飯は美味ければうまいほど健康に悪いもので出来ている その4
「ご満足いただけましたかな?」
「とても美味でしたわぁ」
「光学センサーが展開されてなかったので料理の画像を得られなかったのは残念です。次は端末をテーブルかどこかに置いてくださいね。イルマ」
「はいはい⋯いやあ、満足しましたよ。しかし一日ぶりの食事がこの様に豪勢だったゆえ慣れない胃がビックリしなければ良いのですがね。ははは」
「でも兄さんよぉ~効く胃薬持ってるやん!!大丈夫やろ!!」
「それは結構ですな。でっ!!それはどの様な薬で!?」
「お父様。イルマ様は不思議な物をたくさんお持ちなのですよ。流石異国の魔術士様ですわ」
「ほ~う。それは非常に興味深い!!でもまあ⋯それについては追々。それで⋯イルマ様にお聞ききしたい事がありましてな⋯」
「ああ頭取。そろそろ様付けはやめてもらえますか?何かむず痒いのですよねぇ。どうかお気楽かつ適当に呼んでいただければこれ幸いです」
「ウチも同じ。そもそもウチら様を付けられるような身分じゃあらへんもんなぁ」
「確かにそうですね。どこぞの異国人と辺境の里娘ですからね。様付け要素皆無ですね」
「それはそうだが棘を感じる」
「それは失礼」
「ははは⋯ではお言葉に甘えましてイルマ君とルゥシエルさんで良いですかな?」
「ルゥでええですよ。それに敬語も不要え」
「では、イルマ君とルゥさんとサテラさんに聞きたいのだが⋯まずは私の娘と従業員の命を救ってくれた事をあらためて礼を申し上げる⋯それで⋯賊と直接対峙した君達に奴らはどう見えた?実際矛を交えた君達の話が聞きたい!!」
賊?賊⋯最近会った賊といえばあの汚い三連星だが⋯頭目の言っているのはお嬢様方を襲った奴らの事だからあの山賊の事だ。さて奴らの印象か⋯う~ん。
と少し考えこむ間にサテラが口を開く。
「我々があの当時確認できた賊の総数は9人。その内2人が弓兵、残りは小剣や短剣で武装をしており各々剣術の心得がある様に見受けられました。その中でもリーダーと思われる者の技量は突出しておりアルベルトさんを退け我々の攻撃を回避しました。弓兵の技量も非常に高く、ギアの関節部に矢を当てる等我々が認識している山賊の範疇を超えておりました。それともこの国の山賊は皆、よく訓練された兵隊並みの技量を持っているものなのでしょうか?」
「いや⋯そんな山賊聞いた事もないよ」
サテラの問いに答えた後、少々考え込む頭目。
「あいつら撤退するときも鮮やかだったな。なんつーか⋯統制が取れているような。なんか山賊っちゅうより小隊の方がしっくりくるかも」
「確かになぁ~。ウチは崖上から見てたけど、一見バラバラの様なんやけど皆自分の役割しっかり持ってる感じがしたんよなぁ。とても無軌道集団にはみえんかったわぁ」
「なるほどね⋯」
頭目はそうつぶやくとティーカップを口元に運んだ。その様子を見ると頭目の中に何か確信めいたものがあるようだ。
「君達とアルベルト達の見解にほぼ相違が無い事が分かった。これは山賊の仕業では無い⋯恐らく傭兵らがルビー達を襲ったのだろう」
「傭兵ですか?」
「そう⋯傭兵。平時に傭兵の活躍できるところは非常に限られる。運が良ければどこかの国のお抱えや、やんごとなき方々の私兵なんてのもあるが皆がそうとは限らない。仕事にあぶれた奴らは糊口をしのぐ為に山賊みたいな窃盗行為に走る奴が殆どだ。ひどい時には略奪や誘拐、人身売買に手を出す奴らもいるほどでな。今回ルビー達を襲ったのもそんな奴らだろう」
なるほど傭兵か!!確かに軍隊だったらあの統率と技量には納得が行く。俺とルゥは示し合わせたように首を縦に振るのであった。うんうん。
「さてここからが問題だ。今回のケース、果たして食い扶持にあぶれた傭兵達の突発的犯行なのか?それとも裏に何かがあるのか?ここを見極めなきゃならん」
「出発地点の街において護衛の冒険者を雇ったと聞きましたがそれらの行方は?」
「向こうにいる人員によると、件の冒険者達はジマルのギルドに帰還していないとの事だ。一応ほかの街にいる者達にも探させてはいるが⋯ルビーらに裏街道を進めたのも彼らと聞いている。アルベルトも当時の彼らの動きに疑念を持っているようだ。私もどうも⋯⋯だからね、君達にまた協力を仰ぐ事もあるだろうからその時はよろしく頼むよ」
ほうほう⋯こりゃ怪しい雰囲気になってまいりましたな。商家のご令嬢を狙う謎の組織が!!
奴らの真の目的は!?二時間ドラマ一本撮れそうな題材だわ。




