用意より後片付けの方がめんどくさいのは何故だろう? その5
「泣き顔が気持ち悪いのでさっさと泣き止んでいただけますか?」
先程まで俺に涙を流させた胸に宿る郷愁はどこ吹く風!!我が心明鏡止水!!すーんってなった!!すーんって!!ナノマシンでやりやがったねコイツ!!
「きさまああ!!俺に郷里に対し思いを馳せる事もさせねえ気か!!」
あ⋯またすーんってなった⋯。
「郷里を思う事も泣く事も結構ですが今では無いでしょう?そう言う事は任務を終了させてからお願いします」
「終わってるでしょうが!!」
「街に帰還し報酬をもらうまでは終わりではありませんよ。日本には遠足は家に帰るまでが遠足という格言があるではあるのでしょう?」
「それって格言だったかぁ?」
「日本の偉い人が良く使う言葉だと」
「えらいか?校長教頭学年主任?えらいのかなあ?う~ん⋯⋯」
「それよりグーグレの画面を開きましたが、何か検索されるのですか?」
「ああ!!そうだった!!って検索バーへの入力はどうしたらええんじゃ!?」
「仮想キーボードを出しますか?それとも音声入力?」
「キーボードを」
俺のちょうど胸部前方の空中にキーボードが表示された。さっそく指を使い検索バーをタッチするとカーソルが現れた。そこにGOメールログインページを表示させIDとパスワードを入力する。
するとメインページに入ることが出来た。このアカウントは生きている。
っていうかあちらでは俺の扱いどうなっている!?
「これが貴方の居た時間のメールシステムですか。やはりずいぶんとクラシックですね」
「そりゃコンビニ行くぐらい簡単に宇宙に出られるアンタらと違ってこっちはまだまだ地球の周りに一桁台の人間を送り込む事しかできんからな。技術の差は歴然よ⋯⋯う~む⋯しかしこちらの世界に落ちたあたりで受信が止まっているなあ⋯⋯友人のメールや広告迷惑メールもすっぱり止まってやがる。いったいどうなっているのやら⋯試しにメールを送ってみたいが誰にどんな文言で送ればいいのやら⋯⋯多分俺いなくなってるだろ?そんな奴からメールがきたら混乱するだろうしなあ⋯⋯」
「ご両親には送らないのですか?」
「そうねえ⋯そうなんだよねえ。生きてる事を伝えたい気持ちもあるがこの状況をどう伝えたら良いのか全く分かりません!!まあ⋯先送りという事で⋯」
「そうですか。それで、知りたい事は知れましたか?」
「あと一つ!!これは重要!!」
検索バーに再び入力。世界最大のECマーケット、zomahon.co.jpに接続する。
ログイン画面にて必要項目を打ちユーザーページに入るとこちらもアカウントは生きていた。
「これが21世紀初頭頃のECサイトですか?これは興味がありますねえ」
サテラがzomahonに興味を示す。彼女にとっちゃ古い商店を眺めている感じなのだろうか?
「さて問題はここからだ⋯⋯買い物をするとどうなるか⋯⋯俺にもラノベの女神様が微笑んでくれると良いのだが⋯⋯」
缶入りコリャ・コーラ24本入りをカートに入れ注文を押す。
「サテラ!!ストレージやメニューの数字に変化はあるか!?」
「ストレージに不明物体が追加、それと⋯ああ、お金が減りました⋯これは売買ができていると言う事でしょうか⋯⋯不思議すぎます⋯⋯正直信じられません」
「俺も信じられんが⋯どうやら女神のご加護があったみたいだな。サテラそいつの中身は何だ!?」
「お待ちを⋯コリャ・コーラ350ml缶24本箱入りだそうです⋯⋯ああ⋯アメリカ文化の象徴⋯どうしましょう?私混乱しています!!」
「おいおい!!AIは余計な思考をしないのでは無いのか?あんま考えんなや。こう言うもんなんだよ多分な」
「だって!?物体がどこかもわからない所からいきなりですよ!?地球に繋がってる?何なの!?」
泣きそうな声である。まあこれも感情を模倣した物だろうが⋯⋯合理性と整合性の塊であるAIには物理を超えた事象が受け入れられないみたいである。全く!!柔軟性がないなあ〜。やっぱりシンギュ⋯ギョ⋯シンなんとかは遠い様だな!!
「サテラよ⋯⋯ドントシンク⋯フィール⋯⋯」
「ああっ!?何言っとると!!テキトーな事言っちゃあかんだっちゃ!!」
あ⋯バグった⋯。
「ヘイベイビー落ち着け落ち着け!!これはこう言うもんだ!!異世界いうたら主人公に都合の良い現象のひとつやふたつあるもんだ。大体魔法がある世界だぜ?その時点で⋯なあ⋯俺達の常識なんか通じんのよ!!お前さんも優秀なAIだっちゅう〜ならアップデートせんといかんわ」
「アップデート⋯⋯よし⋯これはあれよ!!いい事なの!!地球と我々を繋ぐルートが出来たのよ⋯この現象を解析すれば地球帰還のきっかけを得る事が出来るかもしれない⋯ふふふ」
ちょいと怪しいが持ち直したかな?しかし見事なバグり様だったな。正確性を重んじるAIに超常現象は毒なのかな?UFO、幽霊、UMAとかの話題振ったら一体どうなるのかな?
コイツの事だから、自然現象、見間違い、幻覚とかで押し切りそうではあるが。
「まあそういう事だ。せっかく得た機能だ。ありがたく使わせて頂こう。君はもっと異世界モノをラーニングしたまえ!!しかしこれで異世界転生における大部分の問題を克服出来たな!!」
「問題!?⋯⋯問題とは?」
「ああん?ああ!!食いもんの事だよ!!いくらこちらの料理が美味くてもアチラの味を忘れられる訳ないだろう!!レーションがあるにはあるが種類に偏りがあり過ぎる!!暫くしたら絶対にアレが食いたいコレが食いたいになるね!!この世界にカップ麺や炭酸飲料あるとは到底思えない!!」
「人間の食へのこだわりは凄いですからね。コレばかりは私ではわかりません」
「そうなの!!そのストレスたるや考えたくも無い!!」
「はあ⋯⋯まあ問題を解決出来たのは僥倖でしたね。あとはルゥと合流して子供達から報酬を頂きホテルのチェックアウトを済ませて冒険者ギルドに行くだけですね!!」
「ああ⋯そうね⋯」
やる事まだまだある⋯⋯我が睡眠への道は遠い⋯⋯




