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新しい知識を入れると大体他人に語りたがる。

ホントごめんなさい。がっかりさせてマジごめんなさい。


「残念なお知らせ?なんなん?」


「えーとですねえ。実に申し上げにくいのですが⋯我々も街を探しておりまして、何と言いますか⋯只今絶賛遭難中なのですよ。いやね、実は私達も遠い場所から来ましてねえ⋯とどのつまりここら辺の土地勘は皆無でございます。ご期待に沿えず誠に申し訳ございません」


「あれまあ、ご丁寧な説明痛み入りますわぁ⋯つまり⋯遭難継続で間違いあらへん?」


「はい、間違いござーせん」


「兄さんらも初めての場所なん?だったら仕方が無いわなぁ。確かにがっかりしたけど、まあ振り出しにもどっただけの話や。兄さんらのお陰で歩ける元気もろたしなあ」


なんて前向きでいい()なんでしょう。今まで読んできたラノベのパターンでは大体気の強いヒロインが出てきて、こちらを役立たず扱いしてくるんですよまったく。自分は何もしないくせにこっちにはあーだこーだ指示してきてうぜーの何の。んでデレられた所でテメエにやられてきた過去は存在する訳で、良い感じになろうともダークネスメモリーが頭をよぎって好きになれないんだよなあ。

現実世界も含めて、初めて優しい()に会ったわ。こっちに向けてくれてる笑顔が眩しいぜ。


「はい、現状を認識した所でこれからの事を考えましょう。ルゥも我々も人間の街を探すという共通の目的があります。そこでルゥには我々と行動を共にする事を提案します。その方が安全に街に到着する可能性が高まると思うのですが?如何です?」


おうサテラさん。いきなりのお誘いだねえ。良いんじゃないの?正直寂しかったんよお~。真っ暗森を一人暗視機能を頼りに駆け回る心細さは精神にクルぜえ~。


「うれしいわあ、うちも同じこと思ってたんよぉ。正直ここから街がすぐ見つかるかわからんえ、またお腹すいて倒れてまうかもしれんやん。でも兄さんらといればご飯の心配はいらんそうだしなぁ」


「決まりですね」


そうそうご飯目当てでも良いから一緒に行きましょう!ん?ご飯目当て?細けえ事は良いんだよ!可愛い娘と一緒にいたいの。


「一緒に行ってくれるそうですよ。良かったですねスケベニンゲン」


なにい!?心を読まれただとおぅ!?


「スケベ?ははっ!兄さんも男の子だもんなぁ。仕様があらしませんえ。まあ、お世話になりっぱなしなのに今返せるとしたらうち自身しかありゃしません。兄さんさえ良ければ、夜のお相手いたしましょうか?」


そう言うとルゥは悪戯っぽく笑うとマントをめくった。

ありゃあ、そこには洋服の上からでも確認できるとても大きなお胸が!細目の腰付きが!其れらを支える立派なお尻が!そこからすらっと伸びる御御足が!

がああ!まぶすうぃー!童貞人間には余りも眩しい光景だあ。


「人間はこんな危険な状態においても生殖行為を優先されるのですか?度し難いですね」


オマエ。AIの癖に今半笑いだっただろう。

わかってるって。からかわれている事ぐらいはな!

このメスどもめぇ!こうなったら、冗談じゃなくしてやろうか?このビッグウェーブに乗って童貞卒業してやろうか?


「なーんてなあ。やるなら倒れて抵抗出来ないうちに済ますわなあ。兄さんそんなお人じゃない事ぐらいわかってますわぁ。なあ?」


無言の抵抗。


「おーい兄さーん」


無言の抵抗+荒い息遣い。


「にい・・さん?」


さっきまで眼の前にいた優しい娘はもういない。

今そこにいるのは白髪白ギャルじゃ。俺が苦手とする人種の一つじゃ。

これはもうギャルと童貞の戦いと言っても過言ではない。相手を敵と認識した時点で容赦はしない!!

喰らうがよい!!無言の圧力戦法!!名付けてガンジー大作戦を!!

知ってるかい?ガンジーの若い頃の性欲を!!おピンクまみれで親父の死に目に会えなかったエピソードが有る位じゃ!!今の俺にはヤングガンジーのスタンドが乗り移ってるに違いないぞい!!


「あはは⋯いややわぁ~。冗談え?じょうだ⋯」


今度は無言で体操を始める。これからキメに行く男の準備運動だ。さあ慄くがよい!!

意味ありげに腰など回してみたりしちゃうぞ~。


「ちょ⋯ちょ⋯にいさん・・まってえなぁ!!あかんてぇ~!!」


「ふふふ⋯俺を本気にさせてしまった君が悪わるいのさ。さあ!!我が美技に酔うが良い!!」


ウォーキングダイエットの動き方で白ギャルエルフににじり寄る。彼女の白い肌色の顔が青みがかった白になったって行くところを俺は見逃さん!!この感じからすると、お前も経験は無いな!!という事は処女ビッチって奴か?エロ漫画によく出てくるシチュのギャルなのに純情とか!?燃えるぜ!!さあ俺を茶化した報いを受けよ!!


「かんにんしてぇ~!!」


まさに襲い掛からんとした時、冷静な声がスピーカーから流れた。


「はいそこまでです。何時までもふざけていないでこれからの事を話し合いますよ」


「なんでい!!良い所だったのに邪魔するでない!!」


「生身の女性に対しそんな事できる人ではないでしょう?貴方は」


「あら!良くお分かりで。ところで、君の電源落とす方法聞いていい?」


「そこの木で、貴方が首でも吊れば多分切れますよ」


「それは俺の電源の落とし方じゃ!!ボケェ!!本当に首つって死んでやろうか?俺が死んだらお前はどうなるか楽しみだなあああ~ここから動けなくなって朽ちていくのか~?それとも朽ちる事無くずーっと単体で存在し続けて、ついには考えるのをやめるのが先かあ~どっちかな~!!」


「あら~それは困りましたねえ~?等と言うと思いましたか~?本気で死ぬつもりは無い癖に口だけは達者ですねまったく。はいはい、仕様がありませんね。ここは大人なAIであるワタクシが謝りましょう。申し訳ありませんでした~」


「全く気持ちがこもってないよね君の謝罪ってさぁ。謝る気が無いから全く伝わってこないんだよねえ

もっと心込めてさあ。本当に済まないという気持ちがいっぱいならば出来るよねえ?」


「AIに気持ちを求めてどうするんですか?相手は機械ですよ?」


「こういう時に限って自分は機械って⋯普段は(おくび)にも出さん癖にさぁ」


「ワタシハキカイデスヨ。ピーギョロロロー」


「未来のAIなのになんでFAX音声知ってんだよ!!俺だってギリなのに!!君⋯もしかしてババア⋯」


「なんですか?この音はFAXなどという骨董品ではありません。プログラムをオーディオカセットテープに記録していたという古代技術の再現です。間違いないで戴きたい!!油まみれの壁を登らせますよ!?」


「またそんな古い漫画のネタを!やっぱ君は・・・」


「それ以上は言わせませんよ!!」


「ブフッ!!]


俺とサテラの言い合いを聴いてルゥが噴き出した。どうだ!!他人の醜態は面白かろう。


「兄さんもいけずやわぁ~。本当に襲われるかとおもってしまったわぁ。すごい迫力だったえ」


「そいつはどうも⋯」


「おちょくってごめんなぁ~」


「はいはい。んで?これからどうするって?」


「今までと変わりません。川に沿って移動します。何度も言いますが、大体人間の居住場所は川など水辺付近に存在する確率が高いですから」


「たしかになぁ。いきもんは水無しじゃ生きていけないし、畑やるんやったら井戸だけじゃ不便やもんなぁ。一理あるわぁ~」


「そういう事です。それでは移動する前にそこにあるすっかり冷めたココアを処理してください」


「誰のせいで冷めたと思っとるんじゃ⋯」


「⋯⋯」


一気に飲み干そうと思い冷めたココアが入っているカップを手に取ると、ルゥが興味ありげに中身を覗き込み匂いをかいだ。


「あれまあ、ショコラ―タの匂いがするわぁ!!兄さんこれ何?」


「ココアって飲みモンで、その多分ショコラ―タって奴をミルクに溶かして砂糖で甘みを付けたモンだ・・・と思う」


「美味しそうやわぁ~興味あるわぁ~、兄さんそれくれへん?」


「いいけど冷めてるよ?」


「別にええよぉ~、味と匂いを確かめたいだけやしなぁ」


カップをルゥに差し出すと、まるで新しいおもちゃを得た子供みたいなワクワク顔で受取り、輝くルビーの様な眼で冷めたココアを見つめている。一体何が彼女の興味を引いているのか?


「強壮剤として飲まれてるショコラ―タはもっと濃い銅貨色と鮮烈な匂いととろみがある。このココアはあの強い匂いでは無いけど間違いなくショコラ―タの匂いや。薄まるとこんな匂いになるなんて驚きやわぁ。高い薬をこんな飲み方しようとは誰も思わんしなぁ~」


一体何をやっているのか俺には良く分からんが、まるでワインの匂いをかぐ時にやるアレの様にカップを回し鼻をより近づけて匂いを確かめている。そういえば薬師とか言っていたな。チョコも昔は薬扱いだったと聞いた事がある。純ココアは苦いもんなあ。確かに薬っぽい。

等と考えていると、ルゥがカップにその小さい口をつけココアを少量口に含んだ。

口の中でココアを回し、舌と嗅覚で何かを確かめているようだと思った次の瞬間、一気にいったー!!


「ぷはー!!うまいなあ!!砂糖で甘みを付けてミルクで薄めるとこんなに飲みやすいんやなぁ!!ほんまに驚きやわぁ」


「なんだ?ここら辺ではそのショコラ―タだっけ?甘くはないのか?」


「砂糖は高価やし、新鮮なミルクも手に入り辛いからなぁ。しかもショコラ―タが最も高価や。そんなもん甘くしようなんて誰もおもわへんわぁ~。うちかて年に一回少量でもお目にかかれれば幸運やもん」


「そんなもんか、でも俺の居たとこだと・・・確か貴族が飲みにくさを解消するために砂糖を入れたって話を聞いた事があるのだが⋯」


「そうか~、確かに貴族様やったら砂糖も手に入るしショコラ―タにも触れる回数多いもんなぁ。もしかしたら上流階級ではもう甘い味付けのショコラ―タがあるかもなぁ~。自分の常識に囚われたらいかんいかん。薬師は常に新しい目線が必要や」


な~んかキリッ!って効果音が付きそうなセリフでしたが、まあ確かに何かを作る人は常識に囚われるとその範囲内でしか動けないからイノベーションが起こせないってなんかどっかのコメンテーターが偉そうに言っていたな。まああまりにも常識から外れると周りに迷惑をかけるので外れるのは程々にお願いします。


「ちなみにこの様な物もあります」


ストレージから取り出した板チョコをすっと差し出す。


「なんなんこれー!?」


その後、彼女は板チョコを完食。それに飽き足らずインスタントパン(未来の奴だから詳細わからん)と若鳥のトマト煮、ポテトマカロニサラダ、パウンドケーキ、紅茶と次々にたいらげていった。空っぽだった胃にそんなに詰め込んで大丈夫かと実に心配である。

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