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他人から幸せに見えてる人もそれはそれで苦労している訳で⋯その1


「はい⋯ウチらがそうですけど⋯」


フロアにいる大体の人間の目がこちらに向けられる中、ルゥが遠慮気味に小さく手を上げると目の前の燕尾服をビシッと決めた背が高めの青年がこちらを向き、ずずいと近づいてくるとこれまた大きな声でしゃべりだした。


「おお!!貴女様がエルフのルゥシエル様ですね!!確かにエルフだ!!いやあ実にお美しい!!それでイルマ様はどちらに!?」


「それは⋯おーきになぁ⋯」


近接大声量に引き気味のルゥさんを横目に俺もまた小さく手を上げる。


「はーい!!僕で~す!!」


青年は返事をした俺の方を向くと何やら怪訝そうな顔をする。あれ?何か不備がありまして?


「むむ!!貴方様がイルマ様であらせられますか?いやあ、お聞きしていた風貌と大分違っていらっしゃる?黒き鎧をまとった長身の方と上司からは伺っておりますが⋯⋯貴方⋯ちんちくりんでいらっしゃる。本当にイルマ様でございますか!?」


うっさい&失礼な奴だ。確かにギアを装着したら2メートル近い長身だ!!

だけど残念ながら中身はこれなの!!仕様が無いの!!


「兄さん⋯冒険者証みせたらどないえ?」


「そうですね⋯それが早いかと」


サテラの声に青年が反応する。


「むむ!!今のは妖精さんの声ですか!?上司から聞いております!!なんでもイルマ様は妖精さんと契約を交わしているとか!?いやこれは大変失礼いたしました!!数々のご無礼どうかお許しください。(わたくし)はラズール家の執事でミヒャエルと申します!!我が主人の命により貴方様方をお迎えにまいりました!!外に馬車を待たせてあります故どうかわたくしめと共に我が商会においで頂きたい!!」


いみじくもサテラさんのお陰で俺の身分が証明されたようで良かった良かったと思ったら大間違いなのよさ!!おまえ⋯ちんちくりんって言ったよな!!言ったよな!!俺のこのどす黒い感情をどこにぶつけてくれようか!!


俺はミヒャエルに対し犬の様に唸りながら手でペガサス座の軌跡を描く。

ミヒャエルよ!!貴様は小宇宙(コスモ)を感じた事があるか!?俺は今さっきどす黒~いのを感じたぞ!!

今すぐ幻想(ファンタジー)にしてやる!!さあ喰らうがよい!!流星の如き拳を!!


「兄さん何してるん?行くえ!!」


と言うとルゥは奴の案内で外に出て行ってしまった。


なんだよ!!俺馬鹿みたいじゃん!!っていうか馬鹿じゃんちくしょう。行きます行けばいいんでしょ!!とルゥの後に続いた。


外に出ると、俺達がお嬢さんとお姉さんと共に乗った(俺は牽引)のと同型の馬車が用意されておりミヒャエルが馬車の入り口を開けてこちらを待っていた。

ルゥと二人、馬車に乗り込むと奴もいっしょに乗り込み御者に馬車を出すように指示した。


馬車はゆっくりと進み始め商業地区の方に走り出す。



しかしなんだ⋯商業地区までそんなに距離ある訳じゃないから割とすぐ着いちゃうぜこれ。

そんな短い間でもミヒャエルはこちらに話しかけてくる。俺は奴との会話を相槌を打つ程度で必要最低限に抑える。さっきの事は忘れてねえよ!!


どうやら奴は俺を無口な野郎判定したらしく会話のターゲットをルゥに移す。

彼女との他愛無い会話をしているうちに見た事ある立派な建物が見えてきた。ああ、あそこでアルベルトさん達と別れたんだっけか。いやいや、短い馬車の旅であったわ。んで馬車が止まると思ったら通過。


「あれ?過ぎちゃったよ?」


考えていた事が思わず口に出てしまった。黙りこくっていた奴のいきなりの発言に二人がどうした?って感じで顔をこちらに向けた。


「いえ、本日は店舗ではなく本宅の方へお連れしろとの事で、只今居住地区へ移動しております」


「は~そうですか!!街の中心の方へですか」


「はい。方向で言えば中心の方ですね」


俺は馬車の外へ眼をやる。すでにあの騒がしい商業地区を抜けており周りには小さいながら小綺麗な建物が並んでいた。あの村とは雲泥の差である。


「綺麗な家やねえ」


きちんと区画整理され綺麗に並んだ家を見たルゥがつぶやく。確かに。なんだかあっちの世界の住宅地でも見ているようだ。しかもデザイン的にはこちらの方がお洒落さんである。


「中々こじんまりとしたお洒落さんな建物が並んでいるじゃあないですか。こちらにはどういった方々が住んでおられるので?」


「はい。この周辺には主に商業地区にお勤めになられている方々が御家族と共に居住なさっていますね。我が商会に勤めている方々も住んでおられますよ」


「でもあれやねえ、あの大きさの家やと手狭な気もするけどなぁ~」


「確かにそうですね。ただこちらに住んでいる方々の殆どはご両親と同居なさっていませんのでこの規模の住宅で十分と考えているみたいですね」


「核家族化ですね。こちらでも都会の状況はあまり変わらないようですね」


「ん?さっちゃんとこもそうなん?ウチの里は一族で住むのが当たり前やったからなぁ~都会はやっぱ違うんやねぇ~」


「どこの世界も同じみたいですね」


「我々市民の間では当たり前になりつつある家族形態ですね。貴族の皆様方は伝統を守られているようですが」


う~ん、異世界でもあっちと同じ現象が起きている。ところ変われば品変わると言うが人間、ところ変わってもやってる事は同じらしい。



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