飯は美味ければうまいほど健康に悪いもので出来ている その1
「ああ⋯お茶が空っぽの胃に沁みわたるわぁ~」
「なんと!?空っぽですって!?」
頭目の後方で控えていたアルベルトさんが思わず声を上げ、その声量に驚いて一同彼の方を向いた。
「あ⋯これは失礼いたしました。いやしかしルゥシエル様。胃が空っぽと申されましたな。もしかして空腹でいらっしゃるのでは?」
「えっと⋯はい。空腹ですわぁ」
えへへと恥ずかしそうに笑うルゥ。そういえば俺達は昼食をとりに行こうとしていたんだよな。そこにあの色男が登場したわけで⋯うん。確かにあの村の出来事から今まで食事どころか水もとってないや。よく保てれてるなあこの身体。
「いやあ、少々ごたごたがありましたねえ。食事をとれる時間を確保できなかったのですよ。おかげで昨日の昼辺りから何も食べていない状況でしてね」
「ウチは村の人から干し肉と芋もらったえ」
「あっそう。食えてないのは俺だけでしたか⋯」
「そうでございますか!!いやはや、お若い身体には空腹はお辛いでしょう。旦那様、そろそろ良い時間ですし、皆様と昼食と致しましょう!!それが良い!!」
「あ⋯ああ、そうだな。用意を頼む」
「はい!!わかりました!!ミヒャエル!!行きますよ!!」
と言うとアルベルトさんとミヒャエルはこちらに頭を下げると部屋から出て行った。
「私も席を外します。また昼食時にお会いいたしましょう。ルビー。お二方の⋯ああ失礼、お三方のお相手を頼むよ。粗相のないようにね」
「はい!!お父様!!」
「お気遣い痛み入ります」
父親の願いに元気よく返事を返すお嬢様の年相応の反応が可愛いじゃないの。そんでサテラが頭目に返事を返した。なんと!?戦闘用AIなのに礼儀作法がプログラムされている!?いったいどんな目的で!?
まあ、そんな事どうでもいいか。頭目を見送り部屋には俺達とお嬢様、そしてメイドが残される。
さて、一体どんな話をすれば良いのやら?思うに我がコミュニケーション能力は戦闘用AI以下である。
そんな俺がウィットに富んだ素敵なおしゃべりなどできるはずもなくただ戸惑うばかり。こんな時ペラペラ行ける奴が恐らくおモテになったり昇進なさったりするのであろう。自分⋯不器用っすから。しかしこんな時、持つべきものは仲間である。
「アルベルトはん、えらい張り切ってはるなぁ~。なんでやろ?」
よしっ!!ルゥが会話のバトンをぶん投げたぞ!!後は女性同士、キャッキャウフフとすればいいさ!!男は間に入り込まず隅っこに座ってますからお気遣いなく!!と会話拒否モードに入ろうとしたところで何か難しい顔をしたアメリアさんが口を開く。
「申し訳ございません!!⋯⋯実はアルベルトさん、ずっと旦那様にお嬢様とご一緒にお食事をなさってほしいと思っておりまして⋯旦那様はお忙しい方故、お嬢様はいつもお一人でお食事をなさっていられるのです。まわりには我々がおりますが所詮は使用人。ともに食卓を囲むなどできようもございません。ですので折角のこの機会を逃すまいと勇んでしまったのでしょう。皆様をだしにつかう様でとても心苦しいのですが、どうかご容赦を⋯」
「アメリア⋯」
悲し気な、でもうれしいような、そんな複雑な顔をアメリアに向けるお嬢様。
「ああ、お気遣いなく。俺達は食事が出来れば問題無いので。出汁だろうがフォンドボーだろうがお好きにお使いください」
「右に同じえ!!」
「コミュニケーションツールとしては力不足かもしれませんが、お役に立てれば幸いです」
「皆様本当にありがとうございます」
お嬢様はそう言ってアメリアさんと共に頭を下げる。少女の笑顔を見るのは実に良いものだ。
それからはお嬢様達と他愛のない会話を楽しんだ。




