トラック03
ねえ。遊ぼう。
今日はいっぱいだね。
ちょうど退屈だったんだ。
時間ならあるさ。
僕が君たちを殺すまで。
それまで歌おう。
踊ろう。
あっ、そこの君は新顔だね。こんにちは。
僕はアルビノ。こっちの大きいのはメビウスっていうんだ。
二人で一つ。
えっ、金ぴかで眩しいって。
我慢してくれよ。
仕方ないじゃないか。僕は美しいんだ。
歌うし、踊るからね。
ねえ、君、もう逝っちゃうの?
さようなら。
みんな大好きだよ。
ぶんぶん大きな羽があるし。
あ、君のその顎はがちゃがちゃ面白い音だね。
君のその「きぴー」ってのは笑ってるのかい?
みんな頼んでもいないのに僕に場所を教えてくれるんだ。
僕はここだよ、ここにいるよ、ってさ。
みんな僕と遊びたいんだね。
あはは。
あれ? 新顔の君はとっても静かなんだね。
どこにいるのか分からないよ。
え? 僕に見つかりたくない?
なんだ、隠れんぼか。
ほら、みーつけた。次はもっと上手に隠れてね。
さようなら。
メビウスはみつけ上手なんだから。
みんなもっと遊ぼう。
だめだよ。そんなに早く逝っちゃ。
あー。来た来た。
君を待ってたんだ。とっても大きいんだね、君。
なんだか胴が長いし、足もいっぱいだ。
ぎゃぴぎゅうるるー。
ちょ、ちょっと。
うわぁ汚いなあ。
興奮してよだれが出ちゃったのかい?
その気持ちわかるよ。
僕もよだれが出そうなくらい楽しいよ。
ほら歌おう。
踊ろう。
あ、足、取れちゃったね。
いいじゃないか、一本くらい。
そんなに変わらないだろ?
うわぁー。
すごい、すごいよ、君たち。
そんなこともできるのかい?
組体操みたいだ。すごいすごい。
僕、ウンドウカイ出られなかったんだ。
でも聞いていたよ。
いいなーいいなー。
ねえ、歌おう。
踊ろう。
ウンドウカイには踊りもあるだろう?
かけっこも?
綱引も?
玉入れも?
あれ?
みんないなくなちゃった。
さようなら。
また遊ぼうね。
「こちら司令部のポール。応答せよ。応答せよ。メビウス機アルビノ。繰り返す…」
「あーもう。聞こえているポール。こちらメビウス機アルビノ。目標を捕捉後、速やかに攻撃。破壊した。報告以上」
「おい、おい。勝手に通信を切るな。損傷はないか? すごい数だったが?」
「右肩を脱臼した」
「何? 攻撃を受けたのか?」
「違う。ちょっと激しく動いただけだ。さっき自分で入れたから問題ない。もういいかポール?」
「いやダメだ。なぜ追尾カメラを振り切った? これはメディアにもリアルタイムで流れているんだぞ」
「そんなこと自分には関係ない」
「関係ないことあるか。メビウスの戦闘は一番数字が取れるんだ。スポンサーもガッツリつく。いい加減自覚してくれ。お前はこの軍のエースなんだぞ」
「いつからPKはテレビ局になったんだ。私はただ戦っているだけだ。好きにさせてくれ。もう今日はこれが最後なんだろ。早く帰投指示出してくれ」
「可愛くないやつだ。ああ速やかに帰還せよ。ドクターノムラには猫かぶってるくせに、ちょっとは任務中も素直になったらどうだ?」
「ノムラは特別だ。ポールにどうこう言われる筋合いはない。これ以上私の気分を害したら基地で盛大に歌ってやるからな」
「わかったわかった。それだけは勘弁してくれ。お前が基地で歌う損害より、バグに襲われる損害の方がよっぽど安い」
「それは良かった。切るぞ」
最近はどの基地の司令部もあんな奴ばかりらしい。視聴率ばかり気にして、こちらの戦いにケチをつけてくる。口を開けば金、金。ただ自由に歌って踊っていたいんだ。なんでそんな簡単なこともさせてくれないんだ。バカ軍人め。
早くノムラに会いたい。メビウスに乗っている以外の時間で安らげるのはノムラといるときだけだ。彼は私たち女神のパイロットを研究対象としてみたり、或いは金を稼ぐ道具のように扱ったりはしない。この十五年間一度もなかった。
私は彼に会うと子どもになる。今の自分は普通に成長した十九歳の自分。ただ彼に会うと、出会った時の五歳に戻る。それだけ。
彼は言った。
「アルビノ、君が大好きだよ。大切なんだ。一人の人間としてね」
だからこう言い返したんだ。
「変態ロリコンじじい」