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帝都一日目終了

深夜。帝都ファーヴニルのとある宿の一部屋。


「ふぅ、今日は本当色々あったな……」

「旦那様、お疲れ様」

「クゥこそお疲れ様。あの状況よく我慢できたね」


すり寄ってくるクゥリルの頭を撫でれば、疲れた心が癒されていく。クゥリルも嬉しそうに受け入れてくれて、満足そうにシッポを揺らす。


ああ、やはり二人きりのこの時間は一番の至高だ。


自称天才を名乗るリース令嬢の好奇心に付き合わされた時はどうなるかと思ったが、何とか無事に解放された。もしあの時にジークの寄越してきた使者が来なかったら、そのままずっと付き合わされるところだっただろう。


今は夜になってしまったが事前に手配されていた宿に泊まることになり、翌日ジークの待つ皇城へと向かうことになった。とりあえずそれまでの間は自由になったわけだ。


「クゥ。こっちにきてから大分経つけど、やっぱりまだ辛い?」

「? そんなことないよ」

「それならいいんだけど……。こっちに来てから口数も少ないし、とても元気には見えないよ」

「ん~……本当のこと言うと、少しだけよくないかも。でも、本当に少しだけだから大丈夫だよ」


少し考えるような素振りを見せるが、すぐに全身を使って元気そうに振舞う。そこには強がっている様子もなく自然体のようにも見える。


「それならいいんだけど、無理してるならすぐに言ってね? 俺にできる事ならなんでもするから」

「本当? じゃあ久しぶりに旦那様の料理が食べたい!」

「そのぐらい何時でもいいよ」


出てきたのは案外普通のお願い。たしかに最近は宿の食事とか日持ちする簡易携帯食と、俺からは食事を出さずにジークの金払いの良さに任せっきりだった。

それはというのも今の状況でポイントを増やせる手段が限られている為、節約していたというのがある。


魔動車という便利な移動道具を出したのは良いが、それによって大量のポイントを消費。さらには道中で得られると思ったポイントも一切なかった。そもそもファグ村周辺と違って、襲ってくるような危険生物が一切出ず、見たとしても小柄な動物とかすぐに逃げ出すような草食獣ぐらいなものだったからだ。


一応睡眠で得られる自動回復分もあるが、場所によって得られる量が違うのか元のいた場所に比べると微々たるもの。

もはや現状のポイント獲得手段はクゥの魔力を吸ったあとの魔吸石を還元した時に得られる余剰分が頼みの綱なっている。クゥリルの体調不良を直すこともできるし、ポイントも得られるという一石二鳥でありがたい。


「さぁ、好きなだけ出すから足りなかったら言ってくれ」

「旦那様の料理! いいの!?」


パパっとダンジョン化したアイテムバッグからクゥリルの好きなものを出せば、目を輝かして喜んでくれる。


「元々はクゥの魔力から得たポイントだからね。明日も何があるかわからないから、今のうちにいっぱい食べておこう」

「うん!」


しばらくすれば、二人きりの楽しい食事会も終わりを迎える。


「ごちそうさま!」

「はい、お粗末様でした」


行儀よくしたかと思えば、クゥリルはそのままベッドへと飛び込み横たわる。もふもふとしたシッポをこちらへと向けられるので、要求に応えて梳いていく。


「どう、満足した?」

「えへへぇ、もっと撫でてくれたら満足するかもぉ~」


俺の前でしか見せない顔でだらけているが、それを隠すように枕に突っ伏して「……でも、やっぱり、狩りしたいなぁ」と小さく漏らした。


……弱音を吐くなんて珍しい。張っていた気が急に緩まったからなのか、うっかり漏らした、そんな一言だった。


「クゥ……」

「ううん、何でもない。気にしないで旦那様」

「クゥ。明日はクゥが満足できるよう、狩りをしよう」


ならばその想いに応えてやるのが俺の務めだ。幸いにも明日はジークとの謁見がある。ならばその時にでもこちらの要求を言えばいい。


「いいの? 今だって美味しいものいっぱい貰ったのに……」

「気にしなくてもいいよ。どうせジークには面倒ごと頼まれるんだし、それぐらい前報酬で貰っても何ら問題ない」

「旦那様ぁ……」


さらに撫でて撫でまくる。もはや何も反論できないように、全力で。


「さて、じゃあ今日はもう寝ようか」

「うん! おやすみ、旦那様!」

「ああ、おやすみ」

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