人災は忘れた頃にやってくる。その6
「で!?金の三級冒険者様がウチの銀級に何用だい?何かあるからこんな辺境くんだりまでわざわざ足を運んだんだろ?」
えっ!?ウチって?いつの間にかこのギルド専属になったの俺?いやあ聞いてないなあ。
「そうよ!!全く!!こいつが茶々を入れるから話が進まないったらありゃしないわ!!」
「そいつは失礼した。それじゃこいつは返してもらうぜ、ミス・パーやん!!」
俺は彼女から自分の冒険者証をもぎり取るとストレージに突っ込んだ。そんな俺に眉間に皺の入った熱い視線を浴びせるパーやんであった。
「収納魔法持ち⋯⋯確かに魔術士みたいね⋯⋯ふんっ!!まあいいわ。コイツに会いに来たってのもあるけど調べたい事があるのよ。この街の近くにあるでしょ?ギルド管理の閉鎖ダンジョン。ちょっと入りたいんだけどいいかしら?」
えっ!?ダンジョンあるの?俺も入ってみたいと女将の方を向くと何やら彼女は怪訝そうな顔をする。
「ドウル西のダンジョンかい?あそこは十年以上前に踏破されて今はもう何もないがらんどうだよ?そんな所に何があるって言うんだい!?」
「そう!!何も無いけど調べるのよ!!この意味わかるでしょ?」
「何かあるって言うのかい⋯⋯」
「それを調べる為に来たのよ。んじゃあ了承という事で入って良いわね」
「わかった⋯ギルドマスターとダンジョン管理部には私から伝えておくよ。しかしダンジョンを広範囲に調べるのだったら人員がいるだろ?どれくらいいるかい?」
パーやんは少し思考を巡らせると女将に答えた。
「何言ってんの?祭りで出払って人員なんかいないじゃない。それにせっかく楽しんでるのに急な呼び出しを喰らわせてほろ酔い気分の職員を萎えさせる趣味は私には無いわ。それにあたりは付けてるから人数はそんなに要らないわ。アテが外れたらお願いするかもだけど」
「そうかい?じゃあアンタ一人で行く気かい?」
「う〜ん、そうねえ。じゃあアンタ付いて来て!!」
パーやんがビシッと俺を指差す。
「えっ⋯やだ⋯」
間髪を容れずに我が口から本音がこぼれてしまった。そんな俺にパーやんは指を刺しながら信じられないという顔をする。
「えっ!?うそ⋯褐色美少女のお願いを聞かないなんて⋯⋯アンタ⋯ホントに人間?」
「え⋯この流れでなんで了承すると思ったんだ?普通こんだけバチバチにやり合ったらアンタなんか嫌いよ!!フンッ!!ってなるだろ?そんな相手に頼むのはおかしい」
「それはそれ、これはコレよ。子供の喧嘩じゃあないんだから。大人なんだからさっさと切り替えてビジネスモードに入りなさいよ。食パン咥えながら曲がり角でぶつかった相手が取引先の人だって事があるのが社会なんだから」
「そんな取引先はコチラから願い下げだね。もしくは担当者変更だ。ともかく!!俺は行かない!!もうね、トラブルの匂いがプンプンするの!!たまにしか当たらない俺の勘が行くなと言ってるの!!屋台でお土産買って僕は帰る!!じゃあ!!」
と、この場から立ち去ろうとするが我が腕をがっしりと非常に強い力で女将に掴まれた。何事ぞと女将の顔を見ると全く笑っていない笑顔をコチラに向けられた。
「ヘイルーキー、ギルドから依頼を出すから彼女に付いてってくれないかい?あくまで依頼だから断ってくれても良いんだけどねえ。アンタにとってもチャンスだよ?金級冒険者になんて滅多にお目にかかれる事なんてないんだ。付いていって勉強させて貰うのも良いんじゃあないかい?礼ははずむよ⋯まあ⋯お互いの為にさ⋯」
眼が怖い!!眼が!!しかし女将の表情を見るにこれが所謂パワーバランスというものか⋯金級冒険者を無下に出来ないギルドの立場と言った所か全く。まあでも、ギルドとのお付き合いという事もあるので俺の方も袖にするのもなあ⋯⋯腹を決めるしかないか⋯⋯
「わ〜ったよ!!行きますよ⋯⋯んじゃあ行く前に妻と子供に手紙を書かせてくれ⋯最後になるかもしれん」
「んっ?あんた妻子持ちだったのかい!?」
「いや、生まれてこのかた女子の御手手一つ握った事も無い童貞ですが?」
そんな俺と女将のユーモアたっぷりのやり取りを見ていたパーやんは、笑顔で俺の側頭部を杖でゴスゴス小突くのであった。己の拳や脚では装甲の硬さで痛めると学習しやがったなこのやろう!!
「バカな事やってないでさっさと行くわよ!!」
行きたく無い一心の俺は深くため息をつき、何となく彼女を見るとまるで勝ち誇ったような憎たらしい笑顔をコチラに向けやがった。
全く!!ムカつくわ!!




