他人から幸せに見えてる人もそれはそれで苦労している訳で⋯その5
「無料で結構です。これでやっと恩をお返しできるというモノです。ずっと住んでいただいても構いませんよ。将来的に気に入っていただければお売りいたします」
「それは、実にうれしい限りです。しかし無料というモノは⋯ちょっとね。タダより高い物はない。試食をしたら買わなきゃならない。五千円ぽっきりと言われたのに店から出たら財布が空っぽの歌舞伎町の夜など、甘い話には必ず裏がある⋯とつい考えてしまうんですよ⋯これ、僕の悪い癖です」
「そんな小心者がとって付けたような癖ありましたっけ?」
「うるさい。だまれ」
「五千円ってなんえ?」
「君もだまろうか?」
頭目はくすくすと小さく笑うと俺の問いに答えた。
「いやなに。こちらも打算で動いていますからご安心ください。貴方方の様な将来有望な冒険者との繋がりを持っておきたいだけですので。それが郊外の空き家一軒で保てるのなら安いモノ。しかも当方は維持管理をしなくて済み、何かあれば大家として有利な条件で依頼できるわけで。これはなかなかいい取引ではありませんか?」
う~む。そこまで裏があるのなら信じても良いだろう。まあ、何かあればストレージに全部突っ込んで真夜中ランナウェーイかませばいいだけだし。
「わかりました!!ここは是非甘えさせて頂くと致します!!ああ、それと甘えついでに。実は我々本日の宿が無いのですよ。なんか今、祭り⋯ですか?それのお陰で宿が取れんのですよ。品質問わず泊まれれば良いので引っ越しが住むまでの宿をご紹介いただけないでしょうか?」
頭目の横で俺の願いを聞いたお嬢様の頭上に再び電球が灯る!!
「お父様。如何でしょう?別邸の準備が整うまで皆様には我が家に滞在していただくと言うのは!?」
「それは良いね!!いや、是非そうして頂きたい!!今の状況ではあまり良い宿は取れんでしょう。でしたら我が家に滞在していただいた方が快適に過ごせるというもの。御覧の通り部屋は余っています故是非ともご滞在ください!!」
俺はルゥの方に眼をやる。するとすげえワクワクした顔のエルフがいる。ついでに腕輪の方もなんとなく見る。
「良いんじゃないですか?折角のご厚意に甘えるとしましょう」
「では!!お願いいたします!!」
俺とルゥは頭目とお嬢様に頭を下げる。すると扉をノックする音が聞こえアルベルトさんが答える。
「なにか?」
「遅くなって申し訳ございません。お茶をお持ちしました」
アメリアさんが扉を開けるとそこにはお茶のセットが乗ったカートとそれを押すミヒャエルがいた。また会ったね。濃ゆい顔人!!彼はピシッと良い姿勢で俺達の横にカートを付けると上品なデザインのこれまたお高そうな磁器製ティーカップにお茶を注いでゆく。
「失礼いたします」
そう言うとミヒャエルは綺麗なべっ甲色のお茶が入ったカップを白く光るオサレな模様の入ったソーサーに音も無く乗せ、静かに俺達の前に置くのであった。
カップの中からはとても良い香りがする。お茶など普段嗜まない俺にでもこれが良いものだとわかる。
俺が最後に飲んだ上級の紅茶は朝の紅茶プレミアム無糖だったと記憶している。
「いただきますえ」
ルゥがカップを手に取り、顔を近づけ香りを確かめると物凄くうっとりした顔をした。
恍惚フェイス⋯だと!?何?そのちょっとしたエロス感は!?
カップに口をつけるルゥ。白い陶磁器に桃色の唇が⋯って、だから何でセクシーさを出す!?
さらにお茶を口に含むとこれまた陶磁器の様になめらかで白い頬が紅潮する。あーはいはい。セクシーセクシー。
「は~~なんて芳醇な味と香りや⋯お茶の風味と深いうまみの奥から感じるほんのりとした甘みと、まるで熟れた果物の様な香りが遅れてやってきて⋯これはたまらんなぁ~!!」
「果実のような香りですか?恐らく発酵臭ですね。詳細は成分分析してみないとわかりませんが」
エルフのグルメレポートを横目に俺も一口⋯⋯うん!!ペットボトルとは違うね!!
以上!!




