何でも闇とつければカッコいいと思っていたあの頃。その3
「ひっ!!これは!?」
「お嬢様は就寝中にコイツに拉致されたんですよ。そんでまあ俺達が追って、今に至ると言うかそんな感じなんですけどね。それで捕まえたのは良いんですが結束バンドでふんじばったら死んじゃったんですよ。出来ることならば生きて捕まえたかったんですがね。頭を抱えてポックリと。異常な死に方でしたよ」
「そうですか⋯」
最初は遺体に驚いていたが直ぐに冷静を取り戻した様だ。
さすが大店のお嬢様。実に肝が座ってらっしゃる。
「しかし⋯この者は何故私を狙ったのでしょうか?」
「それは⋯⋯実行犯が死んでしまったから聞き様がないし⋯⋯それにコイツ自身知らないのかもしれない。先の山賊共と一緒ですよ。しかし⋯こうも立て続けにトラブルとあっちゃあ前の事件とも何か関係あるかもしれませんな」
「指示した者は一緒⋯という事ですか?」
「その可能性は大いにありますな」
「私を狙うとしてもその真意はどこにあるのでしょう?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
しばらくの沈黙の後、サテラが口を開く。
「こういう時はシンプルに考えるのが一番ですよ。貴女を害して最も利益を受ける者と貴女を失って最も損害を受ける者を考えれば自ずと答えが出て来る筈です」
「利益⋯⋯損害⋯」
「ルゥの端末の反応が近づいて来ますね。速度からすると馬にでも乗っているのでしょうか?⋯⋯お嬢様、もうすぐお迎えが来ますよ」
「そうですか。わかりました」
サテラがルゥが来る事を告げる。俺もヘッドギアのディスプレイで確認すると確かに接近する物体がありご丁寧に移動体にはルゥの名前が入っていた。
仲間が来ると思うと安心感が生まれて少々笑みなど浮かべてみたりと緊張が少し抜けた次の瞬間センサーがこの近くより離れる物体をキャッチした。
「サテラ」
「了解」
お嬢様に無用の不安感を与えない様にサラッと指示を出す。
地面に横たわるコイツに貼り付けておいたUAVを今度は離れて行く動体へと向かわせる。
さあコイツは何だ?森の野生動物か?それとも首輪付きの動物か?まあ、そちらの管制はサテラに任せるとして俺はルゥの到着を待つ。
しばらくすると遠くより馬の走行音が聞こえてきた。音からすると真っ直ぐにこちらに向かって来ている様だ。ルゥの端末へサテラが音声案内をしているんだって。いやあ便利な機能ですなあとと思っていた所、こちらに必死の形相したオッサンの乗った馬が爆走しているではありませんか!!
「おーじょーうーさーまー!!」
「アルベルト!!」
お嬢様はアルベルトさんの顔を見て心底嬉しそうな安心の表情を浮かべた。やはりどこぞの馬のボーンと一緒にいるより親の顔より見た執事の方が心許せるであろう。うんうん。
アルベルトさんは馬を俺達の横につけると彼の後ろに乗っていたルゥがヒョイと飛び降りた。
おお!!まるで軽業師ではないか!!実に見事なり!!それに続きアルベルトさんも馬から降り勢いそのままにベッドに腰掛けるお嬢様を抱きしめた。
「お嬢様!!よくぞご無事で!!イルマ様、サテラ様、本当にありがとうございます!!一度ならず二度までも⋯⋯う⋯うううう」
お嬢様の無事に感極まって涙するオッサン。こればっかりは仕様がない。
「兄さん!!サッちゃん!!ルビーはん!!大丈夫か?怪我してへんかぁ〜?」
「アルベルト⋯苦しいわ⋯」
そんなお嬢様の言葉も意に介さずアルベルトさんはただ彼女を抱きしめ泣くばかりであった。
主人を失う恐怖と悲しみは如何程であっただろうか?親しい人を亡くした時、俺はどういう気持ちになるのであろうか?やっぱり、ナノマシンのメンタルコントロールに逃げるのだろうな。こんな鎧に身を固めんても中身が弱いままじゃあなあ⋯⋯。
「アルベルトさん。ルビー嬢の怪我の有無を確認したいのでそろそろ⋯⋯」




