第一村人が優しいのは後ろにカメラがあるからだぞ!!俺が話しかけてみろ!!多分ポリスが飛んで来るね!!
少年の懇願の眼差しに正直戸惑う俺。
いいのかなあ?ギルド通さず仕事受けるのって?
そもそも銅三級の俺達がゴブリン退治って受けられるのか?
うーむ⋯。
こう言う時はAIセンセーに聞いてみよう。
苦しい時そんな時!頼りになるのはAIだ!略して⋯って有名侍ギャグ漫画のネタをパクってみたりと。
では早速クソAIセンセーに聞いてみましょう!
「あのさ!冒険者の仕事って個人で受けられる物なのか?」
「知りません。冒険者登録をした際に詳細を確認しませんでしたし、手引書の配布等も無かったですからね。ここは柔軟な対応が必要では無いでしょうか?まあ最終的に責任取るのは貴方ですから。ウフフ」
「笑ってんじゃ無いの!全く!」
「ルゥ!どうする?」
ルゥは子供達の顔を見て少し考え込む。
「うーん⋯とりあえず村にこの子ら送り届けるのがええんちゃう?村の様子もわからんし、とにかく何が起こってるか知らんとなぁ」
「ああそうね。と言う訳だ少年達よ!!今は君達を村に送り届ける事を優先する。仕事を受けるかどうかは責任ある大人を交えないと話は出来んから今は答えられん。という訳で村に行くぞ!あないせい!」
「あ⋯うんわかった⋯こっち!!」
短髪の少年が俺達を先導すべく歩き出した。
「ルゥ、彼らにそばにいてあげてください。我々は貴女方の後方に付きます」
「わかったえ!」
マッシュルームカットの少年の手を引き、先行している短髪の少年に追いつく。俺はセンサーを活用し周辺を探る。
時に異常なしか⋯。
村に向かう道中キッズ達の名前を聞いた。短髪野郎はジョルド。ミスターキノコヘッズはパウロと言ったそうな。ルゥが二人から村の近況をそれとなく聞くと、一か月くらい前からゴブリンが現れ始めたのだけれど最初は少数だったので村人でも対処が出来たと。村人つええじゃねーか。
しかし、日が経つにつれて二桁を数えるほどの群れが現れるようになったと。
大人の話によると冒険者組合にゴブリン退治の依頼を出したがなしのつぶてなんだって。
なんだろう?ゴブリン退治って人気ないのかねえ。
二人はルゥと手をつなぎながら歩いているのだが、なんかちょっと照れてます?
ああ、こうやって少年たちの性癖は構成されてゆくのか…俺はいつ何処で曲げられたか…覚えてねえなあ。
なんやかんやで少年たちについて行くと村が見えてきた。おお!!あれがこの世界に来て初めての村ですか!!いやなんとも……あ~…武装化されてますな…。
先を鋭利に尖らせた丸太の柵で村の周囲を覆いその周辺にはこれまた尖がった丸太で組まれた拒馬が敷設されていた。柵の中には簡易的ではあるが物見櫓まで作られておりそこには弓矢を携えた村人がにらみを利かせていた。これはちょっとした要塞じゃないの。
その見張り役の村人がこちらに気づいたようで大声をあげた。
「南の森の方向から何か来るぞー!!」
遠くから見ても村がざわつくのが見て取れた。ギアの望遠モードで観察してみると、斧やら鎌やら、自作の槍であろうモノを持った眼光鋭い男達がぞろぞろと現れるのが見える。ありゃガチだな…。
もうすこし村に近づいたところで物見櫓の男が再び声を上げた。
「あんれ!?ありゃジョルジとペータんとこのせがれじゃねーか!?おーい!!ジョルジとペータ呼んで来い!!おめーらんとこのガキいたってな!!」
どうやら子供の存在を認識したらしい。武装した男達の緊張感が解けてゆくのが見えた。
恐らく村の入り口だったと思われる尖った木の枝で武装を施された扉付きの門に到着すると扉が開き、中から二十代後半くらいの男女が現れた。
「とーちゃーん!!かーちゃーん!!」
ルゥの手を離れキッズ達はそれぞれの両親であろう男女に駆け寄っていった。感動の再開である…等と思っていたが現実は厳しい。ジョルドは父親から、パウロは母親から頭頂部にげんこつをくらっていた。
ゴス!!っと良い音と共に頭を抱えしゃがみ込む二人。
「こんな危ない時に外に出るなんていったい何考えてるんだい!!どんだけ心配した事か…」
パウロを殴った母親は涙声になっている。殴られたパウロも目に大粒の涙を浮かべ母親に謝っていた。
母に抱かれるパウロを見て愛情の深さを見せられた。
一方、ジョルドの方はいたってドライで
「まあ…無事でよかった…」
と父親はジョルドを殴った拳をさすりながらぼそりと呟くのであった。
ジョルドを母親が心配そうに殴られた箇所をさする。
それを少し離れた場所から見る俺達。これでミッション完了かな?後は子供達のご両親に挨拶して俺達はお暇するとしよう。これ以上ここにいたら何やら巻き込まれる予感がびんびんするのよ!!
この要塞化された村を見れば一目瞭然!!
「二人とも!!ご両親に会えてよかったな!!これからは親に心配をかけるのではないぞ!!」
「そうえ!!出かける時はちゃんとご両親に言わんとあかんよ!!」
「うん…わかってるよ…」
ジョルドは恥ずかしそうに呟く。パウロは黙って頷いていた。
恥ずかしそうにしているのは、お姉さんに情けない姿を見られたからかな!?
大丈夫だで!!もっと情けない姿を見ているからこれ以上落ちようがないからな!!
と思っていたら二人のご両親が話しかけてきた。
「この度は子供達が御迷惑をおかけしました。しかも村にまで送っていただいて、本当にありがとうございます」
「いやいや、無事でよかったですな。これ以上の礼は無用!!我々はこれで…」
と急いでここを離れようとした瞬間!!ジョルドの父親から質問が飛び出た。
「ちょいとお待ちを!!時にお二人は……冒険者であらせられますか?」
なんだか嫌な予感がするが答えない訳にはいくまい。
「はい…冒険者ですが何か…?」
隣にいた奥様と思われる女性が大きく息を吸うと
「冒険者が来たよー!!」
と大声で叫んだ。一体どうしたというのだ!?この村では冒険者に対し何かあるのか!?等と思っていたら村の中からたくさんの人が押し寄せてきて俺達を囲んだ。群衆に揉みくちゃにされる俺とルゥ。
これは!?まさか村の因習に巻き込まれた!?俺達はこのまま何かの何かの生贄に捧げられてしまうのか!?と思ったのだが村人の表情を見てみるとどうも違う。
「おお!!冒険者がやっと来てくれたのか!!」
「立派な鎧だねえ!!とても強そうだよ」
「おい!!エルフがいるでねえか!?こりゃたまげたなあ!!
「ささ!!村長に合ってくれ!!」
何をどうすればわからないまま村人に促され入村完了。質素なつくりの建物が並ぶもちろん舗装などされていない道を、まるで祭りの山車の如く村人に囲まれながら進むと周りの建物と比べて比較的大きく立派な建物が見えてきた。
テンション高めの村人の一人が先に建物に入り誰かを呼んでいる。俺達はそのまま建物に押し込まれ目の前にあったなかなか立派な一枚板で作られたテーブルの前に座らされた。いったい何だってんだ!?
村人に囲まれる中、奥から一人の老人があらわれた。
「おお、遠い所からよく来てくれた!!わたしが村長です!!」
「………」
俺達が一連の出来事にあっけにとられて反応できずにいると村長がもう一発
「わたしが…村長です!!」
なんだろう…この後洞窟に巣くった怪物退治を依頼されて洞窟に入ったのは良いが入口を塞がれて怪物の生贄にされる予感がする…おずおずと村長の顔を見てみるとちょっと目が血走ってて怖い。
「あの…子供らからゴブリンが何やらって聞いたんけど…なにがあったん?」
ルゥがキッズ達から聞いた事を村長に確認する。
「おお!!そうじゃ!!実はな、一か月ぐらい前から村の周辺でゴブリンが出没するようになってなあ。そんで警戒はしていたのじゃが村人が襲われるようになってしまったでのう。ただ数はそんなではなかった故我々で対処可能だったのだが…ある日を境にゴブリンの出没数が多くなり村人だけでは対処が難しくなってしまった。遂には怪我人がでるようになってなあ…」
「少し宜しいですか?」
「女の声!?鎧の人から女の声がしたぞ!?」
「ええ!?あの鎧の人女の人なの!?」
「いや、最初に会った時は男の声だったぞ」
俺のギアから発せられたサテラの声にまわりがどよつく…しまいには魔の物との声まで上がってしまい周りの村人臨戦態勢!!タダでさえ村中ピリピリしてるのに!!もう何なの!?
「失礼いたしました。どうも皆様初めまして。ワタクシこの男に巣くっております妖精のサテラと申します。以後お見知りおきを」
「妖精!?」
「そうか妖精か…妖精なんて初めて見たぞ」
「妖精なら仕方ない!!」
何この妖精への圧倒的信頼感…妖精ってこの世界ではどのような立ち位置なの?誰か教えてプリーズ!!
「おお…失礼した。私が…村長です!!っとこのくだりは既にやっておったな!!失敬失敬!!それで何かね?聞きたい事は?」
「はい。村人では対処不能になったのであれば然るべき場所に上申すべきではないでしょうか?この国にも緊急時に対応する組織はあるのでしょう?」
村長は腕を組み顎髭を触りながら無念そうに語る。
「お役人に直訴したのじゃがのう…ゴブリンごときに兵を派遣する事はできんと言われてしもうたんじゃ。まずは冒険者組合に依頼をだせじゃと…」
「それで、冒険者組合には?」
「依頼は出したが反応なし!!なしのつぶても良いとこじゃ!!冒険者の連中、ゴブリンだからって狩る価値無しとでも思っとるんじゃろ!!こちとら村の危機なんじゃあ!!うっ…げほおお」
村長ヒートアップ後、唾液が変な所に入ってむせるむせる!!
「村長!!大丈夫ですか!?」
「また年甲斐も無く大声何か出すから…」
村人に介抱されてなだめられる村長。見てる分には面白いのだが…。
「まあこの村を見てくれ…つい最近までは何もない…平穏だけが取り柄の静かな村じゃった…だが今じゃ高い柵で囲まれ、拒馬を置き、物見櫓まで建て、村人は常に気を張った状態を強いられている…まるで出来の悪い砦の中で戦争でもしている様では無いか…このままでは畑仕事もできんし気軽に村の外などに出る事もできん。生活が…まともな生活がおくれんのじゃあああああ!!」
あ、また熱くなった。今度は咳も出ずちゃんと喋れたね!!よかった!!
「大筋の事はわかったわぁ……でもそんだけのゴブリンが出るゆう事は、どっかに巣穴でもあるゆう事なるなぁ。それをあの子らが捜しててたゆう事やな…大体聞いてた通りやなぁ…」
ああ、確かに何か探してるって言ってたなあ…そこを叩くとも。
「何!?アイツそんな危ない事を!?後でもう一発いっとかないとなあ…」
聴衆の中にいたジョルドパパことジョルジが怒り気味の声を上げた。ジョルドよ…合掌。
「しかし、このあたりであの数が入れる洞穴なんかあったかね?」
「いやあ、見たことねえなあ…んだけどあんだけの数入れる洞穴だったら見つかんねえはずないべ…」
聴衆の中から声が上がる。どうやら出没しているゴブリンの数は相当らしく皆一様に巣穴やらねぐらやら言っていた。ここいら辺に土地勘がある村人が見つけられんとなると…どっかをキャンプ地としたか?う~む…ゴブリンの習性が解からんので何とも言えんけど、ただそれだけの数のゴブリンが青空の下キャンプをしていたらもっと目立ってよいはずなんだよなあ。
「しかし、今日冒険者が来て下さった…これも天の采配!!神に感謝いたしましょう!!」
何処からか現れた神父らしき人が十字架っぽいモノを片手に祈り始めた…神父の声に浮足立つ村民。やばい、このままではゴブリン退治強制受注だ……。
「現状は理解しました。しかしこれは我々が受けられる範囲の仕事なのでしょうか?」
サテラの問いに浮足立っていた村人の動きがピタッと止まる。皆この人は何言っているのって顔で俺を見て来る。発言したのは俺じゃないよ!!
「と言いますと…?」
村長がな~んか嫌な予感がするのかおそるおそる聞いてきた。
「この二人は昨日冒険者になったばかりの銅の三級。果たしてゴブリン排除の任務に適した等級なのか当方にはわかりかねます。一般的な認識として、対ゴブリン戦に適した等級とは如何程なのでしょうか?」
「え…?」
村長&村民ポカーン。いや、俺ら悪くねーべ!!だって詳しい事何にも告げず告げられずここまで来てるからね!!勝手に盛り上がってる貴殿等が悪い!!
「あ…あの…冒険者組合の依頼書見てじゃ…?」
村長が力なく語る!!
「え…?銅の三級って…ペーペーもいい所じゃあ…」
「ゴブリンだったら銅一級から鉄三級ぐらいか?」
ああ、言いにくい…言いにくいが言うしか無かろう…。
「いえ…我々は薬草取りをしてる最中に、子供たちと会いまして……安全を考えて村まで送っただけなんですよねえ……ハハハ…」
「ええ…それマジ……?」
村長!!口調!!口調!!
村長の顔から生気と数少ない毛髪が抜けていくのが手に取るようにわかる。期待させちゃったようで悪いけど、勝手に期待値上げたのお宅らですからね!!
「銅の三級って……銅の…」
村長うわごとの様に銅の三級を繰り返す……周りの村民もなんだかがっかりしています。いたたまれない空気ですなあ。神父なんか別の意味の祈り捧げてるし…もう帰ってええ?
「どうもお役に立てないみたいですね。それでは我々は街に帰還いたします。この現状は冒険者組合にお伝えいたしますが依頼を受けられる冒険者の確保ができるかはわかりません。そこはご了承ください。では」
サテラが村人たちに話し終えると俺とルゥは席をたった。出口の方へ歩くと人垣が俺達を中心に左右に分かれどこぞの十戒よろしく道を開ける。落胆した村人の顔は何時のまにか怒りに変わっていた。失望と憤怒の眼が俺達に向けられる。今自分たちの置かれている理不尽をどこかにぶつけたい気持ちはわかるよ。社会人やってりゃ誰だってそうさ。でもどうしようもないじゃん。
「くそ!!なんだよ!!期待させやがって……」
「銅の三級って…雑魚じゃねえか…」
村人から聞こえてくる怨嗟がなんとも……まあ少しでも気が晴れるならぶつけたまへ。
等と思って歩いていると目の前にあの二人とその親達が立っていた。
「すまんかったな。俺達の勝手な早とちりなのに……」
「わかってくれとは言わないけど…みんな追い詰められてるんだよ。気を悪くしたとは思うけど、どうか許しておくれ…」
二人の親達が俺達に頭を下げた。確かジョルジさんと…パウロの母親かあ。
「いや、気にしないでくれ。力になれないのは事実だ」
「ウチらこそごめんなあ…変な期待持たせてもうて……」
ジョルドとパウロは納得いかない!!って表情で俺達を見ている。そんな顔で見られてもできる事は無いぜ。
「と言う訳だ少年達よ。あんまり危険な事するんじゃねえぞ!!じゃあな!!」
「ご両親の言う事をよく聞くんやえ!!それじゃあ…またどこかで会おうなぁ」
「それでは失礼いたします」
村に入ってきた時の門に向かって歩き出す。いやあ良かった!!トラブルに巻き込まれず済んだ!!
もう日も傾いていることだし、とっとと帰ってホテルで豪華なディナーと洒落こもうじゃあないの!!
そんで風呂にゆっくり浸かってふかふかのベッドで寝るんだ!!
「弱くない!!」
後方からいきなりの大声!!おかげでホテルでぬくぬくしている妄想から現実に引き戻された。
いきなりなんだ!?思わず振り向くとあの物静かなパウロがこぶしを握って大声を出していた。
そんなパウロに触発されたのかジョルドも声を上げる。
「そ…そうだ!!おっちゃんは弱くない!!だって俺達に襲ってきたゴブリンをなんか大きな音を出してやっつけてくれたじゃないか!!」
パウロがジョルドの言葉にうなずく。親達は子供達がいきなり大声を上げた事と、ゴブリンに襲われていたという事、そのゴブリンを銅の三級が撃退した事など、いきなり出てきた情報に戸惑いながら子供達を見ていた。
いやあ…今言いますそれ?余計な事言わなくていいよおキッズ達!!帰らせてくれえよぉ……。
「おまえら!!ゴブリンに襲われてたのか!?なんて事だ……」
ジョルジさん、驚きの余り頭を抱える。子供が下手すると死んでた事がショックだった様だ。
パウロママは思わずパウロを抱きしめていた。
「本当に…無事でよかった…」
「とうちゃん!!おっちゃんは弱くなんかないよ!!ゴブリンだってばばっとやっつけちゃったんだもん!!絶対村を助けてくれるよ!!」
あーーどうしよう……。少年からの高い評価に正直戸惑いますわ…。俺帰りたいねん…。
とここで血も涙も無いAIことサテラさんが少年たちに現実をグッサリ!!
「ジョルドさん。パウロさん。それは貴方方が我々を雇うという認識で合っていますでしょうか?」
「え…?」
思わぬ返答にジョルドとパウロは驚いた様な顔をした。
「私達は冒険者です。村の方々は銅の三級という理由で我々への依頼を断念しました。まあ賢明な判断だと思いますが…しかし、それでも我々に助力を求めた場合依頼料が発生いたします。勿論それを払うのは村の方々では無く貴方方になります。貴方方は報酬を用意できますか?」
「え…?あ……」
言葉に詰まるキッズ達。そりゃそうだ。大人にいきなり金を用意できるかなんて聞かれるんだもん。
生まれてから今まで、このようなシチュエーションにあった事が無いのだから混乱するのも当然だろう。
大人だって金のやり取りは緊張するもん。
ただ横にいるエルフさんは何かバツの悪そうな顔をしている。俺だって情が無い訳じゃない。
正直苦い顔してると思いますよ…ああ、表情が見えないヘッドギアがあってよかった!!
でもタダ働きはするつもりは無い。
「なあさっちゃん…言いたい事はわかるけど子供にそれは…」
「子供ですか?子供だからどうというのです?子供だから無償でやれと?今回の依頼は危険生物の排除ですのでそれ相応のリスクが生じます。下手をすれば死ぬかもしれません。そのような危険な依頼を無償で引き受ける訳にはまいりません。それに無償で応じた場合これ以降ゴブリンの排除が無償と認識されてしまう恐れもあります。それによって冒険者の価値を貶める結果になってしまうかもしれません。残念ながら我々は慈善事業を行っている訳ではありません。一つ一つの依頼を完遂して糊口をしのがなければならないのです。人は何かしらの理由が無い限り、無償で動かない方がよいのです。おわかり頂けましたか?」
「だったら何か理由があったらええの?」
「ええ、理由があれば良いと思いますよ」
「ウチが助けたいと思っただけじゃあかん?」
「ご自分の命とリソースを投入する覚悟があれば良いのではないでしょうか?」
「そーす?何かわからんけど、投げ入れればええんやね!!よし!!兄さん!!頼むわ!!」
えっ!?俺の肩掴んで何良い顔してるの君?思わず二度見してしもうたわ!!
「ちょっと!?何言ってはるの貴女!?俺!?俺!?」
「そうえ!!ウチ自慢じゃ無いけど攻撃魔法習得してへんのよ!!攻撃手段を持たない女が前に出ても何の役も立たんわぁ。だから強い兄さんの出番ってとこや!!愛した女の頼みやん!!お願いなぁ〜」
「よっ、お熱いね、お二人さん」
「冷やかすんだったらちゃんと感情込めろ!!思ってない事言うなポンコツAI!!それに愛して無いからな!!スケベな目で見てはいるが愛してはいないからな!!そもそも俺に愛される資格はあるのか!?」
「もう!!照れ屋さんやねえ。大丈夫やえ〜。ちゃんと愛してるわぁ」
「君の目が全く笑ってないニヤケ顔からして信じられんのだがねえ⋯全く!!愛だの恋だのネタにしてからかうもんじゃないよ!!生まれてこの方異性とお付き合いしたこと無いマイハートが傷付いたらどーする!!」
「んで!?やってくれるんやろ?」
屈託のない笑顔が憎らしいわ!!
キッズ達の方をチラリと見る。神妙な面持ちをした二人が俺をみている。
あ〜あ!!、もうこれはやらざる得ないだろうな⋯⋯さよなら⋯俺のホテルライフ⋯。
俺は二人の前に行き彼らと目線を合わせるべく片足を付いてしゃがむ。
「さて、一方的で悪いが俺達の意思は決まった。後はお前さん達が俺達を雇う意思があるかどうかだ」
ジョルドとパウロはお互い目を合わせたり親の顔を見たりと戸惑っていたがパウロが口を開く。
「でも⋯お金がない⋯」
二人が親の顔を見ても親達は悲しそうに目線をそらすしかない。彼らの収入がどれくらいあるかは知らんが冒険者を雇う程の余裕なんて無いのだろう。
「ああそれなんだが、うちの相方のたっての希望なんでな。ウブな男は女に頼まれたらノーと言えんか弱きかつ悲しき生き物なのだ。もちろんタダではやらんぞ!!報酬はお前らが今一番価値があると思っている物を寄越せ。良いな⋯」
二人は無言ではあるが、力強く首を縦に振った。そして今度はジョルドが口を開く。
「おっちゃんは⋯か弱い生きものなのか⋯?」
「おう!!おそらくお前らの父ちゃんもな!!」
ジョルドは自分の父親の顔を見ると、父親は苦笑いをしつつ何かバツの悪そうな顔をしていた。
「よし!!では依頼者よ!!俺達は何をすれば良い!?」
二人は顔を合わせ頷くと一緒に声を上げる。
「ゴブリンをやっつけて下さい!!」
「引き受けよう!!」
ここはカッコ良く決めたい!!ストレージから銃を取り出しビシッと構える!!
そして意味もなく撃鉄を起こす!!と言ってもエネルギー弾を発射する銃だから弾が装填される訳じゃあ無いんだけどね⋯。まあ、意味としては銃とエネルギーパックの接続なんだって。
キッズ達の目が銃に集まる。男の子ってこう言うの好きでしょ!?
「それがおっちゃんの武器か!?剣じゃないんだね。おっちゃん騎士じゃないの!?」
ジョルドが素直な疑問を俺にぶつける。
ギアのデザインのおかげでまた騎士に間違われたよ。これはもう俺の持ちネタと言ってもいいね。
「こんなナリだが剣は使わん!!登録は魔術師って事になってる」
「魔術師⋯⋯じゃあそれは杖なの?そんな杖初めてみた」
パウロが俺の銃を見て不思議〜って顔している。
「ちなみにウチは薬師やえ」
ルゥが自分の職業を紹介すると、大人達の目の色が変わった。
「あんた!!薬師なのかい!?だったらこっちに来ておくれ!!怪我人が出ているんだ!!こんな所に医者なんて来てくれないし、かかる金も無いから途方に暮れてたんだよ!!」
「神父さんの手に負えない怪我人もいるんだ!!さあこっちだ!!」
「え!?あの!?ええ!?あ〜れ〜!!」
キッズの親達に慌ただしくどこかに連行されて行く我が相方。しっかり役目を果たしてこい!!ビシッと敬礼!!
そんな時、鐘がけたたましく鳴り響いた。鐘の音を聴いたキッズ達が慌て始める。
「敵襲だ!!ゴブリンが来た!!」
「早く⋯教会に逃げないと」
敵襲って⋯完全に戦場モードやないけ!!村人達はマジで戦争してるんだな⋯⋯遠くから声が聞こえる⋯⋯どうやら南の森から敵が来てるらしい。
「お前らはとっとと避難場所に行け!!俺は奴らを迎え撃つ!!」
銃を携え移動を開始。しかしジョルドが俺を呼び止めた。
「おっちゃん⋯⋯頼んだよ⋯⋯」
真剣な面持ちで俺を見ている。これは応えてやらなければならんだろう!!
「おう!!」
俺は南方の柵へ走り始めた。最短ルートを通るために建物等障害物は跳躍でかわしショートカットをする中サテラから話しかけられた。
「ルゥといい貴方といい⋯⋯実にお人好しですね⋯⋯せいぜい付け込まれないように気をつけて下さい」
「そんな時は君が止めんしゃい!!」
途中で同じく柵へと向かう村人達と合流する。上空から鎧を着込んだ謎の男が謎の物体を持って降ってきた事にちょいとした混乱が起きたが優先度が高い事象が起きてる故捨ておかれた。
戦う男達が群がる柵に着くと遮蔽物から顔を出せるくらいの台が組まれており、村人達がそこから外の様子を見ていた。
そんな中に俺達に怨嗟の言葉を吐いていた男がおり俺に話しかけてきた。
「なんだ三級、まだ逃げてなかったのか?」
何か馬鹿にしたような、それでいて強がっているような声色だった。正直怖いのだろう。だからってこいつを馬鹿には出来ない。俺だってギアが無ければ怖いよ。
「ある人に雇われてね。残念ながら逃げると言う選択肢は無くなったのさ」
「そいつは不運だな?そういやエルフの姉ちゃんは?」
「職業薬師って言ったら目の色変えた村の人にどっかに連れてかれたよ」
「そいつは⋯⋯まあ、こちらとしてはありがたい事だな⋯いつゴブリンに襲われるかわからん所に医者は来てくれん⋯⋯それに医者にかかる金なんてそもそも無いしな⋯」
「さっきも言われたよそれ。さて、奴さんらはどんな感じ?ちょっとごめんよ」
村人を掻き分け、丸太で組まれた台の上登ると柵の向こう側が見えた。
そこにはさっきぶっ殺した奴と同じゴブリンが123456⋯たくさんいる!!
日が傾いているのと距離のせいか光学情報では正確な数は把握できない。
ゴブリン達はそれぞれに思い思いの武器を持っていらっしゃる。あれで攻撃されたら死ぬな!!
「サテラさん!!あれの数、バッと数えてみて!!」
「統合センサーからの情報。現時点で確認できる数はおよそ50」
サテラの声に周りがざわめく。
「なんだって!?50?」
「そんな数相手にできるのか!?」
「終わりだぁぁぁ⋯」
さっきの男が周りの弱気な声を掻き消すように大声を出す!!
「無駄口叩くなバカヤロー!!俺達がやらなきゃ村はどうなる!?後ろにいる女子供は!?大群が来ようとも戦うしかねーんだよ!!覚悟を決めろ!!」
鼓舞してるつもりの様だが声が震えているぞ。まあそれは良いとして⋯かかってこないねぇ⋯。
まるで統率の取れた軍隊が敵の砦の前で隊列を組んでいる様では無いか。兵隊の数を見せて威圧をしている?
「なあ、ゴブリンってあんな統率の取れる生き物なのか?」
俺に話しかけてきた男にゴブリンの生態ついて聞いてみる。
「あん?ああ⋯アイツらは群れの生きもんだからそれなりに取るが⋯あんなにキッチリと取れる群れなど見た事ないぜ⋯アンタ冒険者なのにそんな事も知らんのか?」
「初心者なもので⋯」
ふ〜ん⋯あそこにいる個体は普通のゴブリンとは違うのか?っていうか俺はその普通を知らない⋯⋯まあ、とりあえず排除だわな。
俺は銃を構え、安全装置を外し引き金を引いた。




