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他人から幸せに見えてる人もそれはそれで苦労している訳で⋯その2


再び外に顔を向けると先程の小規模住宅から一挙に変わり大きなお庭の付いた大きなお家が眼に入ってきた。どうやらまた地区が変わったらしい。そんなご立派なお屋敷群の中を走り抜け一段と立派な門の前に馬車が止まると、使用人と思われる人々が門の扉を開け馬車は門を潜り敷地の中に入っていった。


いやあ⋯己の場違い感に正直引いています。生まれて初めてこんなお屋敷に入るのです。緊張しない方がおかしい。恐らく同じように緊張しているであろうルゥに眼を向ける。


「広い庭やねぇ~!!こんだけあったら薬草畑どんだけつくれるやろなぁ~」


⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


能天気なのか豪胆なのか⋯⋯緊張してるの俺だけかい!!


我が心のシャウトを他所に馬車が建物入り口前で止まった。

外では別のこれまた若い執事が待機しておりピタッと執事の前に横付けした馬車の扉を最低限の音で開けるのである。これぞプロの技!!


「さあ着きましたよ。どうぞお降りくださいませ」


ミヒャエルは掌を出口の方に向け、俺達に降りるように促す。

ではお言葉に甘えまして、出口方面にいた俺から降車する。すると扉を開けてくれた若い執事がようこそと挨拶してくれた。こちらもどうもどうもと返し眼前の建物を見上げてみる。


いやはやこれまたごりっぱ!!


あちらの世界みたいな高層建築物こそないものの鉄筋コンクリート製4階建てビルくらいの高さはある。しかも現代建築ではもう作られないであろう立派な意匠が建物のあちらこちらに施されており豪華さを演出している。


「うわあ⋯立派やねえ⋯」


ルゥと二人でポカ~ンとただ建物を見上げる。我々のような一般人が入って良いものなのか?

こういう所って片手に小型犬、身体に毛皮のコート、唇にべったりルージュの有閑マダムしか来ちゃいけねー場所なんじゃねーの!?


等と気後れしていたら、建物入り口から知った顔が出てきた。アルベルト氏の登場である!!


「大変申し訳ございません!!本来ならば私もこちらでお出迎えしなければならないはずでしたのに。本当によく御出でくださいました。ルゥシエル様それに⋯⋯ん⋯⋯あれ?あの⋯どなた?イルマ様は?」


大抵の事では動じてはならない執事が動揺してるぞ~!!中の人はこんな感じなんだよ!!ちくしょー!!


そこに颯爽と現れアルベルト氏に耳打ちをするミヒャエル。アルベルト氏の顔が驚きの表情になる!!


「え、貴方様が⋯イルマ様ですか!?あの⋯何と申しますか⋯大分⋯コンパクトになられましたな⋯」


コンパクトねえ。中々面白い表現を使うでは無いか!!なあアルベルトさ~ん!?


「まあ、確かにあの大柄なギアの中から小さい人が出てきたらそれは驚きますよねえ!?」


「おお!!サテラ様!!いや貴女様がいらっしゃるという事は間違いなくこちらの方はイルマ様ですね。とんだご無礼を⋯」


「いえ、縮んだこちらが悪いのです!!そうですよねイルマ?」


「あっはい。そーね」


デジャビュ~デジャビュ~!!


「では皆様、こちらへ」


アルベルトさんに促され重厚な扉を潜り玄関に通された。

おおう!!俺ん家の敷地くらい広い玄関!!そんで所何処に飾られている周りの雰囲気を壊さない程度のデザインに抑えられているが、間違いなくお高いであろう調度品。眼前にはまた公共施設に設置されている様な広大な幅の階段!!その階段から綺麗なおべべを着ていらっしゃるお嬢様とメイドさんが降りてくる!!数日しか開いていないのに随分とお久しぶりな気分にさせられるのは何故だろうか?


「イルマ様、ルゥシエル様、サテラ様、よく御出でいただきました。ってあれ?あの方はどなた?イルマ様は?」


は~い、デジャビュ~デジャビュ~!!


「お嬢様!!こちらのお方がイルマ様でございます」


もう拗ねちゃおうかな~ッと思ったその刹那!!アルベルトさんがお嬢さんに説明をしてくれた。

ここはこのビッグウェーブに乗っかるしかねえ!!


「はいど~も~!!イルマの中の人で~す!!」


少々の沈黙が空間を支配する。


「兄さん⋯中の人って⋯」


「貴方は何を言っているのですか?」


乗っかった結果がこれだよ!!


「あ⋯そうなんですか!?あの⋯何と申しますか⋯とても可愛らしい方ですね」


「あっ、そうですか⋯それはどうも⋯」


可愛らしいねえ⋯男だからか可愛いと言われてもあんまうれしくねえなあと愛想笑いなど浮かべていると。




「あらいやだわ私ったら!!殿方に対して可愛らしいなど!!」


「あ、いや、お気になさらず⋯」


「そうですよ。気になさらず結構です。この男、こんな顔して結構がさつですから」


「そうえ!!男は狼なんやから一々気にせんよなぁ兄さん!!」


「男は狼って⋯使い方間違ってない?」


「そうなん?狼みたいにカッコよく見たいな意味ちゃうん?じゃあ本当に意味はなんえ?」


「本当の意味!?そりゃ男というもんは股間のアーケードスティックと理性との境界で常に葛藤をですな⋯」


「コホン」


我々の会話に割り込むようにメイドのアメリアさんが咳払いをする。確かにお嬢さんの前で行うようなコンバセーションでは無いな。こりゃ失敬!!


「あーけーど?」


あ、時すでに遅し!!お嬢さんの耳に届いてしまった様です。


「お嬢様!!旦那様がお待ちになっておられます!!皆様方を早急にご案内くださいませ!!」


我々の猥談からお嬢様の興味を軌道修正すべく、大きな声で話すアメリアさん。すんません!!ご苦労をおかけします。


「ああ!!そうね、ごめんなさい。では、こちらへどうぞ」


お嬢様に促され階段を上り彼女とアメリアさんの後に続く。俺達の後ろにはアルベルトさんが付いてくる。ミヒャエルとは玄関でお別れだ。さらば!!お前さんの濃ゆい顔は当分忘れられそうにないだろう。

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