トラック08
真っ暗な場所。
何も聞こえない。
ここが私の居場所。
ずっとずっと。
一生。
「始めまして、僕はメビウス」
…
「ねえ、君だよ」
…
「君の中に直接話しかけてるんだ。応えておくれよ」
…
「そうか。言葉を知らないんだ。じゃあ少しだけプレゼントしよう」
…
「どうだい?」
「なに? なんなの? あなたは?」
「僕はメビウス。君と約束がしたいんだ。君名前は?」
「なまえ? しらない」
「そうか。君はアルビノみたいだけど、名前を持ってないのか」
「あるびの? それがわたしのなまえ?」
「違うよ。名前じゃない。君の特徴さ」
「じゃあわたしのなまえ、アルビノでいい」
「そうか。君がそう言うなら、今から君はアルビノだ」
「うん、わたしはアルビノ」
「君と約束がしたいんだ」
「やくそく? なにそれ?」
「僕と君で決めたことだよ」
「よくわからない」
「うーん。じゃあ、僕のお願いを一つ聞いて欲しい。その代わり、君のお願いを何でも叶えてあげる」
「わたしなにもできないよ」
「僕に乗って、戦ってほしいんだ。君にしか出来ないんだよ」
「わたしにしか?」
「そう、アルビノ。君にしか出来ない」
「どうして?」
「僕が君を選んだから」
「わかった。できるかわからないけど」
「出来るさ。大丈夫。じゃあ君のお願いを何でも叶えてあげるよ」
「おねがい? わかんない」
「耳が聞こえるようになりたくない? 喋れるようになりたくない? いろんなものを見たくはない?」
「しらない、そんなの」
「耳が聞こえれば、いろんな音が聞こえるし、喋れるようになる。人と会話だって出来るよ。こんな風に」
「それってたのしいの?」
「それは君次第さ」
「じゃあ、おねがい。わたしききたい」
「目は? いろんなものが見えるよ。この世界は綺麗で美しい。醜いものもあるけどね」
「みにくい? そんなのいらない。わたしみえなくてもいい」
「そうか。君はとっても謙虚なんだね。大好きだよ、そういうとこ。じゃあ代わりに耳をよく聞こえるようにしてあげる」
「わたしきくよ。いろんなもの」
「色は聞こえないけどね。まあ、いいや。これで約束終わり。これから僕と君は一つだ」