人災は忘れた頃にやってくる。その3
折れた剣を呆然と見つめる三下1号は、どうやら状況が掴めていないらしい。斬りかかった相手は背の低い優男だったはずが今目の前にいるのはでっけえ鎧。思わず大男に似合わない戸惑いの声が漏れる。
「俺の剣が!?」
金欠の中、財産であり商売道具の剣が折れた事に呆然と立ち尽くしている1号の後ろから2号と3号が同時に斬りかかってきた。
「邪魔だ!!」
2号の声に1号はハッと我に返り彼らの剣撃の邪魔にならぬ様体勢を低くした。2号は右脇腹を、3号は左肩を狙い剣を振り下ろす。しかしそんなスロウリィ〜かつ非力な攻撃がギア装着の我に効くはずなかろうて!!今俺はノリに乗っているのだ!!主に調子にな!!
俺は繰り出される剣撃を拳で弾く。生身でやったらバッサリだがスペースチタニウムナノマシン合金の前では鉄のナマクラなどガキの振り回す小枝も同然。
我が拳に弾かれた両者の剣は彼らの手を離れどこかへと飛んでいった。剣がフライアウェイしたであろう方向で悲鳴が上がる。ギアの地獄イヤーで聞き耳を立てるとどうやら何処かのご婦人の帽子を吹っ飛ばした様子だが取り合えず怪我は無いようだ。いやいや一安心。
しかし、過去綺麗であったであろうご婦人は帽子をなくした事でご立腹。謝罪と賠償を求めて金切り声をあげていらっしゃる。
そんなご婦人に気を取られていると伏せていた1号がどこからかナイフを取り出し装甲可動部の隙間に突き刺してきた。ゴブリン同じ事されたな⋯
そんな1号を足で小突くと奴は後ろにゴロリと転がって行き、剣を拳で弾かれあっけに取られていた残り二人も両掌で軽く押すと弧を描き1号近くへと飛んで行くと奴の両隣あたりに土埃を上げ着地した。
奴らを避けるように周りの人垣が動く。
俺はご婦人に賠償を求められないように声を上げた。
「あ〜ご婦人!!こいつらの剣だから請求はこいつらに頼むわ」
三人はヨロヨロと起き上がると俺に鋭い眼光を向ける。しかし彼らの醜態を見て周りから失笑の声が上がると同時に声が聞こえてきた。
「あれ?あの鎧⋯竜狩りじゃねえ?」
「まじだ!!竜狩りじゃん!!」
「竜狩りってアレだろ!?狩った竜をギルドに売るついでに冒険者登録したらいきなり銀級になっちまったっていう」
「まじっ!?じゃあアイツら銀級に喧嘩売ったの!?まじウケるんだけど!!」
「アイツら普段から碌な事してねえからな!!このまま死ねば良いのに⋯」
どうやら聴衆の中に御同業が混じっている様だ。しかもなんか情報が正しく伝わっていない⋯しかし⋯アイツらを応援する奴はゼロの様だ。ヘイト集中にサテラが口を開く。
「彼らを支持する方はいない様ですね。今まで一体何をしてきたのでしょうか?」
「そりゃあ⋯他人の嫌がる事を積極的に行なって来たんじゃあない?」
周りの声に険しい顔と共に威嚇とも違う反応を示す三人。なんか戸惑っている?1号が口を開く。
「銀級?一体何言ってやがる⋯テメエが銀級だって!?あん時テメエは⋯」
「そうだね、君達に襲われた時点では銅の三級だったけどあの後すぐに銀の三級になったんだよねえ。俺自身ビックリしたぞ!!」
「はあ!?銀⋯⋯銀ってそんなバカな話あるか!!」
「ちょっ⋯待てよ!!だったら俺達⋯」
「そういえば竜狩りって聞こえたぞ⋯」
三者三様のむさ苦しいお髭蓄えた顔の血の気が引き、冷や汗が垂れる様子が見て取れた。
「ちなみに貴方達が先程から人身売買を標的にしていた彼女も銀級になりましたからね。果たして貴方達に彼女を確保することができますか?」
彼ら三人はお互いの顔を見ると一つ頷き、人垣を掻き分けダッシュで逃げ始めた。
「冗談じゃねえ!!竜を殺せるバケモンの相手なんかしてられるか!!」
「銀級に喧嘩売っちまったぞ!!どーすんだ!!」
「てめえらが金を奪おうなんて言うから!!」
コイツらを疎んでいた同業者の笑い声や罵声の中、必死の逃亡を図る三人の背中に向け手をかざす。
「サテラ、スタンガン一丁!!」
「レディ!!スタンガン一丁入りま〜す」
奴らに向けてかざした手の中に銃が現れると同時に三回引き金を引く。すると電気がたんと詰まった針付きの弾丸が三発発射されボンクラ三人それぞれの衣服が薄いところにぷっ刺さり、情けない声を上げながら類人猿達は倒れていった。
人差し指で銃をクルクル回しホルスターに入れるフリをすると銃はストレージに収納された。
「格闘術も良いが、やっぱ武器の方が楽でいいな」
「さあ、余計な時間を使ってしまいましたね。さっさとギルドに向かいましょう」
「あいよ」
冒険者ギルドに向かう為ここを去る我ら二人。ただ後方カメラにより、倒れた三人をしばいているご婦人が見えてしまい笑いそうになったのは俺たちだけの秘密。




