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チュートリアルから難しいゲームはクソゲー

目の前に流れる小川を眺めながら、立ち尽くすギアと体育座りの俺。

何をやって良いのか全くわからない。

こういう時は、俺よりジーニアスなAI様にご意見を御聞きするのが良いだろう。


「どうしよう⋯今何したら正解?」


短い沈黙の後サテラが口?を開いた。


「そうですね。まずギアの扱い方を覚えましょう。それと同時進行で此処が何処なのか把握する必要があります。もしあなたの言う通り未知の世界だった場合、まずは生き残る事を考えなければなりません。そして我々の世界へ帰還できるかどうか、何故この様な事が起こったのか調べる必要があります。やる事は色々ありますが、まずはここから動きましょう」


「ああ、そうね。此処でぼ~っとしてても仕様が無い。うごきますか⋯」


重い腰を上げ立ち上がると、サテラがやりたい事を話してきた。

正直、行動指針を示してくれる事は今の俺には有難い。だって俺の頭の中いまだ絶賛混乱中で考える余裕なんて無いんだもん。また熊にあったらどうしようとか、森から抜け出られるの?とか、俺は生きていけるの?とか頭ん中グチャグチャさあ。


「さてイルマ、先ほど仕留めた熊を回収したいので先ほどの地点に戻ってください」


「ええ?回収?あんなでかいモノどうやって持ってくのさ?この俺の身体見なよ?どう見てもあの巨体を運べるような身体じゃないぜ?」


少し呆れたような声を出すAI様。正直むかつくぜえ。


「先ほどお使いになったストレージに収納します。貴方自身が運ぶ必要はありませんよ、おばかさん」


「むうぅ⋯」


くやしいけれどサテラさんの言う通り。おもわず声が漏れる。


「んでさっきの場所ってどこだっけ?俺別の事に気を取られていたから覚えてないぞ」


別の事とはもちろん先程来、我が股間とケツ間にあったアレらの事である。

ああ、忘れたい。


「大丈夫です。場所は私が覚えておりますので、このギアについていってもらえばなんの問題ありません」


「へいへい⋯」


そうして俺はサテラが操るギアの後に続く。しかしまあ、あらためて辺りを見回してみると深い森だ事。日の光も樹木の葉に遮られて全体が暗く、そこら中に生えている木々が方向感覚を狂わせる。こりゃ一回迷ったらやべえ事になるじゃない此処?と一人怖くなっていると先ほどの元熊がいらっしゃる場所に付いた。


「さてイルマ。先ほども申したように、まず貴方はギアの操作を覚えなければなりません。まずは歩く事はさきほど小川まで歩けたので飛ばします。物を持つ事、これを覚えましょう。おあつらえ向きにそこに転がっている熊の首と身体があります。これをストレージにいれてください」


目の前には先ほど良い角度で飛んで行かれた熊のフェイスが舌をびろーん出して空を見上げていた。

さっき俺が殺ったんだよなあ。いまいち実感がわかないが⋯。


「ギアを着て、熊をストレージに入れると⋯ギアを着ればあの巨体も持ち上げられる事ができるだろうし⋯もしかして簡単じゃねえ?」


「かもしれませんね。とりあえずやってみてください。訓練用ギアを選択します。これならソルデウスより扱いやすいので今の貴方にピッタリでしょう」


「おう!!たのまあ!!」


と、みがまえていると⋯なにもおこらない。おんや~っと思っていると。


「おかしいですね?訓練用ギアへのエントリーが拒否されました」


「はえ?」


良くわからんサテラさんの言葉に思わず間抜けな声が出る。

っていうかさっきから間抜け声しか出してない気がする。


「ほかのギアを⋯あら、これもダメ?面倒なので全機種に一斉にエントリーを出します⋯あれま?ソルデウス以外みんな拒否?イルマ⋯貴方、ギア達にいったい何を⋯?」


「ええ!?ギアに!!なにもしてねーよ!!っていうかほかのギアに触った事すらねえよ!!しいて言えばギアの中で大小ぶちまけました!!ああ、自分で自分の傷を!!また涙が出てきたよちくしょー!!」


「あらあらごめんなさいね。ちょっとした冗談のつもりだったのですが傷を抉ってしまいましたか。これは申し訳ない。人間は冗談で空気を和まし緊張をとるものだと思っておりましたので。しかしソルデウス以外に拒否されたのは事実です。原因究明は後程、今は訓練を優先します。」


次は人に優しい冗談で和ませて戴きたい。もう僕は悲しい思いはしたくないの。


「うう⋯まあ、ソルデウスは使用可能なのね⋯んじゃあ、それでいこう。んで、どうやって着るの?」


「ギア装着は音声認識で行います。ギア名称、もしくは型式番号にプラスしてアクティブと言っていただければ装着できます。もしくは緊急を要するとこちらで判断すれば自動装着を行います」


「なんか変身ヒーローみたいでワクワクすると同時に、なんかこっぱずかしいな⋯」


「あなたの羞恥心はどうでも良いので、早く装着してください」


このAI優しくない。心折れる前にもっと俺に優しくし下さい。どこぞのゲリオン主人公みたいに雨に逃げ出しすぞコラ!!


「え~と⋯ソルデウス⋯アクティブ⋯?」


「レディ」


サテラの声と同時に、また何かに包まれる感覚というより外界との隔絶を強く感じる。

これがギアを纏うという事か。

何気なく手を見てみると、艶めかしい光を放つを黒色の鎧?ガントレット?籠手?が俺の手を包んでいた。起動時みたいな事が無いか、手を開いたり閉じたりしてみたが違和感なく動いている。

ラグも無く、しかもまるで何も着けていないかの様な錯覚をさせるほどだ。

此奴は大したモンだぜ!!


「すごいな⋯」


思わず口から漏れた。


「装着完了。さあ、訓練を始めますよ。まずは熊の頭を掴んでストレージに入れて下さい」


「了解。見てろお~。一発で成功させてやる!!」


腰を落とし、目の前に落ちている熊の頭に手をかける。しかしまあ、大きいねえ。海外のハロウィン用に育てられてるカボチャくらいに大きいわ。まじまじと観察しつつ持ち上げる為に手に力を入れると⋯熊の頭はまるで熟れたスイカの中に爆弾を仕込んで着火させたくらいの勢いで爆発、四方八方に肉片やら脳漿やら骨片やらが飛び散り、俺のギアにも当然ぶっかかった。


「なんじゃこりゃー!!」


往年のスターの名台詞が出るほど驚きを隠せない俺!!いったい何が起こったんじゃー!!

またまたアワワしているとサテラが落ち着いた声で話しかけてきた。


「どうです?これが戦闘形態(コンバットモード)時のギアのパワーです。すごいでしょ?」


「ええ!?なんで?どうして?なんで言ってくれないの!?戦闘形態(コンバットモード)ってなんだよ!?」


「最初から説明したら勉強にならないじゃないですか。人間は強烈な体験で有れば有るほど強く学習すると言います。100の言葉より1の体験に勝るもの無しです。これで戦闘形態(コンバットモード)の危険性が解かりましたね。今形態時に味方に触れる場合、細心の注意をしなければなりません。まずはこの感覚を覚えてください」


「うへえ⋯」


「弱音を吐いている場合ではありません!!さあ次は身体がありますよ。今度は潰さないように、細心の注意を払って作業してください」


サテラ教官のギア操作講座はまだまだ始まったばかりである。



まだ冒険は始まらず。

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