世界ビックリ大賞でおっぺえが修正無しで地上波に乗った昭和から平成初期までのあの頃。凄い時代だったなあ。
横転している馬車を見つめる一同。
先どの空気から一変、暗雲立ち込めんばかりの雰囲気になってしまった。ついでに豪雨と雷も付けとくか?
「アルベルト、今私達が何処にいるかわかりますか?」
「はい、ジマルを出発して5時間、この道は距離短縮の為の裏街道ですからおおよそジマルとドウルの中間にいると思われます」
ジマルが出発してきた街、ドウルがこれから行く街ね。OK理解した。
「ちょいと聞きたいのですが?裏街道って事は表街道もあるって事ですよね?なんで裏街道をお使いに?」
「はい。お恥ずかしい話ですが、私が早い帰宅を望んだ事がいけなかったですわ。私、今回初めて1人でのお務めだったのですが、思いもよらず首尾よく運びまして⋯この事を一刻も早く父に伝えたく思い・・・」
「あ、はい。なるほど。それは急ぎますね⋯」
はじめてのおつかいが上手くいったらそりゃ親に言いたくなるな。そこら辺は子供らしい。
「それで急ぎの道に同行してくれる冒険者の方々をギルドにお願いして護衛についてもらいました。この裏街道も冒険者の方に勧められてきたのですが⋯」
「それで、その冒険者の方々はどちらに?」
サテラが皆思ってそうな疑問の答えを求める。確かに護衛がいてこの有様はどうだ?護衛の冒険者がクソ弱かった?
それとも山賊がクソ強かった?
「山賊を迎え撃つと言って別れたのですが⋯それにしては山賊が我々に追いつく時間が短かったのが気に掛かります。これはドウル帰還後に少々調べる必要がありそうですね」
おっさんが雇った冒険者の動きに疑問を感じているようだ。マイナス面に敏感な俺の嗅覚が何やら陰謀の臭いを感じ取る。どうか僕たちが巻き込まれませんように!!
「アルベルトさん。今は移動手段を考えないと。どうします?」
お姉さんが上役であるおっさんに指示を仰ぐ。
「う〜む⋯」
何やら考え込むが待っても答えは出てきそうに無いので、ここは俺が何とかするしか無いだろう。
「とりあえず、馬車を起こして使えるかどうか見てみましょう」
ルゥを地面に座らせ、俺は馬車の方に歩いてゆく。御三方は俺を見て一体何言ってんだこの人はと言う顔をしていた。
まあ見ていなされ。この装着はしているのだけれど、名前が頭からうっすら消えかかっているギアのパワーを!!
横転している馬車の屋根側に行き、地面と馬車の隙間に指を入れそのまま持ち上げる。持ち上がった車体は横向きから縦向きになりドシンと重い音がして車輪が地面に付いた。あ、このギアの名前はソルデウスだ⋯。
「ヨシ!!」
指差し確認完了!!どうです!?すごいでしょうみたいな顔して御三方の方を向く。まあ、ヘッドギアで隠れてドヤ顔は見せられませんけどね。さあさあ皆さん!!羨望の眼差しをむけて宜しいのですよ!!と期待したのですが・・・なーんか反応がイマイチだなあと、まじまじ見ると呆気に取られたような顔の三人組がそこにはあった。
「あの⋯?今のは一体・⋯?」
お嬢さんポツリと呟く。残り二人もお嬢さんの言葉にただ頷く。
「ルビーはん。兄さんはこう言うお人やえ、あまり気にせんといた方がええよ。それに世の中、ドラゴンを素手でぶん殴るお人もいる話やん。こんな事に一々驚いてたら身がもたんえ?」
笑いながらとんでもねえ事を言うルゥ!!マジで!?いるの!?そんな人外魔境!!やだー会いたくなーい。静かに暮らしたーい。と思っていると、お嬢さんが少しだけ赤らめた顔で小さく咳払いをした。
「コホン⋯お話には聞いておりましたが実際に見るのは初めてなのでつい驚いてしまいました。でももう大丈夫です。次からは驚きませんわ!!」
「それは結構ですね。では目の前にある問題を片付けると致しましょう。皆さんは散らばった荷物の回収をして来てください。私とイルマは馬車の状態を確認します。ルゥはそのまま休んでいてください。宜しいですね?」
サテラから客員に指示が出る。
「わかりました。ではアルベルト、アメリア、参りましょう」
「お言葉に甘えて休ませてもらうわ」
お嬢様達が荷物の方に歩いて行く。お気をつけて〜っと心の中で見送った所で、待ちぼうけのルゥの為にフルーツ味のドロップ缶を渡すとキラキラ目を輝かせて、珍しい甘味をマジマジと観察&堪能していた。ルゥに聞いてみると飴ちゃんはこの世界でも当たり前のものらしいが、砂糖で作られる飴は高級品なんだって。さて、馬車に目をやる。
地面と接触した側面は、ガリンガリンのボロボロで痛々しい。傷だらけの扉もガラスが割れてあららな事に。
問題は車輪とシャフト。車輪が割れてたり、シャフトが折れ曲がったりしていたらもう目も当てられない。祈るように覗き込むと、あら不思議!!奇跡ってあるのね!!シャフトは曲がっておらず、車輪も傷だらけだが割れもヒビもない。
「これならいけそうだな」
「そうですね。あとは動力をどうするか?」
「ふ⋯わかっているさ⋯俺が引っ張るか押すかだろ・・・?」
「よくわかりましたね。ギアのパワーがまた役に立ちますよ。良かったですね」
「ああ⋯そうね⋯さっきはドン引きされてましたがね⋯」
「まあ、実際ビックリ人間を前にすればああもなるでしょう。しかしルゥの話からすると、この世界には生身のビックリ人間がいるみたいですね驚愕に値します。一体どういう身体構造をしていればドラゴンとやらを素手で倒せるのでしょうか?」
「ビックリ人間ねえ⋯。俺がビックリ人間だったらお前もビックリ人間側だからな」
「チームビックリ人間ですか⋯悪く無いですね」
「はは、二人してテレビに出れたかもな。よーし、瓶牛乳を2秒で飲んでやるぞ〜!!っと、まあそれは良いとして⋯。さっきハーネス付けてた所にロープでも括り付けて馬車を引っ張るか?」
「それが良いかと。ルゥに手伝っていただきましょう」
飴ちゃんを口の中で転がしながらオリーブドラブに塗られた缶をいろんな角度から見ていたルゥを呼び、ギアの背中のアタッチメントにフック付きロープをつけてもらい反対側のフックを馬車に繋げた。
ちゃんと二箇所にビシッと繋げたから、ふらつく事はあるまい。多分。
試しにグイッと引っ張ってみたが車輪も無事に転がったし、変な揺れも無かったのでまあ良いだろう。
これで馬車もとい俺車完成である!!
「ほえ〜。兄さん馬車まで引っ張れるんかぁ。凄いなぁ。コレならドラゴンも素手で倒せそうやなぁ〜」
「ドラゴンがどんなんかはよくわからんが・・・パワーさえあれば素手で倒せるものなのかね?」
「知らん」
「そうか⋯」
知らんか⋯。よく分からんものには近付かないのが良い。ああゴッドよ!!ドラゴンには合いませんよーに。
「移動手段の確保は大丈夫そうですね。それではあちらの方々と合流する前に銃の回収に向かいましょう」
「あ、忘れてた。山賊のボスに弾き飛ばされたまんまだったなあって、馬車と合体する前に言ってくれない?ロープ外すの超面倒臭いんですけど!!」
「忘れてました〜」
わざとらしく、抑揚のない声を出すクソAI。嘘だ。絶対嘘ついてる。
「はいはい。忘れてたのね。で、どこに飛んでったっけ?」
「銃には管理用のタグが付いているので、すぐに在処などわかりますわ⋯って、少々お待ちを⋯」
少しの沈黙の後、サテラが口をひらく。
「タグからの反応無し。BER-A9⋯消失しました」
「何!?無くなったって⋯どう言うことだ!?」
「タグの探知範囲は半径約500メートルです。タグが破損したか、もしくは銃が範囲外に移動したか⋯」
「ちょっと待てよ。500メートルって⋯あの山賊の剣撃が銃を500メートル以上飛ばしたってか!?それはないよなあ⋯メジャーリーガーだって革製の球を百数十メートルしか飛ばせんし・・・金属製の物体を遥か彼方にぶっ飛ばせるパワーが奴にあったらもっと苦戦してるだろうしなあ⋯タグがぶっ壊れてた場合⋯なあ、センサー群に金属探知はないのか?」
「お待ちを⋯半径1キロに金属反応はありますが、山賊共が使用していた武装が散乱しているのが多数見つかっただけで、BER-A9の反応は見つけられません」
「となると⋯もしかして奴らに持ってかれた⋯?」
「あり得ますね⋯」
「もしかして、あいつらにも使えたりする⋯?」
「そうですね⋯カートリッジ内のエネルギーが尽きるまでは⋯」
「なんか影響あると思う?よく言うじゃん?バタフライエフェクトとやらタイムパラドックスやら」
「データ不足により解答不能」
頭抱える事象発生!!どうしよう!!未来兵器流出です!!この世界に何か大きな影響を与えてしまうかもしれん!!
やってもうたー!!どうしよう⋯とヘルプの目線でルゥの方を見ると、ニコリと笑顔を返してきた。
その時、彼女の屈託ない笑顔の中に大宇宙を見た⋯。銀河が生まれて幾星霜。人の歴史など宇宙が綴った刻に比べれば塵芥も同じ。そんな瞬き以上に短きモノに思いを馳せて何になろうか⋯。
私の起こす事など、蝶の一羽ばたきの起こす風以下!!ほぼ無風!!そのような自然の風にかき消される事象になんの意味があろうか。うん。ヨシ大丈夫!!ただ春の夜の夢の如し!!現実逃避成功!!
「サテラよ⋯」
「なんでしょう?」
「無かった事にしよう!!」
「そうですね。それで宜しいかと」
うん、どうしようも無いんだからAIだってそう言うさ!!大丈夫大丈夫!!ちょっと悪いリアルな夢を見ただけさ!!
「うん?どうしたん?何かあったんえ?」
「いや、なんでもないよ。なあ!!」
「はい、なんでもありませんよ!!」
「なんなん?二人揃って、おかしいなぁ〜」
誤魔化しに誤魔化しを重ねて誤魔化した所に、お嬢様ご一行が荷物をまとめて戻ってきた。
「お待たせ致しました。大体のものを集めることが出来ましたわ」
「ただ⋯お嬢様の宝飾品や金品は奪われてしまいましたが・・・」
お姉さんが悔しそうに握り拳を作り、ぐぬぬとなっている。
「命が助かったのだから良しとしましょう。アメリア」
「では、取り敢えず荷物は馬車に積んでおきま⋯って、イルマ様!?一体何を!?」
馬車と見事にフュージョンしている俺におっさんは驚愕を隠せないようだ。仕方ない。人が馬車を引こうって言うんだ。
そりゃ先ほどと同様ビックリするよな。だがご安心召されい!!こちとら腐ってもビックリ人間!!日暮里、西日暮里の距離
くらい楽勝でひいてやらぁ!!
「はっはっは!!なあに、馬車を引こうとしてるだけですよ。さあ!!乗った乗った!!」
「あ⋯いえ⋯」
御三方が何やら難しい顔をしている。ははーん。ちゃんと引けるかどうか不安なのだな。
「大丈夫ですよ。先程試しに走ってみましたが、ちゃんと引けました。ご安心召されい」
「あの⋯そうではなく⋯命を救って頂いた恩人を馬車馬の如く扱うのは⋯その⋯大変失礼かと⋯」
おっさんが汗をハンカチで拭いながらちょいと引き気味テイストで話してきた。
後ろではお嬢さんとお姉さんが全力で頷いている。
あんれ〜御三方、また引いてる?別に鞭打たれる訳じゃないんだから気にせんで良いのになぁ。
「兄さ〜ん。馬車の中、結構土入っとるわぁ!!掃除せなあかんよ」
ルゥはさっさと馬車に乗り込んで入り込んだ土やガラス片を外へ掻き出していた。君は乗るの早すぎ。少しは遠慮せい!!
「まあまあ綺麗になったわぁ。さあさあ皆さん。乗って乗って!!」
「いえ⋯それは余りにも⋯」
「ここに居たって何も変わらんえ!!さっさと動いた方がルビーはんも都合がええはずや?違う?」
「それは⋯そうですが⋯」
「ルビーさん。貴方はお父上に早急に伝えなければならない事があるはずですよ。どうか優先順位を間違えないように」
サテラの言葉にお嬢さんは目を瞑り一呼吸する。するとお嬢さんの顔つきが変わった。
「わかりました。私達をどうかドウルまでお連れ下さい」
御三人は頭を下げ、お嬢様とお姉さんは共に馬車に乗り込んだ。おっさんは荷物を馬車に固定している。
「アルベルトさん。悪いが方向指示の為に御者席に座ってもらえませんかね?」
「はい、わかりました」
各員馬車への乗り込みが完了した事をルゥが俺に伝える。
「兄さんOKやぁ!!みんな乗ってえ!!」
「よっし!!さあアルベルトさん!!どちらへ向かえば良い!?」
「あちらへお願いします」
おっさんが手のひらを向けた方向を見ると、道がただただ続いている。この先に街があると思うとワクワクせざる得ない!!いくぜ文明のある地へ!!さよならワイルドライフ!!
「では出発じゃあ!!」
俺は勢いよく走り出す!!牽引された馬車は車輪をスムーズに回転させ、これまた元気に走り出した。
スピードに乗った馬車は舗装されて無い道のデコボコを拾い中々面白いムーブを見せているが、この馬車には板バネサスが付いているので大丈夫だろう!!うん、きっと大丈夫!!
「イルマ様!!ちょっと⋯速度がぁぁ⋯」
「兄さん!!スピード出し過ぎやあぁぁぁ」
おっさんとルゥのなんかブレた声が聞こえた気のするが⋯まあ気のせいだろう。
まってろ!!今日は地面じゃ無いとこで寝てやるんだ!!ウヘヘヘヘ!!




