二度と出られない空間
謎の女子「閉じ込めです」
高校一年のあなたは、いつの間にか、異様な場所にいた。
一辺が五メートルほどの立方体のような、扉も窓もない空間。ただ、暗くはなく、むしろぼんやりと明るい。
ここであなたが向かい合うのは、紺色のブレザーの制服を着た同年代の女子だった。
黒髪で、おとなしそうな髪型。やせ型の彼女の外見は、地味ではあるものの、それなりに好ましい。
そんな彼女が、あなたの前で、紺色のスカートをたくし上げる。
長めのスカートの中には、紺色ハーフパンツを穿いていた。太ももを隠すハーフパンツの裾周辺を、あなたに見せる。
あなたは彼女の姿に驚いた。
そして内心、かなり興奮していた。
「もう一度、あなたはハーフパンツを見たいですか?」
地味な女子は見た目の割に、高めの声がすごくかわいかった。
この不自然な状況に置かれていることを忘れそうになるぐらい、彼女の声質が魅力的で愛らしい。空間内の反響も、彼女に味方している。
これは夢だろうか? そう思ったからこそ、欲望に心を任せたあなたは、見たいと答えた。
「分かりました。ただし、あなたがそのように願うのでしたら、こちらは、“二度と出られない空間”になります。それでも本当によろしいのですか?」
あなたは女子に決断を迫られた。
これは夢……素晴らしい夢だろうか。
あなたは軽い気持ちで、構わないと答えた。
「了解です」
素敵な声の持ち主は、より大胆にスカートをたくし上げた。
あなたが感激して紺色のハーフパンツを眺め始めた時――。
唐突に、終わる。
謎の空間からあなたは脱した。
代わりに、いつもの見たことのある景色が目に入る。
どうやら現実に戻ったらしい。
あれはなんだったのだろうと思いながらも、あなたは再開した日常へとすぐに順応した。
□
あれから一年が経過した。
高校二年になったあなたは、再び、ここに来ていた。
謎の閉鎖空間。
思い出の場所。
正面にはあの時と同じように、制服姿の女子が静かに立っている。
不思議なことに、黒髪の彼女の見た目は当時と全く変わっていない。
すぐにあなたが思い出すのは、彼女から聞いた言葉だった。
二度と出られない空間。
確かに去年、そう聞いた。
だからあなたは彼女に問う。ここから出られなくなるのではなかったのか、と。
「あなたがご承諾して下さったのは、こちらの場所を、あなたの体内から“二度と出られない空間”にすることでした」
あいかわらず、声が飛び抜けてかわいい。
「このことは、あなたの不利益にもなります。将来、あなたが男性と結ばれても、女性と結ばれても、あなたの体内には、あなたに愛される私がいるのですから」
むしろ嬉しい。
「私とあなたがお会い出来るのは、一年に一度だけです。どうしてかと言いますと、あまり頻繁にお見せしていたら、飽きられてしまうかもしれないからですよ。――えいっ」
彼女はお尻側を向けてスカートをたくし上げ、紺色ハーフパンツを丸見えにした。あなたは思わず驚き声を出す。
「そういう反応をされると、とても嬉しいです」
彼女は紺色スカートを戻し、クルッと回ってあなたへと正面を向ける。
「はーぱんちらっ」
両手でスカートを少々持ち上げて、ハーフパンツを見せた。
「お次は、ガバッ!」
スカートを一気に大きく上げて、上部片側についた白いタグまで見せた。
「ここまで大胆にさせる、あなたがいけないのですよ……」
悲しげな声で、彼女は頬を染める。
そこから急に両手をスカートから放し、彼女はあなたのほうへと近寄って来る。
あなたに密着し、あなたの右手をつかむ。
「お洗濯しましょうね~」
今度は声がとても朗らかだった。
スカートの中に右手が入れられて、ハーフパンツの生地の上でグルグルと回される。
洗濯には、衣服を洗ってきれいにする以外にも、日常から離れて気分を一新するという意味もある。その洗濯をやってくれた彼女への感謝が絶えない。
紺色のハーフパンツを見て、触って、素晴らしい快感を得る。
あなたはずっと心が奪われていた。
「ご満足頂けましたか?」
女子はあなたの右手を解放し、スカートの中から出した。
「また来年、お会いしましょうね」
彼女は素敵な声とともに、たくし上げの姿勢を再び見せた。
ハーフパンツの下半分があなたに見えた。
かと思えば、あなたは現実世界に帰って来ていた。
少し疲れを感じる。
もし、彼女に生気を奪われていたとしても、彼女の献身的な行動に比べれば、それは些細な対価だと言い切れる。
あなたは、スカートをたくし上げてハーフパンツを見せてくれるあの女子に夢中だった。
けれども、このことを公言するのは、かなり恥ずかしい。特殊な好みを世間の大多数に理解してもらうのは大変困難だろう。
だから、なるべく多くの人に通用しそうな理由を作る。
ハーフパンツ好きのあなたは、彼女に夢中なのは、彼女の声があまりにもかわいかったから、ということにしておく。
来年が待ち遠しい。
(終わり)
紺色スカートの中の紺色ハーフパンツを見せる、というのを書きたかっただけです。色々と内容を考えた末に、本作のような形になりました。
最後までお読み下さり、ありがとうございます。