物語に出てくる村には大体因習があって巻き込まれるまでが標準なのです。
さて、今回ワタクシがとりいだしたるはMG762という機関銃でございまして世間一般からは分隊支援火器として知られておりますな。
え?世間一般!?
まあ良いとして、この銃器の役割は弾をばら撒き味方の進軍を支援したり逆に撤退を援護したりと敵を直接ぶち殺すと言うより、味方のムーブを助ける為の銃なのでありますが⋯⋯某一人で第三次世界大戦を引き起こすムキムキマッチョマンの元コマンドとか某有名ベトナム帰還兵が機関銃を使い敵をバリバリ薙ぎ倒して行ったおかげで間違ったイメージが付いてしまったと某情報集積サイトに載っていました⋯しかしながらかくいうワタクシもその口でございまして今回是非再現したい旨我が脳内に発表いたします。
さて、柵の外を見てみますとビシッと綺麗に並んだゴブリン達がこちらを睨んでおります。まるで西洋時代劇に出てくる槍を構えたローマ兵達の如く見事な隊列だ。
距離おおよそ700メートル。
しかしこんだけ密集してくれているのであれば群れの中央目掛けてぶちこめばかなりの数に当たるのでは無いかな?
思いたったが吉日!!さあやってみよう!!
標準を合わせ引き金を引くと炸裂音と共にエネルギー弾が発射され、聞き慣れない音に周りの村人が驚きの表情を浮かべる。
「なんだ!?なんの音だ!?」
「雷!?」
「おい!!見てみろ!!」
血煙を上げながらゴブリン達がいろんな部位をブチ撒けながら倒れて行く。より多くの目標に当たる様に銃口を動かし銃弾を広くばら撒く。
面白い様にゴブリンが倒れて行くがなんかおかしい⋯⋯なぜこんだけ倒されているのに反応しない?
と、思ったら動き出した。群は中央から二手に分かれる。
片方の数が多いなあ⋯村人じゃ手に余りそう。
「目標二手に分かれました。数、右側18、左側7。双方こちらを迂回しつつ側面より接近してくる模様」
「了解。数が多い方は俺がやる!!もう一方はそちらで頼む!」
「わ⋯わかった!」
今まで見た事もない銃撃に戸惑う村人達だが、そこは戦い慣れた奴ら。すぐに自分たちの目標に向かい始めた。
村人達は投石と弓矢で応戦しているが弓矢を扱える人数は少ないらしく大体の村人は石を投げていた。
石が当たったら痛いのは確かだが、うまく当たらん限り敵を倒すことはできんだろう。
このままでは敵の侵入を許してしまう事は明白!!
だが今、俺は片方の相手をしなくてはならん!!こちらが片付くまでがんばれ!!
俺は兎に角ゴブリンに向けて弾を打ち込んでゆく。各種センサーからの情報ではどんどん数を削れているのが見て取れる。サテラが残りの目標数をカウントする。よし!!もう少しだ!!
恐らく最後の一匹であろう固体の頭に弾が当たり、首から上が綺麗に弾け飛んだ。
弾数を稼ぐために、銃の出力を絞っていたのだがゴブリンに対しては十分な威力だった。よし!!
撃ち漏らしは無いか、今一度センサーで確認をする。
「動体反応ありません」
いろんな部位が転がっている血濡れの大地に動くものは無い。よし!!次行ってみよー!!
機関銃のエネルギーカートリッジの交換をしながら、村人たちが応戦している場所に向かう。
現場に到着してみると、ゴブリンと村人の距離が結構な縮み具合!!村人の奮闘によりそれなりに数を減らしていたが⋯こりゃ接近戦不可避だな。
となると機関銃はまずい……ここで考えなく撃ったら村人も穴だらけだ!!
「サテラ。ハンドガンだ」
「了解」
機関銃を背部アタッチメントに装着し、ストレージからサテラチョイスの拳銃が取り出される。M9Eというオーソドックスなハンドガンだ。
村人を援護するため走りながら銃を構え、柵を飛び越えいまにも村人に襲い掛からんとしているゴブリンに一発撃ち込む。弾丸が側頭部に当たり反対側から中身が吹き飛ぶ。
柵外の残りのゴブリンがこちら気付き、俺の攻撃を回避するために散開する。とりあえず一番近い奴に撃ち込み一体を倒す。
残りのゴブリンは後三匹。内、射撃可能だった二匹を射殺。
後の一匹は死角に入ったため逃してしまった。そいつは柵内の侵入に成功したが、村人の矢に打ち抜かれデストロイ。
こうして群の殲滅に成功したのであった。やったね。
先程助けた村人が驚いた様な顔をして話しかけてきた。
「あ…あんた、一体何したんだ?ゴブリンの頭が吹っ飛んだんだけど…」
「それは秘密です。まあそれはそれとして、生き残ってよかったな!!」
「あ…ああ、そうだ!!まずは礼を言うべきだった。すまない。ありがとな…」
「おい!!大丈夫か!?」
他のゴブリンを迎撃していた部隊がこちらに合流してきた。その中に先程言葉を交わした村人がおりこちらに声をかける。どうやらこの村人はリーダー格らしいな。つまりは陽キャだ…。
「ああ、こいつのお陰で片付いたよ……。全く信じられねえ……あの数のゴブリンを前に生き残れるなんて……」
「ああ…俺もだ……たくっ!!あんたも人が悪いぞ!!こんなに強いんだったら最初から言ってくれよ!!」
「あん!?俺は謙虚が服着て歩いている様な男と一部では呼ばれているんだぞ!!力をひけらかす男はカッコ悪いっておばあちゃんにも言われているしな!!それに元々この件に首を突っ込むつもりは無かったのよ。ただ相方の気まぐれでここにいるだけで……」
「少し黙ってください!!」
俺の愚痴をサテラが遮る。おい、どうした?ミスポンコツ。
「なんじゃい!?」
「UAVをこちらに呼び戻し先程敵性勢力が発生した付近に残存している物が無いか捜索した所、森の中に移動体を複数キャッチしました。反応から見てゴブリンかと…」
「なに!?まだいるってか!?おいあんた!!」
俺はゴブリンの生態についてをリーダー格の村人に聞いてみる。
「なんだ!?いきなり!!」
「普通のゴブリンの群れって規模はどれくらいなんだ!?一つの群れで100匹超える事なんてあるのか!?」
リーダー格の男は戸惑いの顔をしながら答えてくれた。
「いや…いままで100匹を超えた群れなんて確認されていないはずだが…少なくて30…多くて60強……なんでそんな事聞く……?」
リーダー格は何か薄々わかってそうな顔をしているが、答えてやるのが世のなさけよ……。
「いやね…うちの妖精が森の中にゴブリンがまだ複数いるって言うからね…」
リーダー格、苦しそうに頭を抱える。
「ああ……くそっ!!そうか…そうだよなあ…今までの奴と今回のを合わせれば余裕で群れの数なんて超える。こりゃもう普通じゃあない。まるでゴブリンだけのスタンピードじゃあないか…くそっ…とりあえず村長に報告を…もうすぐ陽が沈む⋯⋯道が見えるうちに身の振り方を決めんと……俺は村長の所へ行ってくる!!少し頼むぞ!!」
リーダー格が持ち場を離れようと歩き出すが、俺もルゥの様子が知りたいので聞いてみる事にする。
「ああ、ちょいと待って。ウチの相方にも知らせんといかんから、怪我人が集まってるとこはどこにある?」
「一緒にこい!!怪我人や女子供は教会に集めている。うちの村で一番頑丈な建物だ。そこに村長もいる」
リーダー格の背後について教会を目指す。ここで周りを改めて見回すと、まあ本格的に異世界探訪になってきたな。周りの家は石と木でできているし、煙突もあるから煮炊きは竈門であろう。屋外にあるトイレは汲み取りで間違い無し!!
もちろん水道など無いから備え付けの風呂なんかも無え!!昨日までいたあの街のあのホテルが先進的すぎたのだろうな。この世界ではコレが一般的な村なのであろうか?
等と周りを観察しながら歩いていると、何やら屋根にそれっぽいシンボルがある立派な石造の建物が目に入った。
「あれが教会だ。村人の寄付と教会からの補助金で建てられた恐らく村で唯一まともな建物だ。故に何かあったら教会に逃げ込めってのが俺達の間の決まり事なんだが⋯」
「ほーう。つまりそこいらに建ってる家々は適当に作られたと?」
「ああ。大体自分らで建てたものが大半だな。この村にゃ大工は居ねえからな。呼ぶ金もねえ。だったら自分らでなんとかせんとな」
「そいつは⋯スリリングな事で⋯」
こりゃ地震があったら村は壊滅確定だな⋯まあ⋯地震がこない事を祈ろう⋯。教会の扉の前に着くとリーダー格が扉を叩きながら名乗った。
「おい。俺だ。開けてくれ。村長に話がある」
「ちょいと待っておくれ⋯」
扉の向こうから女の人の声がしたと思ったらゴトリと音がした。恐らくかんぬきでも抜いたのだろう。
ゆっくり扉が開いて中から中年女性が顔をだす。
「ゴブリンはどうなったんだい?」
「ああ、この銅三級が殆ど片付けてくれたよ。それより別の問題が発生した。入るぞ」
「お邪魔しまーす」
薄暗い教会の中に入ると祈りを捧げるために並べられた椅子には避難者達が不安そうな顔で座り込んでいた。
殆どが子供と女の人。それに怪我人か⋯奥にはこの世界の神様と思われる像が蝋燭の灯に照らされ中々の存在感を放っていた。どうして下から光を当てられると、人の顔って怖くなるのであろうか?
そして、その光を頼りにうちの相方が怪我人の手当てをしているのが見えた。
リーダー格は女の人に連れられて村長がいるであろう奥の部屋に行ってしまった。
ジョルドとパウロがこちらに気付き、人をかき分け走り寄ってきた。
「おっちゃん!!」
二人同時に俺をおっちゃんと呼ぶ⋯⋯俺はまだ24歳なのだが⋯⋯でも子供からすりゃ大人はおっちゃんかあ⋯。
「ゴブリン出たんだろ!?やっつけてくれたんだよね!?」
「ああ、ちゃんとブッコロがして参りましたよ!!とりあえずさっき襲ってきた群れは排除した」
「おっちゃんやっぱ強いじゃないか!!これでもう危ない無いんだね!?」
「でもマクドネルが難しい顔して奥行ったよ?おっちゃん⋯何かあるの?」
楽天的なジョルドに対してパウロはよく人の顔を見ているもんだ。しかしあのリーダー、マクドネルっていうの。へえ〜。
「ああ⋯まあ詳しい話は⋯その⋯マクドネルに聞いてくれな⋯⋯んじゃあ、ちょっと失礼して⋯」
俺はルゥの方へ足を進めるとあちらも気づいた様で疲れ顔で声をかけてきた。
「あ⋯兄さん⋯首尾はどうえ?」
「まあまあだな。そっちは?」
「見ての通りやわ⋯手持ちの薬も無くなったし包帯も足りないわぁ。そこら辺の布をかき集めて何とか処置はしたけど満足な手当はできんかったわぁ⋯⋯」
教会の奥。本来なら神父さんが村人に対して説教の一つでも垂れているであろう開けた所に怪我人達が横たわっていた。お世辞にも綺麗とは言えない色々な布が細く破かれ繋がれた物を頭や腹や足などに巻かれた人達が苦しそうにうめき声をあげている。こりゃ見てらんねえな⋯。
「そうか⋯⋯こちらも掃討は出来たのだけどなぁ⋯どうもこれで終わりと言う訳でにはいかんらしい⋯サテラが言うにはまだ控えのゴブリンが居るんだと⋯そんでマクドネルが言うには⋯⋯あ、マクドネルってここの村の戦闘班長みたいな奴ね。んでマクドネル曰く今回の襲撃でゴブリンの群れの平均数を大幅に突破したらしいのよ。つまりは普通じゃ無いんだって!!そんで今、戦闘班長殿が村長に相談しに行ってるんだがね⋯⋯俺らもすぐ動ける様にしとかんと⋯」
「え!?逃げるん?そんなのあかん!!怪我人を放ってはおけんよ!!」
「選択肢の一つとして頭の隅でも置いといてくれ。俺も子供達に大見得を切った手前簡単に逃げ出す様な真似はできんのよ⋯」
サテラが蛮勇二人に対し忠告。
「ルゥ、イルマ、お気持ちはわかりますがあくまで御自分らの命を優先した行動をとって下さい。良いですね?特にルゥ!!貴女の人命救助に対する使命感には感服しますが自己犠牲は無しにして下さい!!精霊魔法などもってのほかですよ!!ここでアルベルトさんを治療した時の様に倒れられては元も子もありません」
「むう⋯わかっとるえ⋯」
不満げな顔をするルゥ。まあサテラの言う事ごもっともですな。他人を助けて自分が死んじまったらそれこそ目も当てられん!!そこに怪我人の様子を見に来た神父さんが俺たちに話しかけてきた。
「お疲れ様ですルゥシエルさん。貴女のおかげで怪我人達の治療ができました。正直、私の技量ではあの怪我に対処する事などできませんでしたから⋯」
「そんな事ないえ⋯⋯神父さんの処置が無ければあの人ら死んでたわぁ⋯」
「でもこのままでは⋯⋯」
「そうえ⋯もっとちゃんとした処置をせな危ないわぁ⋯」
「ふうむ⋯ここから動かして、街の医者か教会の神聖魔法使いに見せられれば良いのですが⋯何やら村長らの話によると森の方が怪しいと⋯」
「ああ⋯どうもゴブリンがまだいるみたいなんですわ。群れ一個越えのゴブリンは討伐したはずなのにまだ湧き出て来やがる」
「確かにそれはおかしいですね⋯特別多い群れが現れたと言う事なのでしょうか?」
「かもしれない⋯自然界にゃ人間の予想を超える事なんて多々起こるもんでしょ?」
「確かに⋯でもそれはまずいですね⋯村長はどうするおつもりなのでしょうか?」
噂をすれば何とやらだ。奥の部屋から村長とマクドネルが出てきた。まあ何というか、お二人とも浮かない顔で⋯。
「みんな聞いてくれ!!今から村長が大事な事を話す」
マクドネルが皆に聞こえる様に声を張り上げた。皆の視線が村長に向く。
「まず辛い中、皆よう頑張っている事に心から感謝する⋯。マクドネルよるとゴブリンは男達とそこにおられる冒険者によって撃退する事が出来たそうじゃ⋯」
村長の話に皆安堵の表情を浮かべ喜びの声も上がった。しかし村長の顔は依然険しいままだった。
「みんな静かに!!まだ話は終わってない!!」
マクドネルがざわついた皆を制す。静寂が戻ると村長が再び話し出した。
「撃退出来たのは良いのじゃが⋯どうやらまた新しい群れが発生した様なのじゃ⋯」
村長から発せられた意外な言葉に村民は動揺を隠せない。皆、不安を口にする。
「何だって?』
「そんなに大規模な群れなの?そんなの村で対処なんかできっこ無いじゃない!!」
「ゴブリンの孕み袋になるなんて嫌!!」
ここにいる村民。主に女性達から悲鳴にも似た声が聞こえる。
ファンタジーラノベではお馴染みのゴブリン異種族で繁殖はこの世界でも適用されているみたいだ。
となると⋯この世界の女性も中々苦労が絶えそうもないな⋯。
「静かに!!静かに!!今から今後について話す!!黙って聞くように!!」
「我々は一旦村を出てドウルに移動しようと思う。皆も思っている通り、もう我々の力では対処しきれん。警備隊の派遣を願い出なければならん。幸いな事にこの村はドウルとそんなに離れておらん。徒歩でも数時間で着く事ができる」
「奴ら追いかけて来るんじゃないのかい?逃げ切れるの?」
ごもっともなご質問だな。逃げる相手にゃ追撃ってのが世の常。まあ時々罠とかあって負けるパターンもあるけど、今回の相手はゴブリンだし、アイツら殺るきマンマンだし、追いかけてくる事間違いないね!!うん!!
「ああ、皆が安全にドウルに着けるように男達が村に残りゴブリンを抑える!!村長!!街に着いたら警備隊の出動要請を頼みます。さあ陽が暮れるぞ!!急いで支度を!!荷物は最小限しか持って行けないぞ!!」
「これは大変だ!!」
と言った神父さんが奥の部屋に入って行き、皆が用意に動き出す中ルゥが声を上げた。
「ちょっと待ってや!!今動かしたら危ない怪我人もおるんやえ!!その人どうするん!?」
マクドネルと村長が苦しい顔をしながら口をひらく。
「正直ワシらに残された選択肢は多くない⋯」
「どちらも危険だが⋯一緒に行ってもらうか、ここに残ってもらうかしか無い」
「そんな!?動かしたら危ないって⋯うちの人よね!?」
一人の女性が悲痛な声を上げ、頭を厳重に布で巻かれた男に駆け寄った。
「ああ⋯あんた⋯どうしよう⋯あんたをおいていくなんて出来ない⋯」
男が何やら女の人に力無い声で話している。収音機能で拾ってみると良くある自分を置いてけとか君は生きろ的な?そんな感じだった。
まあでも取れる選択は一つだよね。
「ここにいても動かしても死ぬ確率が上がるのなら、より最良な方を選ぶべきだ。そして俺思うに最良なのは街に向かう事だと思う。とりあえず死ぬ確率を低くする為にウチの相方を同行させるよ」
「兄さん!?」
「そうですね。それがよろしいかと」
「さっちゃん!?」
「だって君戦闘用の魔法無いんでしょ?だったらここにいても意味無いじゃん!!」
「そうですよ。貴女の能力が発揮出来るところは後方であり前線ではありません」
「でも、ウチ兄さんらの相方え!!一緒にいなきゃダメや⋯それに怪我したら誰が診るえ!?」
「大丈夫ですよ。私がギアを動かして対処します。それに貴女の腕にある端末を通して我々と常に通信出来ますからほぼ一緒にいる様な物です!!」
「うう⋯わかったわぁ⋯今ウチに出来る事をやるえ⋯⋯兄さん、サッちゃん、きいつけてな⋯怪我しちゃダメやえ⋯」
「大丈夫だよ。この鎧を見なさい!!非常に頑丈だからさ。ゴブリンの攻撃なんぞ通るもんかい!!」
「イルマの言う通りです。泥舟に乗ったつもりで安心して彼らについて行ってあげて下さい」
「泥舟⋯?それ沈むんじゃね?」
「あら!?私とした事が!!最近タヌキとウサギの物語のデータを学習したもので」
「カチカチ山を何故ラーニング!?まあいい⋯俺らは大丈夫だから⋯⋯そっちは頼む」
「うん!!わかったわぁ!!」
「それでは行動開始ですね!!と、その前に」
サテラは怪我人達を動かすにあたり、患者の負担を軽減する為に外科手術用キットの中に入っていた痛み止めと化膿止めを注射した。もちろん注射をしたのはサテラに操作権限を一時的に渡したソルデウスである。まるで操り人形になった感じだった。やーねー!!
「さっちゃんそれは何?」
「痛みを一時的に緩和する薬と、傷口が膿むのを抑える薬です」
「すごい!!そんな薬があるん!?」
「ご質問は後で、10分程で痛みがひき始めると思うのでそれから動かして下さい」
「わ⋯わかったわぁ!!」
「んじゃあ、俺達も行こうかね!!マクドネルくん」
「おう!!あっちにいる奴らにもこの事を話さにゃならんからな!!それでは村長⋯ご無事で!!」
「ああ⋯そちらもな⋯冒険者殿⋯頼みましたぞ⋯」
俺は無言で村長に会釈する。慌ただしく退避準備を進める中によく見たちびっ子が二人。
「おっちゃん!!父ちゃんを守って!!」
「おっちゃん!!がんばれー」
「うむ!!」
ルゥ含め三人に手を振り教会を離れる。そういえばあの二人の父親もあそこにいる訳か⋯⋯また新しい依頼が増えてしまったな⋯⋯そんで道がわからないのでマクドネルに着いて行き、先ほどまで戦っていた柵をすっかり日が落ちた道を歩き目指す。
「マクドネルくんちょっと聞きたいんだけど?」
「なんだ?」
「この案、前線の奴らは納得すると思うか?」
「わからん!!わからんし納得もせんかもしれん!!ただ逃げる奴は一人もいない事を俺は信じている⋯」
「野暮な事を聞いたな⋯悪かった⋯」
「⋯⋯⋯」
戦い続けて来た男達に対して愚問だったな。さて柵に着くと火が煌々と炊かれあたりを照らしていた。
ドウルにあった街灯は謎テクノロジーで光ってたけど、ここでは普通に松明なのね。
「様子は!?」
「お!!マクドネル、動きは無いのだが見てみろ。暗くて見えにくいのだが、どうも森の中で蠢いてる奴らがいる⋯」
どれどれ?私も彼らからちょいと離れた場処見てみましょうかねと。なんか嫌な予感するので⋯森の位置はこの村より少し高い丘の上にある。つまりここから見えるのは森の境目付近だけなのだが、そこにセンサーを向けてみますと⋯いますねえ〜木々に隠れてウジャウジャいますねえ〜。
「サテラ、UAVからの情報は?」
「樹木のお陰ではっきりはしませんが、先程の群れより多数確認されます。数は⋯現時点でおおよそ320⋯22。以降増殖中です」
「増えてるだって!?ゴブリンってのは森から生えてくる物なのか?ソ連の兵隊じゃあるまいしどうなってるんじゃ!?」
「一分間におおよそ4体の速さで増殖しています」
「発生地点を調べられるか?」
「障害物によりスキャニングが上手くいっておりません⋯⋯UAVの高度を下げてより精細に調査します」
「わかった⋯んで、ゴブリンが増え続けてる事みんなに言うか?」
「⋯⋯やめておいた方が良いですね。わざわざ士気を下げる様な情報を入れない方が良いでしょう⋯」
「そうね⋯」
俺はマクドネルくんのいた方を見ると男達が集まっていた。その中にはあの二人の父親もいる。どうやら先程教会で決まった事を話しているようだ。男達は皆複雑そうな顔をしていた。
「まあ、なんだ⋯決まっちまった事はしょうがねえな⋯」
「俺達は警備隊が来るまで粘ってればいいのか?」
「なあに⋯やることは今までと変わりねえべ!!ゴブリンをぶっ殺す!!そんだけだ⋯そこに背後には行かさんってのが増えただけだべな」
「しかし⋯守るのがうちのカカアとガキ達だろ?なんか張り合いがねえなあ!!どうせならどこぞの美姫でも守ってみてえもんだ!!ガハハハ!!」
ジョークに皆が笑う。ただ本当に笑っている訳ではないのは皆わかっているだろう。己を鼓舞し、恐怖心と戦っているのだ。俺は男達に近付いて行く。
「話は終わったかい?」
「おう!!三流冒険者!!向こうさんの様子はどうだった!?」
「三級だ!!あっちの事だが⋯いるぞ⋯⋯正確な数はわからん!!」
「よし!!みんな聞いたな!!俺達が倒れたら後ろにいるカカアやガキどもはアイツらの餌だ!!一匹も通すんじゃねーぞ!!」
マクドネルの檄にうおおおおおっと男達の掛け声が帰ってくる。士気が高いのは実に結構!!
ただ⋯もってくれるかなあ⋯⋯。




