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大人の階段は登ってからが本番である。その4


モドキとはいえコレを避けられたら大したもんだぜ!!避けられたー!!


がしかし、アルベルトさんかなり無理な体勢で避けておられる。これは間違い無く倒れる!!チャンスである!!


俺は蹴りのモーションから直ぐに立て直す。いやホント!!躰道の身体操作の速さはすんごいんだから!!詳しくはググってくれ!!


そんで受け身不可能な倒れ方をしたアルベルトさんは直ぐに立ち上がろうとするが、俺は彼の上に馬乗りになると手刀を首筋突き付けた。


こちらの顔を一目見たアルベルトさんはフゥと一息吐き出す。


「年甲斐も無く尻もちをついてしまいましたよ⋯いや、参りました」


俺はアルベルトさんの上から降り、彼に手を貸し立ち上がらせる。


「手合わせに殺気出すの止めてもらっていいですか?怖くて仕様がなかったですよ」


「ほっほっほ、申し訳ない!!身体を動かすとつい⋯⋯いや!!お嬢様がやけに懐いてらしゃってそれに対する嫉妬などとそう言うのではありませんから!!」


サテラが小声で語りかけてくる。


「嫉妬してらっしゃったみたいですね」


俺も小声で答える。


「ああ、非常に正直な御仁だ事で」


「久しぶりにいい汗をかかせて頂きました。さて、私は朝の支度に戻らせて頂きますね。ではまた」


そう言うとアルベルトさんは自分の上着を抱えて屋敷に戻って行き、俺はそれを見送る。


「しかしまあなんだ⋯俺の服は弁償して貰えないのか!?左右両の袖が無くなってワイルドになってしまってるんだけど。ついでにズボンの方も左右非対称な半ズボンみたいになってるんですけど」


「これはあれでは!?またこの格好で食堂に突撃せよと神の思し召しでは無いでしょうか!?」


サテラが頓珍漢な事を言い出した!!なに言ってるんだこのAIは!?でもここはあえて乗る!!


「なにい!?それならそうと早く言ってよゴッド!!またドッカンドッカン言わせろってか!?よし!!行ってやろうじゃあないの!!無限の彼方へ、さあレッツゴー!!」


俺は意気揚々と屋敷に戻って⋯この後の事はあまり覚えてはいないのだが⋯はて?一体なにがあったのでしょうか?思い出せない。


俺が気が付いたのは今まさに馬車に乗らんとしている時であった。


「はっ!?」


「ん?どうしたん?」


先に乗り込んでいたルゥが何事かと声をかけてきた。


「いや⋯ここ数時間の記憶が飛んでいるのだが⋯何故だ?」


ああって声を漏らすルゥ。なんだ?お前は何を知っているのだ!?


「イルマ⋯過去の事は⋯まあね⋯」


何だ?サテラまで⋯一体何を言っているのだ?


「イルマ⋯いいですか、落ち着いて聞いてください。貴方は滑ったのです。しかもどん滑りです。あまりの滑りっぷりに貴方は記憶を閉ざしたのです」


「そうか⋯俺は滑ったのか⋯そういえばいつの間にか服が変わっていたな⋯」


自分の着ている服をしみじみと見る。まあ深刻そうに装ってはいるがただ笑いがとれんかったのである。芸人さんだったら落ち込むところだろうが、なぜ素人の俺が落ち込まにゃならんのだ。


いや⋯落ち込むか⋯だって恥ずかしいじゃん。


俺は今更の恥ずかしさを堪えながら馬車に乗り込む。隣に座ったルゥが何ともいえない表情で背中をトントン叩いてくる。その慈愛と嘲笑に満ちた眼をやめてくれい!!


案内してくれるアルベルトさんも馬車に乗ると、その後に続いて当たり前の顔でお嬢様が乗り込もうとするがアメリアさんに首根っこ掴まれて阻止されていた。この後座学があるんだって。


お嬢様は年相応な振る舞いでアメリアさんに休講を懇願していたが願い叶わず、我々を見送るとお屋敷の中に引っ張り込まれて行ったのが見えた。お屋敷内にドナドナされるあの表情、しばらくは忘れられないだろう。


馬車は住宅街を抜けしばらく走ると開けた場所に出た。見渡して見ると実に綺麗な所だ。何と言うか、イギリスの田園風景の中を走っている様だ。行った事無いけど。


隣のルゥは車窓から見える風景にはしゃいでいる。彼女も俺と同様綺麗と感じたのだろう。しかしなんだ。壁で囲った限られた土地をこんだけ保持しているなんて随分豪気な事では無いか?さすが金持ち、やる事がえげつねえと言う感じをおくびにも出さず、アルベルトさんにこの土地の事を聞いてみた。


ここいら辺の土地は中央や商業街や歓楽街から非常に遠くてあまり開発されなかったのですよ。それでいつの間にか保養地として利用される様になり今に至ると。


とのお返事が来た。ん?と言う事は⋯我々は今からとんでもない郊外に飛ばされるという訳ですか!?

非常時には住民の避難場所や守備隊の集合場所として使われるとか何とか。一応バッファとしての機能もあるのね。


まあ、人がゴミゴミいる所より断然マシか。ほんと、孤独が好きな俺で良かったね!!パリピだったら耐えられなかろう!!いや良かった良かった!!


と田園風景を楽しみつつ陰々滅々な思考をグルグルさせながら馬車は進むのであった。


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