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己のしくじりを他人に擦りつける奴のパンツにはう○こが擦り付いているに違いない

「おっさーん!!」


やべえ!!、マジで忘れてた!!生きてる?死んでる?それともなんか別の物になっちゃってる?

何たって異世界だからなあ。ゾンビ的何かになったっておかしくねえ!!


お嬢さんを抱えながらお姉さんも後に続く。

おっさんの所に着くや否や生死を確かめる。ワタクシに医療知識などござーせんので勿論ギアのセンサーとサテラさんにお頼み申します。


「心音を確認。生きてます。只、この傷ではそう長くは持ちません」


「そんな⋯⋯アルベルトさん⋯」


いきなり俺のギアから、女性の声が流れた事にも関せず只々(ただただ)膝を落としてしまった。


「う⋯うん⋯」


お嬢様から小さな声が。どうやら気がついたらしい。


「お嬢様!!お気付きになられましたか!?」


「あ⋯アメリア・・・?(わたくし)は⋯?」


「ああ、お嬢様⋯良かった⋯でも⋯お嬢様⋯気をしっかりお持ちください。アルベルトさんが・・・」


まだ意識がはっきりしていなかった様な顔がみるみるうちに驚きと畏れの顔に変わってゆく。

先程まで微睡の中に居た様な眼が見開かれ、まだふらつく身体を起こしおっさんもといアルベルト氏にふらりふらりと近付いていった。


「あ⋯あ⋯アルベルト⋯嘘でしょ⋯貴方程の人が⋯」


「く⋯うう。お⋯お嬢さま⋯」


「アルベルト!!」


アルベルト氏、意識を取り戻しました。しかしこのままでは死んでしまう⋯。


「お嬢さま⋯申し訳ありません。賊にやられてしまいました⋯年を取り過ぎてしまった様ですな⋯怖い思いをさせてしまいましたね⋯何とお詫びを⋯ああ⋯貴方様がお助けくださったのですか⋯主人に変わり礼を⋯ゴホッ!!」


鮮血に染まったアルベルトの手を握るお嬢さん。

やべええ。賊の死は何ともないが、こういうシチュエーションは堪えるよ⋯。何とかならんもんか⋯。


「おい、サテラ⋯なんか無いのか?ほら!!ゲームだったらさあ。なんか医療キットかなんかですぐ回復するじゃん!?そんな感じの無いの!?」


「こんな時に何を仰るのやら⋯。混乱しているとは言えゲームと現実を混在しないで下さい。医療キットはあります。技術的に高速回復も出来ます。只、医療キットの性能を最大限発揮する為には患者の身体にナノマシンが注入されている事とギアを装着していなければなりません。この方はどちらも有しておらず、我々が所持している医療キットでは外傷を塞ぐ事は出来ません。勿論外科用手術キットもありますが、ここには扱える者がおらず輸血用の血液もありません。正直打てる手が有りません⋯残念ですが⋯」


「そんな⋯」


サテラの回答を聞いて声を漏らすお嬢さん。ああ、無力だ。よくあるラノベだったら、主人公の謎パワーとかあちらの世界から持ち込んだアイテムでパッと治せちゃうのだろうけど。俺が出来るのはパンッと殺す事だけ⋯。


「くそう⋯何も出来んのか⋯」


「おーい!!兄さーん!!おっちゃんどーなっとる〜?」


崖上からまた能天気な声が聞こえる。もうすぐ死にま〜す⋯何て答えられるかい!!もう少し声のトーンをだな、真剣味溢れる感じでお願いしたい⋯。ああ!!そういえば貴女、薬師でしたね!!でも薬師って内科系のイメージがあるのだが⋯外科手術が必要な患者に対応出来るのか?


「兄さ〜ん!!取り敢えずはよ降ろして〜」


お嬢さんもお姉さんも声が聞こえる崖上に目をやっている。そのあっけらかんとした声に両者の顔は呆然としている。うちの連れが緊張感無くてすいません⋯。


「あのですね。あの上に居るの私の連れなんですけどね、薬師やってんですよ!!今連れてきますから、ちょっと待ってて下さいね!!」


あの雌エルフ!!今の状況を考えろい!!人が死にかけてるシュチュエーションで今から浦安のランドに行くカップルの片割れが待ち合わせ相手に気付いて手なぞブンブン振って、こっちこっち〜とか言ってくるが如く、明るく元気いっぱいな声を出すんじゃ無いよ!!まあ今世でその様な事象にあったことは無いがな!!ランドも子供の頃、家族で行ってそれっきりだ!!


なんかいたたまれず一目散にルゥの所へ!!いちいち登ってなんか居られんので一気にジャンプし、ルゥを小脇に抱え飛び降りる。なんか横で持ち方に対し文句を言っているみたいだが聞こえな〜い。


「ぐへっ!!」


着地と同時にルゥさんがくの字に曲がり何やら珍妙な声を出したぞ。


「うう⋯兄さん!!何すんのぉ〜!?お腹がぐーって押されて口から胃が飛び出すかと思ったわぁ!!」


無言⋯ルゥを抱えたままお姉さん達の所へダッシュ!!また、うわって感じの声が出てたが知らん。

おっさんの前でリリース。伸びたカエルの様に地面にベタッと落ちた。


「ぶへっ!!⋯くっ⋯兄さん⋯この扱い⋯ヒドイわぁ⋯」


「能天気な声出すな!!状況を考えなさいよ⋯⋯はい、連れてきました。今から診ますからね〜この人が」


唖然としているお嬢さんとお姉さん。ルゥが起き上がり二人に挨拶する。


「どうも初めまして。ウチ、ルゥシエル申しまして薬師などやっております。以後お見知り置きを」


「細かい挨拶は後にせい!!それより早く患者を見なさいよ!!」


「ああ、そやなあ。命かかってるもんなあ。失敬失敬。さて⋯」


ルゥの目つきが変わりおっさんの傷を調べ始めるが、時間はかからなかった。


「うん⋯ダメやなぁ〜。手の施し用が無いわ。血ぃ出過ぎてるもんなあ。縫合出来たとしても助かるとは思えへんわぁ。それに縫合時の痛みを軽減する薬も縫合用の糸もあらへん。こらあかんわぁ」


「ああ⋯そんなあ⋯アルベルト⋯」


お嬢さんが両手で顔を覆い大声で泣き始めた。そりゃあんだけ駄目って言われりゃそうなるか。

お姉さんも静かに悔しそうな顔で涙を流している。おっさんなんか完全に諦めモード入って辞世の句なんか読みそうな感じになってるし。しかしルゥさんは特になんでもな〜いって顔しておる。

ちょいと⋯空気読みなさいよ。もっと悲痛な顔して周りに合わせなさいよ。


「ありゃ?ごめんなあ〜。ウチの言葉足らずで泣かせてしもうたなぁ。大丈夫や。手の施し様な無くても魔法の施し様なら充分あるえ」


「え⋯?魔法⋯?」


お嬢さんが魔法というワードに反応して顔を上げた。魔法?そう言えばこの世界は魔法が存在するのだったな。

すっかり失念していたよ。


「ルゥシエル様!!神聖魔法を使えるのですか!?」


お姉さんが驚きの声をあげる。え!?真性魔法?魔法っていろんな種類があんの?


「う〜ん、神聖魔法は使えないえ。でも精霊魔法なら使えるわぁ」


「精霊魔法ですか⋯」


何やら困惑するお姉さん。


「アメリア⋯精霊魔法って?」


お嬢さんが精霊魔法について聞きたいらしい。俺も聞きたいでーす!!っていうかルゥさん。


「なんだ!?お宅、精霊魔法使えたの?聞いてませんけど?魔法使えないから薬師やってんじゃないの?」


「まあまあ、兄さんもお嬢様も疑問は後程。先ずはおっちゃんを治さんとなあ」


と動き出したルゥさん。おっさんの横に跪き、胸に両手を当て目を瞑り咳払いを一つ。そして何やら唱え出した。


「このうつしよにあまねく精霊達よ。我は精霊神の愛子(まなご)ルゥシエル。我が断片(かけら)を糧にこの者に生命の祝福を与えよ。精霊神の名において我の願いを叶えよ。我は神の愛子なり・・・」


ルゥが何やら唱えていると、なんとおっさんが真っ白な光に包まれた⋯と思ったら光が弾け、まるで最初から傷など無かったようなおっさんが光の中から現れた!!俺は一体何を見せられているのだ!?

さっきまでは、この世からお疲れ様でしたって容態だったのに今はどうだ!?土気色だった肌は生命力溢れた赤みを帯び、永遠に閉じられるはずの瞼はビシッと開きその中の眼は煌々と輝いている。

それになんか⋯ちょっと若返ってねぇ?

おっさんが起き上がり、切り裂かれた服の中の傷ひとつない自分の身体を見て驚くの表情を浮かべている。


「おお⋯これは⋯」


「アルベルト!!」


お嬢さんが嬉しさの余りおっさんに抱きついた。お姉さんも近くに寄る。

ああ、よかったよかった。しかしすごいものだな、魔法というものは⋯。

とルゥの方を見ると、祈りのポーズ?そのままで横に倒れた。


「おい!!大丈夫か!?」


ルゥを抱き抱えて顔色などの表情を伺う。センサーによるバイタルチェックを行いどこかに異常がないか

隈無く調べるが身体に異常は感じられず。


「うへへ⋯やっぱり重傷者への回復魔法はゴッソリ魔力を持ってかれるわぁ〜」


「魔力?それは減って大丈夫なものなのか?」


「兄さん⋯変わった事いうなぁ〜。魔力はしばらく休めば回復するえ。もしくは回復薬を飲むとか、他の人から貰うとか。兄さん知らんかったの?」


「う〜む・・・」


「知りませんでしたね。我々は魔法とは無縁の場所から来ましたので。ですから魔力というものが何か?正直わかりません」


答えあぐねている俺の代わりにサテラが答えてくれたが。


「あれ?兄さん⋯魔術師じゃなかったえ?魔術師なのに魔力知らんの?」


「あ⋯」


内部限定通信に切り替える。


「ちょっと!何言ってくれちゃってるの!?何自分から設定崩しちゃってんの!?どうする!?どう誤魔化すのよ!?」


「何言っているのですか?アドリブの一つも決められない愚鈍に代わって答えてあげただけでしょう?貴方は対応力が低いのですから

黙って見ていてください。私が華麗に躱して見せます」


「おう!そこまで言うならやって貰おうじゃあないの。面倒くさい事になっても俺は知らんぞ」


「裁量権は貴方にありますので最終的に責任とるのは貴方ですから悠々やらせて貰いますぅ〜」


「あ!?テメェ!!」


ブツっと俺との回線を切る暴走AI。お前⋯デジタル音声、しかも内部回線でぶつ切り音が出る訳ねーだろうが!!

嫌がらせの為にわざわざ音作りやがったな。


「ルゥさん」


「あや?さっちゃんやん」


「あの⋯さっちゃんとは私の事ですか?」


「そうやでぇ。呼び捨てはなんか可愛くないえ。女の子なんやから可愛い方がええやん」


「女の子?私がですか?う〜ん確かに女性を模したAIですが。しかし女性と言われると身体を持っている訳でも無い、かと言って女性の心を持っている訳でも無い。私を女性と言って良いものでしょうか?」


「何ゆうてるかよう分からんけど⋯さっちゃんは妖精の女の子やないの?ウチはそう思ってるえ」


「そうですか。貴方がそう認識すればそうなのでしょう。誰かに認識されれば、私も女性になれるのですね。ふふふ」


「そんで、魔力の話やけど」


「やっぱりその話します?」


躱せてねーぞポンコツAI。ここはやはりアテクシがスマート且つクレバーに近鉄大和西大寺駅のポイントの如く鮮やかに捌いてみせる。っていうか思い出した事がある。


俺、自分の事魔術師なんて言ってないでござる。

おそらく山賊Aが俺の事、魔術師と叫んだのが原因だろうな。

それに見事引っ張られちゃったよ。

いつのまにか俺魔術師って思っちゃってた。


しかしAIまで引っ張られるのはどうかと思うぜ。

そんなうっかりするとこまで人間をエミュレートしなくても良いんじゃないか?未来科学者よ。


「ちょいとよろしいか?」


「はい!?」


ルゥとサテラが同時に声を上げた。


「あちらに俺達の反応を待っている方々がおられますが」


「あ⋯」


不思議そうな、困った様な表情の三人様がこちらを見ている。

こちらも聞きたい事があるのだ。


街はどこにあるとですか!?

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