エロ漫画の寝取られ主人公に転生してしまった
初ざまぁ？になります。
微ざまぁ程度のものになります。
ピピピピピピピピピピ——
ん？何の音だ？頭がゆっくりと覚醒していく。目を開けるといつもの天井じゃない。上体を起こして周りを見渡すと見知らぬ部屋にいた。どうやらベッドで寝ていたらしい。先ほどの音は枕元に置いてあったスマホから鳴っていた。
スマホも普段使っているものじゃない。どうなっているんだ？どうやって俺はここに来たんだ？昨日のことを思い出してみようとするが何も思い出せない。記憶喪失ってやつか？
でも自分の名前は分かる。錦織真矢、28歳の底辺サラリーマンだ。まだ独身で実家暮らし。兄弟は下に弟が2人いて親もまだまだ現役でバリバリ働いている。あれ？全然記憶喪失じゃないな……。昨日のことだけがすっぽり頭から抜けている感じだ。
このままじゃ埒が明かないから歯磨きして顔を洗おう。部屋を出ると中々に広いリビングがあり、ここも同様に見たことがない。洗面台を探してうろうろしていると先ほど出た部屋から見て左奥にある廊下を進んだ先に洗面台があった。鏡を見ると鏡には俺とは違う顔が映っていた。
「何だこれ！？一体どうなってんだよ！？」
意味が分からない。俺の顔はどこいった？完全に別人だった。顔は特にいたって普通だ。イケメンでもなくブサイクというわけでもない。軽くパニックを起こしている。とりあえず歯磨きをして顔を洗う。顔に水をかけると幾分か冷静さを取り戻した。
他の部屋も見てみるか。何か分かるかもしれない。リビングへ戻り、寝ていた部屋の向かいの部屋に入る。書斎みたいだな。部屋の壁は本棚になっていて本がびっしり並べられている。机の上にはパソコンがあり、さらに身分証らしきネックストラップのついたケースがあった。
「高梨大翔？」
教員証と書かれた身分証には先ほど鏡に映っていた顔と名前があった。さらにその下に「私立大山女学院」と勤務先も書いてあった。
ビビーン！
分かった！この高梨っていうのは俺が最近買っているエロ漫画の連載作品の一つ『僕の生徒兼恋人が同僚教師に堕ちていく』の主人公の高梨だ。てことは俺はこの高梨になったってことか？これは俗にいう転生ってやつだろうか？でも転生って死んだりしないとできないよな？
あー、そうだ。俺昨日この作品が載ってるエロ漫画を買ってスッキリしようと読んでたんだ。それでこの作品が最終話で胸糞展開で終わったから腹が立って気分転換にコンビニに行こうとしたところでトラックに轢かれたんだ。
じゃあやっぱ俺は高梨に転生したんだな。しかもよりによって高梨かよ……。
この『僕の生徒兼恋人が同僚教師に堕ちていく』の主人公の高梨は大山女学院で数学の教師をやっている。初めてクラス担任になった高梨はそこで水無月麗華という生徒と恋に落ちる。教師と生徒の禁断の恋愛だ。見つからないようにこっそり愛を育んでいたところを同僚の国語教師——大川に見つかり、脅された水無月は大川に寝取られ堕ちていくというNTR物だ。
俺はNTR物は嫌いだから読む気はなかったんだが絵がどストライクだったんだよ。NTRという点を我慢すれば俺にとっては至高のオカズだったわけだ。だから毎回漫画を買ってはお世話になっていた。
俺は高梨に転生した。つまりNTRれる側になるってことだ。最悪だ。こいつは最終的に寝取られて終わりというだけでなく、大川に堕とされた水無月の歪んだ愛情によって人生を壊されるというめちゃくちゃ胸糞な終わりを迎える。
恋人を寝取られるだけならまだ我慢はできる。でも寝取られた恋人のことを乗り越え、新たに一歩を踏み出して今度こそ新しい恋人と幸せになるという展開をぶち壊すという終わり方はないだろうよ。あまりにも高梨が不憫だ。ちなみにだがぶち壊すのはもちろん水無月の体でだ。
俺が高梨に転生した以上、こいつを不幸な目に遭わせるわけにはいかない。いや、正確には俺が被害を受けるわけにはいかない。もう俺は高梨に転生してしまっている訳だから他人事のように捉えるのはよくない。
よし！まずは今物語のどの辺にいるのか把握しておく必要があるな。俺は仕事に行く準備をして家を出た。どうやら物語の舞台は都内のようだ。設定なんかは全く分からないからな。エロい展開さえあればいいわけだから。高梨だってそうだ。漫画の中では「高梨」か「高梨先生」としか呼ばれていないから大翔なんて名前があるなんて知らなかったし。
架空の世界だから色々違ってたりしてるのかなと思ったけど、電車とかの交通機関は俺が現実世界で生きていた通りだった。スマホの地図アプリと乗り換えアプリを使って大山女学院までの行き方を検索。20分ほどで辿り着いた。
職員室に入り、自分の席はどこかと探す。よく見ると座席表が貼ってあったのでスムーズに不審がられることもなく自席についた。
「おはようございます、高梨先生」
左隣から声をかけられる。顔を向けると笑顔の爽やかイケメンがいた。教員証には「大川悟志」と書いてある。こいつが大川……。漫画の中では生徒たちからかなり人気があることが分かる場面があったから、皆この爽やかな笑顔に騙されているということか。
「おはようございます、大川先生。今日も爽やかですね」
当たり障りのない挨拶を返しておく。こいつとは関わりたくないがまさか席が隣だとはな。しばらく高梨がやっていた業務の確認を行っていると朝の職員会議が始まった。
業務の確認と職員会議で分かったことがある。どうやら水無月は今の段階では学校に在籍しておらず、次年度新入生として入学してくるようだ。ついでに今の俺はクラス担任ではなかった。漫画では初めてクラス担任として受け持ったクラスで水無月と出会うからな。それともう一つ、次年度のクラス担任、教科担当の振り分け会議を今日の放課後に行うということだ。
ということはだ、現状の俺はNTRを回避できる！よかった……。もうすでに水無月と出会っていて大川に堕とされている最中だったらどうしようもなかった。
よし！とりあえずNTR回避の行動を取ろう！それと大川を地獄に落としてやろう！
最初に俺は大川が使っている国語準備室に隠しカメラを設置した。確か漫画ではここで水無月とイタしていた。あいつが水無月だけを狙っていたとは考えられない。他にも被害者がいるかもと睨んだわけだ。
次に俺は振り分け会議で次年度のクラス担任、水無月が在籍することになるであろうクラスの教科担当を固辞した。これで水無月と何かが起こることはほぼない。あっても廊下ですれ違うくらいだろう。
NTR回避！そして大川への制裁！準備が整った！これからどうなるのかが楽しみだ！
最初に動きがあったのは大川の方だった。当然と言えば当然か。まああいつの手を出す女の数の多いこと多いこと。俺が観察を始めて1週間で10人もの女生徒の弱みを握っていることが分かった。
そしてあいつの性欲のすごいことすごいこと。一発目が終わったと思ったらすぐに二発目が始まる。どんだけ早いだよ！ってツッコミたくなるけど、まあ漫画の世界だからなんだろうな。
極めつけはあいつのブツのデカいことデカいこと。おそらくテクニックもあるのだろう。これで堕ちない女生徒はいないというくらいに激しい行為を見せつけられている。やっぱ漫画の世界だからなんでもアリだな。
さらに観察を続けていると、弱みを握られている女生徒とは違う女生徒が現れた。
「どうだ？また面白いネタを持っていそうな奴はいたか？」
「ん～、今のところはいないね～！もうすぐ春休みだからそこで何か収穫あるかも！」
「何かあったら教えるんだぞ？では今日も報酬をあげないとな」
とか言っておっ始めやがった。なるほど、この女が裏で動いて弱みを見つけ、それを大川が利用しているということか。となると水無月の件もこの女が動いていた可能性が考えられる。この女にも痛い目を見せないといけないな！
そこで俺は探偵事務所に女のことを徹底的に調べるように依頼した。
気がつけば水無月が入学してくる前に大川の悪行の証拠が十分すぎるくらいに集まってしまった。協力している女の情報が手に入り次第速攻で拡散を始めるとしよう。
※
探偵事務所からの報告を待ちながら学校は春休みに入り、次年度の準備やら引継ぎやらやったことのない業務で結構大変だった。授業なんかもやったりしたけど、俺には教師は向いてないなって感じたよ。
4月に入り探偵事務所から女——桧山千夏の調査の報告書が届いた。桧山は大川に言っていた通りにこの春休みを使って生徒を尾行して弱みを探していたみたいだ。1人が網にかかってしまったようで春休み明けにでも大川の餌食となってしまうのだろう。
またこの桧山はパ〇活や立ち〇ぼなどで小遣い稼ぎをしているみたいでホテルを出入りしている写真なんかも報告書にはあった。
そして春休み明けの始業式の日。俺は職員室の自分の席でゆっくりしながらコーヒーを飲んでいた。そうすると血相を変えた教師が職員室に飛び込んできた。教頭に向かって
「大変です！3年2組の教室の黒板にこのような写真が貼りつけられていました！」
教師が教頭に写真を渡すと教頭の顔がどんどん青ざめていく。
「これはおそらくというかどう見ても大川先生と桧山です。他にもたくさんの写真が貼られていて今他の先生が写真を回収しています！」
「すぐに大川先生を呼んできてください。各クラスに先生が来るまで自習時間にすること、始業式の開始を1時間延ばすことを伝えてください！」
少しして大川が絶望した顔で校長室へ入っていった。呼ばれる前にどんなことが起きたか分かっているみたいだな。でもな、こんなもんでは終わらせないぞ。お前はたくさんの女生徒を絶望の底に堕としたんだ。
結局生徒たちが情報を学校中に拡散したみたいでそれを聞いた保護者なんかも学校に押し寄せて大騒動となってしまい、始業式は中止、翌日の入学式も延期、1週間休校となった。
学校での大騒動の次の日、マスコミが大勢学校に凸してきた。学校側はマスコミが来るとは思わなかったのだろう。俺ら教師たちに絶対に詳細を話さないように箝口令を出した。ところがマスコミ側が知ってる情報が教師たちの知ってる情報よりも詳しかったため今度は教師たちが学校側に対して説明を求め出して結局この日も大騒動となってしまった。
さらに次の日、朝のニュース番組で学校のことが取り上げられた。SNSでは大川と桧山のやりとりの映像や大川が弱みを握っている女生徒とイタしてる映像が流れ、大山女学院は大炎上の騒ぎとなった。
もちろんながらマスコミにリークしたのもSNSに流したのも俺だ。桧山以外の女生徒の顔にはちゃんとモザイクは入れ、名前にはピー音を入れておいた。おそらくここまでの騒ぎにしておかないと学校での内々での処理で終わってしまう。
結果学校はマスコミを前に緊急の記者会見、また全校生徒の保護者に対して説明会を開いた。責任者である校長と教頭が辞任、大川は懲戒処分されそのまま逮捕。桧山は退学処分となり大川と同じく逮捕となった。
俺が観察して判明した10人の女生徒以外にも過去に何人も大川の被害を受けていたみたいで被害者の会が設立。学校ならびに大川に対して賠償請求を行うらしい。被害者の中には親が議員や社長なんかやっている人がいたみたいで桧山も含めて本格的に社会から抹殺されるみたいだ。何年かしたら釈放されるだろうからそこからが本当の地獄なのかもな。
これで大川への制裁は終わった。あとは水無月と接触することなく生活できれば確実にNTRの心配もないだろう。あれ、何か意識が薄れていく……。
「ありがとう」
そんな声が聞こえたような気がしたが俺はそのまま意識を失った。
※
目が覚めると見知らぬ天井がある。体を起こそうとしてみるが動かない。かろうじて首は動くみたいだから横を向くと母親が椅子に座り船を漕いでいた。
「かあさん」
掠れた声で母親を呼ぶ。目を覚ました母親が驚いた顔をしながら涙を流し始めた。
「真矢！目を覚ましたんだね！すぐに先生呼ぶから！」
ベッドに備え付けられているナースコールのボタンを押す。どうやらここは病院のようだな。ナースコールで呼ばれた看護師が来て俺が目を覚ましたのを確認して病室を出ていった。
あの日トラックに轢かれて全身を強く打ち、色んなところを骨折した状態でなんとか一命を取り留めた俺は約1カ月半近く意識が回復しなかったそうだ。ちょうど俺が高梨に転生していた期間と同じくらいだ。
なんだか不思議な体験をさせてもらったみたいだ。俺は自分の体が不自由なく動けるようになるまで半年近くかかってしまったけど、なんとか回復できた。会社はクビになってしまったけど、元々ブラックだったからこの機会にもっといい仕事を探そうと思う。
それとあの漫画は『生徒と教師の禁断のイチャラブ性活』なんてタイトルも変わって高梨ではなく高梨の代わりに新しくクラス担任になった教師と水無月がお付き合いをしながらお突き合いをするというイチャイチャラブラブな内容に変わっていた。
あの『ありがとう』は多分救われた高梨からのお礼の言葉だったんだろうなと思う。ともあれNTR物でなくなった絵がどストライクのオカズは最高だな！
お読みいただきありがとうございました。
もっと過激なざまぁが書けるようになりたいです。
感想をいただけると幸いです。
