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1、

 ミルティ・ロウリーの父と母はお互いがお互いに恋愛感情をもたないまま結婚した所謂貴族の政略結婚だった。そして結婚しても互いに恋愛感情には発展することはない夫婦になった。

 だからと言って別に不仲ではなかったが、物語に出てくるようなラブラブな夫婦でもなかった。

 その為、母は貴族の務めである(ミルティ)をもうけたあとは、自分の役目は果たしたと父とさらに情緒を深め、ミルティに姉弟をなすような関係を望みはしなかったのだ。


 別に女であるミルティでも家督は継ぐことはできる。しかし、貴族社会は残念な事に女領主にはなぜか風当たりが強い傾向にあった。それ故にミルティがロウリー家を継げば将来苦労するのは目に見えていた。

 しかし父と母はそんな貴族社会に身を置いているとわかっていても、それでも男児を生むまでの関係にはなれなかったのだ。

 ただ幸いな事につかず離れずの両親ではあったが、不思議とミルティに関しての子育ての方向性は一致していた。彼らはミルティを愛し大事に育てていた。

 その為、唯一の彼らの子であるミルティを守るために、ミルティが10歳の時当時8歳になったばかりのルシウスを迎いいれることになったのだ。









(天使がいる!)


 思わず息をするのを忘れて、目の前で微笑みを崩さない男の子を凝視してしまった。その笑みはまさに天使としか表現出来ない。

 柔らかそうな金色の髪に透き通るような色白な肌、きれいなブルーの切れ長の瞳。柔らかで吸い込まれそうな桃色の唇。

 羽が見えないだけでその姿はまさに壁画に書かれるような天使だった。


「……ミルティ。瞬きを忘れているよ?それに口がさっきからずっと空いているよ」


 天使の横に立つ父が呆れた様に、はしたないと声をかけてきた。そこでミルティはハッと気づいた。この見とれてしまう程の天使が見えるのは父に天からのお迎えが来たからだと。


「お父様!死ぬの!?だから天使が隣にいるの!?」

 そうよ!きっとそうなのね!


 思わず父にすがり付いてミルティは涙目になってしまった。


「お父様!嫌よ!死なないで!私ではまだ領主になれないし、私とお母様は路頭に迷ってしまうわ!今お父様が死んだら我がロウリー家はどうするのですか!」

「……ミルティ、心配するところはそこかい?と言うより、私はまだ死なないから大丈夫だよ」


 どうどうと父がさらに呆れて宥めるように肩を撫でてくる。


「でも!お父様の隣に天使が!お迎えが!」

「お迎……天使?」


 ミルティに涙ながらにしがみつかれ、父は困ったような顔でルシウスの方を見ると何かを納得しミルティに再度落ち着きなさいと優しく頭をなでた。


「ミルティ、彼は天使みたいだけど人間だよ?それに、僕は死なないからね。紹介するよ。彼は今日からうちの子になるルシウスだ。仲良くしてやって」


 そういわれたのは今から数年前で……。






 チラリと隣にいる眩しい程に整った顔を盗み見れば、きりりとしたブルーの瞳とパチリと目があう。

 あれから月日は流れ、8歳だった天使様が今では18歳を迎えて立派な大天使もとい……青年になっていた。



「ん?ミルティどうしたの?そんなに可愛い顔で見つめられたら……」


 さりげなく腰にまわされた手が、ミルティをぐっと引き寄せる。

 触り方が妙にきわどいのは気のせいだろうか?

 そんな事に気を取られていると、

「ん、ミルティが可愛いのが悪いんだからね」


 チュッとリップ音を立ててこめかみにキスをおとされ、思わず大天使の顔を押し退けた。


「っ!ルシウス!」

 油断していた。


「ルシウス!あなたって子は!」

 不意打ちで赤くなる顔を隠すように両手で覆いつつルシウスと距離を取る。

 最近ルシウスのスキンシップは過激になってきている気がするとドキマギしてしまう。


 まだ幼い8歳でやってきたルシウスはロウリー家の一人娘であるミルティの義理弟として、最初は従順で愛らしく過ごしていた。

 しかしいつからだろうか。ルシウスのミルティに対する従順さは鳴りを潜め、気づけばミルティのいう事を全く聞かなくなった。それどころかミルティを翻弄するように惑わし、挙げ句この頃はところ構わず過度にスキンシップまで求める様になってきていた。

 流石に義理といえど姉弟で、異性同士な訳で……。


 周りの目もあるので過度なスキンシップは、何度もやめるようにルシウスにいい続けてはいるのだがいつもさらりとかわされてしまっていた。


(これは、もしかして所謂シスコンってやつなのかしら?これじゃあまるで……)


 恋人のようだとうっすらと思ってしまい、慌ててかぶりを振って考えを蹴散らした。


(違う!これはただのシスコンよシスコン!)


 嘘か信かシスコンはなってしまうと手がつけられなくて大変らしいとどこかで聞いたようなことがある。

 実際はルシウスもきっとそういうことなのだろうとミルティは小さくため息をつく。



(この顔でところ構わずこんなことされてたら……)


 いくら義姉弟でも、本当にドキドキして心臓に悪い。ミルティだって既に妙齢なのだから。

 いや、微妙にもう妙齢を過ぎているのかもしれないが……。


 この国にでは若くして婚約者が宛がわれ、大体18.19には結婚している。


「ルシウス、お姉ちゃんをからかうなんて悪い子だわ。それに、そんなにお姉ちゃんにべたべたしないの」


(というか、このシスコンぶりのせいで私はいまだに婚約者もいないで独り身なのよ)


 再び小さくため息をつくとミルティはまたルシウスと距離を取る。別にルシウスのスキンシップが嫌なのではない。

 むしろそれだけミルティとルシウスが仲良しだとわかるので嬉しいのだが――。

 ルシウスよりも2歳年上のミルティは貴族社会では行き遅れに該当しはじめていた。本来ならばお互いにもう婚約の話がまとまっていてもおかしくはない。

 けれどいざミルティに言い寄ってきてくれる殿方が現れたと思って気合を入れても必ずルシウスが来る。そしてミルティにぴったりとくっつき、邪魔をしてくるせいで縁談は上手くいくことがない。ルシウスにも縁談は有るのだろうが、ミルティより美しくない女には興味がないといつになっても縁談を受け入れていないようだ。

 加えて両親も両親で愛がない結婚はしなくていいとどこ吹く風のせいで、ロウリー家の子供達は完全な行き遅れ街道まっしぐらになりつつある。


(私より美しい人なんて沢山いるのに。寧ろ……)

 ルシウス自体がミルティより美しい。


「あのねルシウス。お姉ちゃんだってもう20歳なのよ?そろそろ……うっ」


 少しシスコンの程度が過ぎるルシウスに姉として小言をと思っただけなのに。


 ルシウスがシュンと項垂れつつも離れた距離を一気に縮め、再びミルティの腰に手をまわしてきた。そして甘えたようにこちらを見つめるキラキラの瞳をうっかりみてしまい、思わずミルティは動揺してしまった。


「ミルティは……、ミルティはそんなに俺から離れたいの?俺はどうすればいいの?」

「あ、あ、いや……。あー、ルシウスそんな顔しないで」


 どうするもこうするもシスコンを押さえて欲しいだけなのだが……。

 お姉ちゃんが悪かったわと思わず呟けば、ルシウスは途端ににこやかに微笑み


「ミルティ好きだよ。離れるなんて許さないからね」

 と呟きながら頬に優しく唇を落とす。


 その一連の流れるような動作に、もう何度目かのため息をミルティは吐き出した。

 ダメだと分かっていても、大天使にミルティは直ぐに折れてしまう。

 それだけじゃなく彼の言葉に心がドギマギしてしまう。


(私、この子の義姉ちゃんなのにだめね……。あなたにドキドキしてしまう義姉ちゃんでごめんねルシウス)


 大概自分もブラコンだ。

 ミルティはそっと心でルシウスに懺悔する。するとその隙に腰の手がもぞもぞと動き出す。

 その動きにハッとしてミルティは再び行き過ぎたシスコンの大天使をたしなめるべく、心を持ち直し向かいあう決意を固めた。

とりあえずしばらくは零時更新で行きます。


是非ブクマ、評価おねがいします!

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