人生に疲れて鳥になって飛んでゆきたいと言う人が時たまいるが、鳥は鳥で超ツライと思うのよね
あられもない姿のルゥさんがなにやら慌てふためいております。一体どうしたのでしょうか?
ついでにワタクシの一部も慌てふためいていますがそれはご内密にお願いします。
「えっと…あの…どうしたの…でしょうか?」
今この部屋で起こっている事象の元凶たる片手におパンツ、もう片手におブラを握っているルゥシエルさんに恐る恐る聞いてみた。
「あんな、風呂あがったから着替えよ思って部屋着取り出したんよ。でもウチ忘れててん!!下着が汗でシットリしてんの!!今下着これしかないからずっと浄化魔法かけてたんけど浄化魔法ではシットリは取れん!!綺麗になってるのはわかるんけど生乾きの下着はくのややわぁ~!!」
「ああ…そうですか…」
演劇でも見させられているのだろうか?湿った下着に絶望してよよと泣き崩れるエルフ。
まあ泣き崩れると言っても演劇ですから実際は泣いていない。
しかし俺にどうしろというのか?ご存じの通り俺にはモノを乾かす能力なんてねえ!!
そんな俺に劇団ルゥを見せられて一体何をやれと!?その艶めかしい姿をオカズにシコればいいのか!?
いや馬鹿言ってんじゃあないよ全く!!考えろー!!最適解を!!
「あ!!」
そういえば俺がやらかした時、サテラが洗浄はやっておくと言った事があったではないか!!
もしかしたらストレージの機能の中にそういうモノがあるのかもしれん!!
「サテラ、もしかしてストレージ内に洗濯機能が有ったりしない?そんなかに乾燥機能は?」
「ストレージの機能ではありませんが、メインメニューの中に装備洗浄機能はありますね。一体どういう仕組みで洗浄されているかはわかりませんが機能しています。テストとして貴方のやらかした衣服を入れてみましたが洗浄されてストレージ内に収まっていますよ」
「あ…はい」
「乾燥機能はもちろんありますが、少々時間が掛かりますね」
「なんや知らんけど、乾かすことできるん?」
「はい。ただ下着となると布地を傷める高温乾燥はお勧めできませんのでどうしても時間が掛かりますね。もちろん自然乾燥よりは速く乾きますが」
「どのくらい?」
「おそらく一時間以上は…」
「そのくらいやったら待てる…けど、なんやすうすうして落ち着かんおもうわ」
「でしたら支給品の女性兵士用下着がストレージ内に。お待ちください」
へえ~さすがアメリカ軍。下着も支給できるとは。自衛隊は確か自腹だったよな。
などと思っているとベッドの上にビニールにパッケージされた数着の地味めな色の下着がポンとおかれた。
「あれま!?」
いきなり現れた下着に少し驚くルゥ。そりゃ何もない所から物が出てくれば驚くだろう。
「貴方の外見から推測したサイズを数着そろえてみました。この中から貴女に合うサイズを選んでください」
「わかったわ」
下着の入った複数のパッケージを抱えて脱衣所に戻るルゥさん。奥からパッケージを剥ぐ音がする。ビニールについてはもう慣れたらしい。適応能力が高くてええなあ。俺ももっと柔軟に生きたい。
「これええなあ!!今までの下着よりずっと楽え!!」
と今度は下着姿でこっちに現れた!!この人は一体何を考えているのやら…。
「ルゥ…駄目ですよはしたない。ちゃんと服を着てからこちらに来てください」
ついにサテラにまで突っ込まれるエルフ。しかしルゥは特に何も感じていないらしい。この人の羞恥心はどのレベルまで行ったら反応するのやら…。
「だってなぁ~。この感動を伝えたかったんよ!!すごいえこの下着。締め付け感も薄いし、何よりとても動きやすいわぁ~」
腕を上下したり足を上げたりと、全身で動きやすさをアピールするルゥ。実にうれしそうである。
「そりゃ女性兵士様に動きやすく作っているからなあ。そんな事より服を着なさい!!」
地味な下着のお陰でおピンク様の反応が薄かった事により冷静に返す事が出来たぞ俺!!
でもまあ、地味な下着に包まれているとはいえ彼女の白い肌の身体はなかなか刺激が強いモノである。
身体を動かしている時にブルンブルン震えるモノの破壊力ときたらもう…。
ここはさっさと服を着させることに尽きる。
「わかったわぁ」
再び脱衣所に戻るルゥ。全くドギマギさせる…。
ルゥは室内着を着てこちらに戻ってくると、俺のベッドに着なかった下着のパッケージと湿った下着を置いた。他人様の女性用下着をいきなり置かれるとまたドギマギしちゃうわあ!!
「ウチに合わんかった下着ここに置いとくえ。あとこっちの下着の乾燥もお願いなぁ~」
置いた下着類がスッとベッド上から消える。何回見てもふっしぎ~!!
「ええなあ。ウチも収納魔法欲しいわぁ~」
そう言うと自分のベッドにダイブするルゥ。そのまま思いっきり身体を伸ばす。
「んん~つかれたわぁ!!兄さんも何や大変やったけど、まあ無事で何よりだわぁ…じゃあ先に休ませてもらうえ…おやすみ…」
彼女はそう言い残し床に就き、そう時間もかからず寝息が聞こえるようになった。
よっぽど疲れてたんだろうな。あの森じゃ常に気を張ってにゃならなかったからなあ。やっとまともに眠れたのだろう。かくゆう俺も一週間近く寝てませんでしたから今日は寝るよ!!
ただ!!その前に知っておきたい事がある!!
ルゥの寝息に耳を立て、寝ていることを確認する!!
「サテラよ!!一つ聞きたいのだが!?」
「はい。何でしょう?」
「彼女が選んだおブラ様の大きさは如何程でした!?」
「はあ!?」
「だから!!おブラ様の大きさですよ!!ほら!!何カップとか!!」
「ああ!!そういう事ですか。Pですね。これで満足ですか?」
「はい!!ワタクシの中のおピンク様も貴女によろしくと言っております」
「そうですか。それは結構な事で。これで懸案事項は無くなりましたね。それではおやすみなさい…二度と目を覚まさなくても結構ですよ!!」
「うんおやすみ!!明日もバッチリと目覚めてやるさあ!!」
部屋の明かりを落とし枕に頭を埋める。Pですか!!そうですか!!うふふふ!!と我ながら気持ち悪い思考を巡らせていたら突然スイッチが切れるが如く意識が無くなった。
………。
なにやら光を感じ目を開ける。カーテンの隙間から光が入り込んでいた。どうやらもう朝らしい。時計が無いので今が何時かなどわからない。そもそもこの世界の時間の概念がわかんねえ。
隣のベッドのルゥはまだ寝息を立てている。起こす理由は無いからまだ寝かしといてやろう。
しかし昨日は突然だったな。あの落ち方は…あんにゃろうめ!!ナノマシン使って意識を落としやがったな。全く。AIに身体を操作されるなど冗談ではない!!でもどうしようもない!!
「おはようございます。身体の疲れは取れましたか?」
「ああ、おかげさまでな!!」
「おや?少々のストレス反応がありますね?いかがされました?」
「解決できるようなモノでもないので気にせんといて…」
「そうですか。では何かありましたら言ってください」
「へいへいと…んで今が何時かわかるかい?」
「はい。ホテルのフロントに時計がありましたのでそこから時間を設定しました」
「ええ!?まじで!?フロントに時計あったの!?知らんかったわあ~。まあ、なんか豪華さにあてられてまわりなんて見えてなかったからなあ…貧乏人の悲しい性よ…」
「はいはい。これからお金持ちになりましょうね。それでご質問の只今の時間ですが私の時計でAM7:43です」
「ああそう。んじゃあ起きますか…。朝飯はどうしようか…」
「そういえば貴方が外出している時にボーイさんが部屋にやってきまして朝食の時間を知らせてくれましたよ。AM7:00より上階のレストランにお越しくださいと」
「ああそう。そいつは良いねえ。じゃあ理由もできたし、ルゥを起こしますか」
ルゥに朝食だと耳打ちするとガバッと起き上がった。何というか…この生命力の強さよ。
身支度をして上階のレストランに向かうと驚く事にビュッフェ形式の朝食が用意されていた。
ここは本当に異世界なのか?まるで現代と変わらんではないか…。でもまあ、おかげ様で高品質な朝食にありつけた。ああありがたやありがたや。
豪華な朝食をたらふく食った後、部屋に戻り外出の準備をする。
「さて、今日はどうするか?」
森のフレンズ達の査定が終わるのが明日という事なので今日は特にやる事が無い。
するとルゥが提案をしてきた。
「なあ兄さん。せっかく冒険者になったんえ?冒険者らしい事したいわぁ」
「冒険者らしい事ねえ…そうだな、やる事もないしここは一丁行ってみますか!?」
「いくえ!!」
実はでっかい時計があったフロントに外出を告げて冒険者ギルドに向かう。朝の街並みは昨日とはまた違う顔を見せる。
ギルドのある地区に入るとまた様相が変わる。一つの街の中でもコロコロと変わるモノだな。
相変わらず異様な雰囲気を放つ冒険者ギルドの建物に入って行くと、朝っぱらだというのに職員達が慌ただしく動いていた。恐らくフレンズ達の査定で右往左往しているのであろう。お疲れさんです。
そんな職員達を横目に依頼が張り出されてある掲示板に向かう。
数人の冒険者達が既に掲示板の前に立っており依頼を吟味している。良く見ると依頼書の中に銅1級からとか鉄の何やらとか書いてある。
ははーん!!恐らくアレが依頼を受けられる冒険者ランクを指しているのであろう。
俺達は銅の3級。下っ端も下っ端のぺーぺーだ。
そんな俺達が受けられる依頼とくれば。
「う~ん。ウチらが受けられるんのは街中の案件か、薬草集めぐらいやねぇ…」
ですよね~。ザ・異世界転生冒険者のお約束!!デフォルト!!テンプレート!!ええっと…後何だ?
まあとにかく異世界に来たからにはこれはやっておかないとな!!
「なあ兄さん。ウチここら辺の薬草の分布を調べたいんよ。だから薬草集めの仕事受けへん?」
「新人冒険者らしくて良いんじゃない?よし!!それ受けよう!!」
「うん!!じゃあウチこれ持ってってくるわぁ!!」
ルゥは掲示板から依頼書を取ると受付に持っていった。彼女を待つ間周りを見渡し聞き耳を立てる。この身体は訓練を受けており生身でも地獄耳を発揮できるのだ!!
と言う訳で周りの冒険者から情報を集める。
とはいっても特に目ぼしい情報は得られなかったが、昨日俺を襲った汚い三連星が今日は来てないみたいな話を聞いた。あいつらどうしてしてるのかな?まだあそこにいたりして。
聞き耳損をしていると受付を終えたルゥが何やら片手に大きめの巻いた紙をもって戻ってきた。
「おや!?片手に持っているそれはなんだ?」
「何って?ウチらここら辺の土地勘無いんから地図が必要え。だからギルド謹製のドウル周辺地図をこうてきたんよ!!」
「なるほどねえ。それは正解!!んで?その地図、どんな感じなの!?」
「今見せるわぁ~」
ルゥが近くにあった机に地図を広げると、確かにドウルの街を中心にどこに何々があると描かれている。
ただ、これも異世界転生モノあるあるだが絶対距離とか縮尺とか合ってないね。
「これは…だいぶ大雑把な地図ですね…」
うん、サテラさんの言う通り大体の方角と恐らく地図製作者が歩いた時間によって算出された距離が絵になって記されてるね。でもまあどっちに行けばいいか示してくれるだけでもありがたい。
「ちなみにお値段は!?」
「ギルドの人曰く出血大サービス価格で銀貨1枚え!!」
「高いか安いか正直解からん!!」
「まあ…そうですね…この地図を目安にUAVを飛ばしてより正確な地図を作りましょう」
「ゆーえーぶい…?」
「いいねえ!!それで行こう!!んでどうやって飛ばすのだ!?」
「まずは街の外に出てください」
「なあなあ!!ゆーえーぶいって何!?」
「見てのお楽しみっていう事で!!行こう!!」
街の外に向かうため、防壁の門に向かう。門番に冒険者証を見せて璧外に出ると街の中とは違う広く清々しい青空が現れた。こっちの世界でも空は美しい。緑の空とか赤い空じゃなくてよかった。
人々が行きかう街道を外れて人が来ないであろう少々木々に囲まれている所に入り辺りをうかがう。
うん!!人影無し!!
「んじゃま、サテラたのまあ」
「了解。UAV操作権の移譲を確認。UAV展開します」
サテラの声と共に空に溶け込むような迷彩を施された幅数メートルはありそうな三角形の物体が俺の目の前に現れた。不思議な事に空気取り入れ口もエンジンノズルも無い。航空灯やらメンテナンスハッチやらはあるのだがどうやって飛ぶのかがわからん!?わかるのはジェット推進ではない事。
う~ん。なんだろう…生八つ橋に見えてきた。
「これがゆーえーぶい?大きいなあ…それになんや不思議なもんやわぁ?これでなにするん?」
「はい。これを飛ばし、センサーにより街周辺のマッピングを行いより正確性の高い地図を作成します」
「飛ぶ…?これが飛ぶん…?鳥みたいに…?」
「いえ、鳥以上の飛行が出来ますよ。それでは飛ばしますね」
生八つ橋からタービンを回すような高めの音が出る。えっ?なに?ガスタービンでも積んでるの?
あ、でも排気がないから違うか。翼端?にある航空灯にも火が灯る。そして風を起こす事も無く垂直にスッと飛び上がった。俺とルゥが唖然として見ている中、上空30メートル辺りで一旦停止し辺りを見回すように横に一回転すると音も無く飛び去って行った。あれが恐らくエリア51とかで見られたUFOに違いない!!
「ほんとに飛んだわぁ…羽ばたきもせず…」
「いやまじどうやって飛んでんのアレ…?」
「飛行原理ですか?あれは重力操作装置によって飛行していますよ」
「ああ…そうですか…」
重力と言われても何が何やら…しかしこれで地図が作れるのだったら良いだろう。こまけえ事は考えない様にしよう!!
「それと、貴方もルゥと同じ端末を付けてもらいますよ。ギア未装着時の通信不能状態がよろしくない事は昨日の出来事で学びましたよね?」
「はい…」
「それに端末があればホログラフィックディスプレイを通じて各種情報の閲覧が可能になりますよ。今作成中の地図も使用可能になります」
「そいつは~便利ね⋯」
「では、早速装着を」
左手首に端末が装備される。改めて端末を見てみよう!!
謎の素材で出来ている⋯後ボタンがある⋯後ライトが⋯。
よし!見るのやめ!デザインセンスの無い俺にデザインは語れん!!
後は機能だな。とりあえずボタンがあるので押してみよう。
ボタンを押すと目の前にいつものメニュー画面が出てきた。
やっぱりすげえ⋯画面が宙に浮いてる⋯。
これにキャラクターの3Dモデルを投影出来ればおパンツ覗き放題では!?せっかくの未来技術を煩悩一直線に使おうとする俺カッコいい!!
まあ馬鹿はこれくらいにしといてと、とりあえず画面をスワイプして見ると画面が動いた。
よし!使える!
「サテラ、現状表示出来る地図を出せるかい?」
「お待ちを⋯表示します。ドウルを中心に半径50kmを表示します」
「50km!?そいつはすげえな!まだそんな時間経ってないのに!?」
「高度5万メートルよりマッピングしていますので、短時間で広範囲を調べる事ができます」
「5万メートル⋯なんか宇宙にまで行けそうな機体だな⋯」
「機能的にはいけますよ。ただ宇宙放射線対策をしていない機体なのでリミッターがかかってますが」
「マジで!?」
「宇宙?宇宙ってなんなん?」
「あ〜、空のさらに上の空とでも言うのだろうか?夜空の星がある場所というか⋯かねえ?」
「そうですね⋯高度100kmから上の空を我々が勝手に宇宙と定義しているだけなので⋯どう説明するのがスマートなのでしょうか?」
「宇宙⋯星空の世界には神様が住んでるって誰か言ってたんけどやっぱ違うんえ?」
「そうですね⋯宇宙空間で神を観測した事例が無いので科学的には今の所、宇宙に神はいないと言う事になっていますが⋯人間を補佐する立場からすると神は存在しないとは言えませんね。信心深い対象に神など存在しない等発言した場合、いったいどの様なストレスがかかるか⋯想像に難くありませんね⋯」
「じゃあやっぱ宇宙?には神様はおらんの?」
「おそらくいません。存在しているとすれば我々では観測出来ない階層に存在するのでは無いのでしょうか?しかもあちらからは干渉出来るのにこちらからは何も出来ないという空間に⋯」
「じゃあ何があるん?」
「広大な空間と、この大地の様な惑星や恒星の光を受けて輝く星が数多に有ります。正確な数などわからない程に」
「惑星?星⋯想像もつかんけど⋯なんやたくさんあるんえ?」
「それはもう」
宇宙の神秘を語り合うお二人と宇宙に飛ばされた気分になった俺。
うーむ、はやく依頼を開始したいのだが⋯。
「宇宙の話は後にしないか?とりあえず依頼をですな!」
「ああせやったなぁ!!ごめんなぁ!!興味が向いたものに一直線なるウチの悪い癖や」
てへっ!!みたいな顔してもねえ…まあ可愛いから良いけど…。俺は端末を操作しここいら周辺の地図を表示させる。
「うわっ!!すごいなぁ!!空中に絵が出てきたわぁ!?どうなっとるん?」
「それは後な!!とりあえず進むべき方向を決めようではないか」
「うん!!そうやね!!とりあえずやな!!とりあえず…薬草が生えてそうな森を巡りたいえ!!」
「薬草が生えてそうな森ですか…その薬草はどんな環境で育つのでしょうか?」
「そうやねぇ…森の中だけれどもそれなりに陽が入ってきて風通しが良い場所に生えてる場合が多いわぁ」
「了解しました。木々の分布と太陽の方角から、ある程度目標が生育されていそうな場所を抽出してみます。まずはそちらに行ってみてください」
「了解した!!マップ確認!!方向確認!!ここより約2km先の森を第1ポイントに設定!!いざ行かん!!………徒歩で…」
ちなみにまだギアは着けていません。依頼をこなしつつこの身体の性能テストと洒落こみましょうかね。
さあ!!張り切ってまいりましょー!!
ってこの頃はまだ元気だったんだよ!!まさか異世界ファーストビレッジであんな目に合うとは…。
正直泣きそうです。




