老人の企み事で一番割を食うのが若者なのは何故だろうか?その3
こういう時、一番スマートなのは直接攻撃である。俺はでっけえベッドに横たわる彼女のそばに行き軽く頬を叩くと反応が返ってきた。
「ほえ?」
何とまあ間抜けな声です事。俺は再び元気に声を出す。
「おはよ〜うございます!!」
「あ、おはよう⋯えっ?何なん?あれ?何でウチ下着なんなん?まさか⋯花を散らした⋯」
「そんな不本意な情事後に爆睡なんてできるか!!ほれ!!朝食ができたぞ!!顔洗って食堂に来い!!」
「朝⋯食?おお!!はい、行くわぁ!!」
ルゥは元気に起き上がり洗面所の方に向かった。先程の眠そうな感じはどこ吹く風。彼女は睡眠欲より食欲の方が比重が大きいらしい。
俺は先に戻り席に付きながらWEBのニュースサイトを開きアチラの情報などを見る。久しぶりに落ち着いてネット見てるわぁ〜。前までは毎日の様に当たり前に見ていたのに色々ありすぎて見る時間も気力もなかったからなあ。
しかしこの身体、疲れ難いはずなのに何で気力が湧かんかったのだろう?やはりAIの嫌がらせかあ?
など思いつつサイトを見ている。おっ!?あん!?今は亡き某男性アイドル事務所カリスマトップを元タレントが性被害で訴えたとな!?
あれまあ、マスコミを封殺できんとはあの事務所の力もカリスマ亡き後落ちたものよのう。コレは荒れるでえ!!あの帝国崩壊の足音が聞こえる!!と野次馬根性丸出しでサイトを凝視していたら上機嫌なルゥが食堂に入ってきた。
「お待たせ〜。わあ!!すごいなぁ〜。いつこんなに材料を仕入れたん?」
「おう、早いな。女性の身支度はもっと時間が掛かるものかと思ったが?」
「顔洗って歯磨いてそのまま来たえ!!その他はご飯食べ終わったらやるわあ」
「あっそう」
櫛をいれず髪がいつものロングストレートよりボーンな感じになっている彼女は嬉しそうに席に着くと俺に礼を言い食べ始めた。ベジファーストなど無視!!厚切りベーコンにフォークをぶっ刺しそのまま齧り付く!!やだ!!ワイルドで男らしい!!
次にオムレツやサラダ等一通り食べると彼女は口を開いた。
「ふわぁ〜!!どれも美味しいなぁ!!パンも白くてやわらかくて香りも良いし、卵もフワトロでたまらんし、何より野菜にかかったオイルに香辛料がふんだんに使われててびっくりやわぁ!!こんだけの物⋯高かったえ?」
「ん?オイル⋯ああ、ドレッシングの事か。シンプルなフレンチドレッシングを選んだのだが⋯香辛料って高いのか?」
「兄さんってええん家の生まれ!?高いんよ香辛料って!!遠い南の国から運ばれて来るからなぁ〜、平民には手が届き難いもんやわぁ。普通のご家庭だったら鍋いっぱいのスープに胡椒ひとつまみがええとこやえ」
「ほほう⋯」
胡椒があるのか⋯もしかしてあっちとこっちの食材は意外と共通している!?ルゥもレタスやチーズを何も躊躇なく食べていたからな!!なんて都合のいい事!!
「兄さん⋯今更なんやけど、一体何者え?」
「俺か?そうだな、一言で言えば見知らぬ大地に迷う名もなきエトランゼと言った所か⋯⋯」
「何言ってるんですか?」
さっきからダンマリを決め込んでいたサテラが口をひらく。ルゥの方を見てみると同じくコイツは一体何を言っているのだ?という顔をしている。あれえ!?決まったと思ったのになあ!?
「ふん!!まあそれは良いとしてだ。食べながらでも良いので聞くが良い!!本日はもう一つ寝室を作るぞ。夫婦でも無いのに同じベッドで寝るのはやはり不健全極まりないからな!!」
「そうやねぇ〜、別の部屋におんなじベッドがあったからそこにマットレス敷けばええやんなぁ。物置から一式出して表で干さんといかんねぇ。う〜ん、あんだけでかいの外まで運んぶんのめんどいなあ」
「でしたら結婚してしまえば同じベッドで寝られて良いでは無いですか?その面倒も無くなりますよ」
サテラがとんでもねえぶっ込みを入れてくる。
「おい!!お前もっと面倒になるとわかってて言っているだろう!!」
「いいえ!!寝室構築という作業がなくなるので、その点だけで言えば面倒ではありません!!」
「ちょいとルゥさん!!このポンコツAIに何か言ってあげて下さいな!!」
ルゥさんの方を見ると何やら考えていらっしゃる。
「う〜ん、結婚⋯ウチの歳だとまだ早い気もするけどなぁ〜。けど隣のえっちゃんは早々と婚約してたし⋯」
「ちょいとウェイト!!AIの戯言になに真剣になってんねん!!そもそも結婚って好きとか嫌いとか最初にそういうのが来るんでないの?今俺の中で戸惑いがすごい勢いで駆け抜けてったわあ!!私のメモリアルの中で出逢ってまだ一ヶ月も経ってないのに結婚考える奴は今のところ見た事ないぜ」
「ん?確かに好きとかそう言うのも大事やけど、狭い里やと大体家同士の打算で結婚は決まるからなぁ〜」
異世界人っていうかこの娘の結婚観って夢も希望もねえなあ。結婚ってさあ、お互いが幸せの絶頂の時にするもんじゃあないのか?
村社会ってそんなものなのか?なんかやだなあ⋯現代日本の中途半端なベッドタウンに住んでいた俺にはわからん!!
「全く⋯せっかく里の外にいるんだから因習に囚われず自分の好きな様にしたらどうだ?誰かと懇ろになって好き同士結婚した方が良いだろう?」
彼女はう〜むと何やら思案する素振りを見せると自分の中で何か解答を得たような顔を俺の方に向けた。
「確かに⋯里から離れたのだから囚われる必要はないなぁ⋯うん、頭切り替えんとあかんね!!」
「そうそう、だから寝室は作るぞ」
「ちぃっ!!」
AIの舌打ちが聞こえた気がしたが、それを無視し俺は朝食の続きを楽しんだ。目の前の彼女は早々と食べ終えてデザートの葡萄に手を伸ばし皮を剥こうとしていたがそのまま食べられると告げると訝しげに一粒口の中に放り込み一噛みするととても良い顔になった。




