とは幼い頃から仲なのだろ……魔王城の近くの墓にルルの墓を建てよう、金は出すさ」
「……ありがとうございます……ルル……」
(許せないな……こんな事、それにしても今まで殆ど平和であったはずなのになぜこんな事が)
そうして
魔王はお金を出し、ルルの墓を建てた。
セシルは自分の部屋にある、ハートのペンダントを墓に置いた。
「ルル、今は安らかに眠ってくれ……必ず犯人は捕まえる!」
「セシル、神と名乗る者は強いやつかもしれない。
お前はまだまだ戦闘に出せるほどではない」
「お願いします!鍛えてください!!少しだけでもほんの少しだけでも!!!」
!
(セシルの目は本気の目だ、我が引き下がる訳にはいかないではないか……クククッ)
「いいだろう!だが過酷だがやれるな?」
「はい!!!」
そうして夜になるまで、魔王の元で特訓を励むセシル。
それを見つめるレイナ。
コツコツ。
「魔王様、なぜセシルを鍛えているのですか?」
「……ルル王女が死んだそうだ」
!?
「ルル王女が!?歳ではないですよね!?まさか暗殺されたのですか!?」
「手紙見てよ」
セシルは剣を置き、手紙を見せた。
!
「これは!……そう言えばあんたとルル王女は仲が良かったわね……ごめんなさい……さっきの言葉は」
「いいんだ、落ちこぼれの僕が抗った所で無駄かもしれない………でも、それでも少しだけでも力になれるのなら僕は強くなりたい、魔王様の使用人だから」
「セシル……」
「魔王様、特訓の続きを」
「ああ、それよりもレイナ……何か言いたげたそうだが?」
「私……あんたと特訓してあげる、今夜、魔王城を出て進むと広い場所がある。
そこで私とやり合おう……」
レイナはそう言い行ってしまった。
「レイナさん……」
「良かったな、今夜は長いぞ?」
「ちょ!何言ってるんですか魔王様!普通の特訓ですからね!」
「分かっている、さっ……続けるぞ」
「はい」
そうして、セシルは魔王の特訓を受けた。
そうして特訓は夜中に終わった。
「どうだ?少しは強くなったんじゃないか?」
「まぁ、………あ、レイナさんが待っている!」
「まずい!すまないな……我が気づかない内にここまで時間が経っているとは」
「そうね〜どうしてくれようかしら?」
!?
振り返るとご立腹のレイナが居た。
「すまんレイナ、魔王だと言うのに時間すら把握してなかったなんて」
「僕からも謝ります、僕が気づいていたら」
2人は頭を下げる。
「………まぁいいよ、あんたが強くなったのなら。
それで時間ある?」
「はい!」
セシルはレイナに駆け寄る。
「行きましょう」
レイナはセシルの手を繋ぐ。
(!)
「気をつけるんだぞ、夜の魔物は………まぁレイナが居るから大丈夫か……」
魔王も城へと戻るのでした。
そうして2人は開けた場所にたどり着く。
「ねぇセシル、あんたは強さに何を求める?役に立ちたいからとか?」
「まぁそうですね、僕は魔王様の使用人なので……前まではここまで思わなかったのですけど、
ルルが亡くなった時とても悲しい気持ちになったんです……もしも魔王様が亡くなったら同僚が亡くなったらどうしようって、だからこそ強くなりたいと思ったんです。
僕の強さに求めるものは守りたい物の為とかですかね」
「ふふ……前のセシルとは大違いね。
あのね……私も魔王の右腕として強くなるのは当然、でも最近私はあまり声をかけてもらえなくなった、強くなりすぎたからと思ったの。
魔王様の右腕として恥だと思ったの、だからこんなことならそんなに強くならなきゃよかったって思ったの。
変でしょ?」
「ううん、変じゃないよ」
(!)
「頼られなくなっているのは悲しいことだからね。
でも、それだけ強いから敵の前には出さないって思っているのかも。
最初から強い者を出したら他の者達は強くなれない、いずれレイナさんも歳をとる、そうなると後輩が貴方の跡を受け継ぐとき、経験がなきゃ意味がない。
戦場は色んな事が起きるし、臨機応変に動かないといけない、だからこそ今は後輩の為にレイナさんをあまり声をかけてないのかもしれないですよ」
「……後輩……ね、そうね……そんな事考えてもいなかった。
確かに私は人間、いずれ歳をとれば亡くなる。
……色々と気づかせてくれてありがとねセシル」
ちゅ。
!?
レイナはセシルの頰にキスをした。
「ちょ!これは!」
「ありがとうのキス、誰も居ないからしただけだからね。
………それと私はあんたが強くなるって分かるから」
「そうなんですね」
「それじゃあ私とやり合いましょ?勿論寸止めだからね」
「分かりました」
そうして2人は剣を鞘から抜いた。
そうして2人の特訓が始まったのだった。
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