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第4話 グレースの胸中

 リベルの部屋から出たグレースは一人、壁に背中を預けた。

 誰もいない宿舎の廊下の壁は冷たく、火照りかけた体を冷ますのにちょうどよかった。

「あれは、まずい」

 あのポーズ、何を血迷ったのだろう。完全に魔が差した。ふと、そういえばあのポーズを可愛いと褒めてくれたことを思い出したのだ。


「それに子供扱いされてたかも……」


 仕方ない。今のリベルにここでの記憶はないのだ。〈遺体〉のもとで復生し、この場所に連れてこられて、偶々昔の知り合いと出会っただけ。

 リベル目線、最後に出会ったのは炭鉱で泣いていた頃のグレースだ。あの様子にも無理は無い。


 だから、リベルにはここでのグレースとの思い出はない。

 グレースにはあってもリベルにはないのだ。

 言葉で言うには恥ずかしいことをしたことも、二人で笑い合ったことも、リベルが死ぬと全てリセットされてしまう。


 リベルがここに来たのは何回目か。最初に出会えたときは運命だと思った。あの炭鉱での出会いから十年。夢にまで見た再会だった。


「伝えてよかったのかな。いきなりすぎて混乱させたかも」


 先ほどの情報はリベルにとってどうだったのだろう。衝動に任せて伝えてしまった真実を、彼はどう感じたのだろう。

 子供の時、復生体の一人と二人きりで会話したことを、同じ王族である兄様や姉様にも自慢したことを思い出す。


 国民感情は復生体に対して大きな差がある。

 千年間もの間、王国の栄華に協力してくれている善き隣人。


 そしてそれと同じくらい、王国の建国の歴史の中で初代国王が退けた悪人を支配し、善き行いをさせているといった、傲慢な見方もある。

 しかし、王族の見方は一致していた。


 化け物。


 神能の強力さを自らが完全に理解しているからこそ、その時代を終わらせたと言っても過言ではない復生体の覇業は、父や母、祖父母から耳にたこができるほど教えられた。


 初代国王の実力が市井よりも確実に伝わっている王族からすればなおのこと。今でも復生体、リベル・ダ・ヴェントの力の源である〈遺体〉は王城で丁重に扱われている。


「一緒に……」逃げられたらな……。続きそうになる言葉を苦労して飲み込んだ。


 あ、微かな声を漏らした。ここはリベル以外の復生体も居住している。廊下でこんなふうに思い悩んでいる姿など見られたくはない。

 そうこうしているうちにすぐ近くの扉から足音が聞こえてきた。今出てきた部屋からだ。


 そそくさと廊下を小走りで後にする。

 チャコールグレーの髪が踊るように揺れた。

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