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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死神と呼ばれる男

 ジャングルに入って、何日目だろうか。ずっと戦っていて、カレンダーなんて気の利いたものがあればよいのだが、ないものは仕方ない。いつだってそうだ。


「敵からは逃げれたでしょうか?」


「ここまで来ればもう大丈夫だろう。ここいらで休憩しよう。びいくん」


「はい。えい大佐」


 大佐とはそれほど親しい間柄ではなかったが、周りで次々に仲間たちが死んでいって、自然と話す機会がふえてしまった。終戦間近になって、さあ、みんなで逃げようというときには、二人だけになってしまった。


「俺は死神なんだ」そういうが、僕は気にしてない。なぜ。っと聞くと大佐は困ったようにカメラを構えて、「仲間の写真をとることによって、魂をうばってるいるんじゃないか」そう思うときがあると言う。そんなばかなっとは思ったが、仲間が次々に死んでいくのをみていたら、死神はむしろ僕なんじゃないかっと思うときがある。僕も大佐にカメラをとられたことはあるけど、いまだに生きているのが何よりの証拠だ。大佐は、「カメラのせいだ」っというけど、ならどうして捨てないのか僕にはよくわからなかった。


「敵にみつかりませんかね、これ」


「馬鹿をいえ、ここは非武装地帯だぞ。もし、みつかっても撃ってきやしない。それよりも飯だ」


 携帯非常食で乾燥してがちがちになった、おにぎりを火をつかって、焼いていく。香ばしい匂いに胃がはやくくれなければ、背中とくっついて死んでやるといわんばかりに盛大に叫びだした。どうせ死ぬなら、恋人とかと死にたかったな。


「尾くん。生きて帰ったら、一緒に酒を飲もう」


「いいですね。この焼きおにぎりをおつまみに食べたいものです」そういうと、大佐はもっとましなおつまがあるだろうっと言ったが、僕は焼きおにぎりを結構気に入っている。


 おにぎりは故郷をでるときに一度だけ食べた。白いご飯というものを食べるのが生まれて初めてで泣いて食べたものだ。


「おふくろ。元気にしてるかな」


「君のところは二人家族だったね」


「はい。生きてたら、今頃、大佐と同じくらいの年齢でしょうかね」


 これではまるで死んでしまったみたいだなっと思ったが、もう何年も会っていない。手紙は残念ながら、ジャングルに届けるためのポストもないから、ずっと生きててほしいと毎日手を合わせて、東の方へむかってお祈りするくらいだ。


「ごちそうさま」


「ごちそうさんです」


 生きて帰れる。そんな話を大佐から聞いたときは目を疑った。本体が敵にやられて、国が終戦条約を結ぶことになったとか。それが明日でもう戦わなくていいという。


「ランドマークまであと少しのはずだ。巨大な銀色のモニュメントだと少将からは聞いている」


「本当にそこで救援が来るんでしょうか」


「そのはずさ。もし来なければ、ここにこもって、村にでも御厄介になろう。通訳は任せろ」


 一緒に現地民として暮らすのもいいのかもれないなっと、ぼんやりと遠くをみてたら、暗闇の向こうに光がみえたような気がした。


「大佐!」


「どうかしたか」


「今、何かあっちで光が……」


 ――ズドン。遠くで鈍い衝撃音と共に大佐が「うっ」っと倒れてそれっきり動かなくなってしまった。


「栄さん! 酒を飲む約束忘れてるじゃないですか!」叫ばずにはいれなかった。ここが非武装地帯だと勘違いしていた。まだ戦場だったのだ。


 大佐は手に持ったカメラを大事にもっていた。銃ではなかった。それを憎い敵に銃口を向けるようにして、憤怒の顔でシャッターを押して死んでいた。


 ――パシャパシャパシャパシャパシャパシャ。そんな音が響くと暗闇の向こうから悲鳴のような声をいくつも聞いた気がした。


 僕は銃を構えて朝まで待っていたが、敵が目の前に現れることはなかった。


「なんだこれは?」


 おびただしい数の人たちが地面に倒れ伏していた。こんな連中、昨日ここで野営するときにはいなかった。僕は夢でもみているのか。


「誰も出血していない……なんでこいつら死んだんだ」


 わけがわからない、不気味さと静寂の中、僕は逃げるようにしてランドマークを探して、ジャングルの中を走り回った。静かすぎる。なにかおかしい。


「ヘリ? 救援か!」


 ――ブロブロブロ。っと音の方向へと走っていくと、あたりの景色が急に開けた。


 銀色の巨大なモニュメント。


 それは僕もよく知ったものだった。十字に天と水平線に傷を空に描いたような巨大さに、僕は得体のしれない恐怖を感じた。


「お墓? 縁起でもない」


 ヘリはモニュメントの下に着陸していた。


「所属と階級、名前を言え。ふざけて、敵のふりをしたら、置いて帰るからな」ニヒリと笑って見せた。その顔を一度だけみたことがある。大佐の上官で少将でもあられる片だ。


「死神部隊、栄班所属、尾であります。しー少将殿」


「栄はどうした?」


「死にました。生き残りは私だけです」


「そうか……死神が……さあ、国に帰ろう。君が新たな死神部隊のリーダーだ」


「はい……」


 ヘリが地上から離れて、やっと悪夢が終わったように思えた。


「茶と菓子がある。食うか」


「ありがとうございます」


 美しい朝日の中、食べる菓子と茶は美味いと思えた。けれど、大佐と一緒に食べた焼きおにぎりが忘れられなくて、僕は涙がとまらなくなった。


 ――パシャ


「記念撮影か。いい趣味だな。尾」


「僕じゃないですよ?」


 あって思った時にはヘリは傾いて、地面へとぐんぐんと吸い寄せられていった。


 衝突する前に僕は太陽を背にした大佐と目があったような気がした。


 そんなばかな。あの男は死んだはずだ。



アーマードコアの死神部隊って無茶苦茶かっこいいですよねw 死神サンダースとか、ガンダムをみたときは、一度は書いてみたいなっと思いましたw


2022/2/12 作者名を空白に変更しましたb

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― 新着の感想 ―
[良い点]  登場人物の名前をA、Bとアルファベットで表現した作家というと、確か吉行淳之介がそうではなかったかと朧気ながら記憶しているのですが、この作品ではそれを一歩進んで漢字表記なのですね。  読み…
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