自己認識と運動能力のギャップを感じてしまったあの歳⋯その1
お嬢様に引き連れられ屋敷に戻り交話室とやらに向かう。イモい小豆色のジャージで。
この格好をしているからにはいつ天井からタライが降ってくるかもわからん!!常に気を張って事に挑まねば!!
お広い屋敷内をしばらく歩くと一つの何やら厳重な鍵が付いた重々しい扉の前でお嬢様とアメリアさんが止まる。
「こちらですわ」
アメリアさんが扉を開ける。既に開錠は済んでいるようで鈍い音と共に開いた扉の先には既にアルベルトさんが待機していた。
窓の無い部屋は薄暗く控えめの明かりが灯っている。彼の横にある重厚な意匠のテーブルの上には何やら金やら何やらの飾りの付いたニスをテカテカに塗られた暗い色の箱の真ん中に冒険者ギルドで見た水晶玉がはめ込まれている。そしてその右側面からはラッパ?つつじの花弁?のような形の金属製の大きな物体が付いている。
ああ、あれは教科書とか博物館で見た蓄音機についてるアレだ。つまりあそこから音声が出るのだな。
背後で部屋の扉が閉められる音がした。しかしなんだ⋯特に危険は無い筈なのになんか緊張しちゃうのよねえ⋯⋯こういう閉鎖空間に閉じ込められると⋯レントゲン室然り。
俺達が揃うのを確認したアルベルトさんが水晶玉に話しかけた。
「旦那様、イルマ様が来られました」
「おお、そうか!!いや!!アルベルト達からは既に話は聞いているよ。また助けられてしまった様だね。本当にありがとう。返しきれない借りがまた増えてしまったなあ⋯」
「いえ、大した経費もかかってないのでお気遣いなく」
「早々に返したいところだけど⋯ルビーはいるかい?」
「はい、お父様」
「ルビー⋯怖い思いをしたね⋯私のせいだ⋯本当にすまない⋯」
「お父様⋯私も商家の娘として⋯覚悟は出来ております。私はお父様⋯いえ⋯商会の枷になるつもりは一切ございません!!お父様の御心のままに進められます様に」
「うん⋯それでも親として⋯謝るぐらいはさせて欲しい。すまない⋯」
「謝罪は確かに受け取りました」
「うん」
思った通りラッパみたいな部位から音声が聞こえたぞ!!音質的にはお世辞にも良いとは言えないが、少し遠いAMラジオくらいには聞こえる。しかし魔法って凄いね!!利便性で言えば部分的に彼方超えとるのもあるしな。
しかしまあ⋯商家の娘ってこんなに覚悟ガンギマリなんですか?それともお嬢様がレア個体?
「少し宜しいですか?」
「ん?ああサテラ君、君もいたのだね。何だい?」
「ええ、遺憾ながらこの男に取り憑いていないと生きて行けない身体なので」
「なんと!?そんな⋯⋯妖精が取り憑く!?⋯⋯しかも依存状態⋯⋯うらやま⋯⋯」
「お父様!!」
「あ⋯いやすまない⋯余りにも魅力的⋯⋯いや失礼⋯それで何かなサテラ君?」
大丈夫かこの頭目!?もし妖精の森とか見つけてしまったら仕事ほっぽり出して二度と戻ってこなかったとかにならんだろうな!?
そんな考えが頭に過ぎる俺をよそにサテラは話を続けた。
「実は賊を確保した場所にもう一人不審者がおりまして、我々の動向を探った後その場を離れました。恐らくですが本来そこでルビー嬢をその者に引き渡す手筈だったのではないでしょうか?ただ我々がそれを阻止した為引き渡しから、雇い主に報告に切り替えたのでしょう」
「ふうむ⋯それで?」
「その者にUAV⋯⋯いえ、私の使い魔に後をつけさせた所、雇い主と思しき人物にたどり着く事が出来ました」
「何!?使い魔だと!?妖精が使い魔!!ブホオオオオオ!!これは新発見だ!!業界がざわつく事間違いない!!」
何かが噴出する様な音が聞こえた⋯っていうか反応する所妖精ですか?違うんじゃあないかなあ〜!?もっと大事な所に反応せんと!!
「オホン!!」
お嬢様がわざとらしく咳払いをすると会話装置の向こう側の浮き足だったような反応は消えた。
「いや⋯すまない⋯それで、雇い主はどんな奴だった?」
「はい⋯ですがその前にこの装置は映像、もしくは画像の転送は出来るのでしょうか?」
少しの間をおいた後、サテラの問いにアルベルトさんが答える。
「いえ、音声のみです。映像を記録、投映できる魔術を使える者はごく少数のみ、しかもその肝心の映像を扱えるのは魔術を行使した術者だけでして⋯⋯一応魔石等へ映像が記録が出来ないか研究は進められておりますが、成果は芳しくなくそれに纏わる技術開発も進んでいない状況でして⋯⋯何でも魔族の国では遠方に画像を送る魔術装置の研究が行われていると聞いた事がありますが⋯」




